プロローグ
「ユスティネ・デ・エルメリンス・ラウチェス王女。
当主の間の中央の
あまりの
その
彼の
顔だけは評判通りに美しいが
もちろんそんな事はしていない!
だってこの目の前にいる氷の辺境伯と婚約なんてしたくなかったから。
早く王都に帰りたかったわたしが、
その結果が現在の婚約
……そう、『前回』のわたしは願い通りこの後すぐに王都に
今、周囲には当主に立ち会いのため呼び出された貴族や有力者達が立ち並んでいて、失望した顔でわたしを見ている。
この先の未来を何も知らなかった『前回』のわたしはそんな重苦しい空気などかまわず大喜びしてますます白い
「一応聞きますが貴方も異存はないですね?」
リュークの問いかけに、『前回』は何もないと答えた。
身に覚えのない非難も捻じ曲げられた事実もどうでも良かった。ただ王都に帰る事が出来るのならそれでいい、今まで通りの生活が待っているのだと信じていたから。
だけど正解はそうじゃない。
この婚約を破棄されては絶対に
(この
大勢からの注目を一身に集めていたわたしはガバリと床に
これぞ、
「じ……慈悲深いリューク・バルテリンク様! どうか今一度だけ、
……
(や……)
わたしは思わずブルリと身を
(やったあぁ! やり切ったわ! 良くできた! 今までの人生で下手に出るだなんて一度もした事がなかったけれど、我ながら
得意満面に顔を上げはじめてリュークと目が合う。その
さて、
それは婚約破棄が原因で死んでしまう自分の未来を知っているからに
──死んで、時が巻き戻り、気づけばここに立っていた。
実際に体験した自分でも信じられないけれど夢や
『あの時もし婚約破棄をしなかったなら』
そんな想いをこの世の
それにしても、いくら婚約破棄を思いとどまってもらうためとはいえ、一国の王女がここまで下手に出るというのは異常な
(……せめて、あと一日、前に戻れていたならば……!)
そう、
(昨日『貴方とだけは絶対
お分かりいただけるだろうか。
彼の
『は? これまで散々
……とでも思っているのではないだろうか。
いや、絶対思ってる。
(ええまあ、そうですよね……)
だけどわたしはどうしても婚約破棄を
だって死にたくないし不幸にもなりたくない。
だけど勝算は、ある。
彼はとても
いや、絶対出来ない。
(だってわたしは国王陛下の娘だもの。そうでしょう? リューク)
本来ならば氷の辺境伯が一度決断した事をやすやすと撤回するなどあり得ないけれど、確信があったわたしは思わず不敵に
わたしの悪役然とした
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