第7話 男爵との戦い………。

 今回は期間が短めで更新できること嬉しい限りです。

 ささ、読んでやってくださいまし。では………♪


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男爵との戦い………。


 ……………。


 


「エラル様、いかがなさいますか?」


 


 黒髪のリーゼントに黒のタキシードで乱れのない、冷ややかな顔の執事が、今後の動きをどうするのか確認していました。


 


「うむ、あの男が奴等の元に向かった事を子爵様に連絡するとしよう。我々が仕向けた訳ではないとな。」


 


「分かりました。では早速………。」


 


「うむ、ワシは国王に報告しに行く。他の者に他の国の動向を探らせるとしよう。」


 


 執事は頷いて足早に部屋を後にしていました。


 


「あの女が動くと厄介だからな………足止めしておかねば………。」


 


 エラル領主も部下に仕事を与えるために部屋を出ていきました。あの女って………いや、私はそれどころじゃないんですけど。


 


 


 ………はいっ!お邪魔します、この度ヴァンパイアに転生してしまった”雅 煌太(みやび こうた)”ことリュードです。私…強いとは思わないんですけど周りがそう思ってくれない………しかも2人の美人が私の僕!?


 あの………後で”これはフィクションです”にならないですよね?……ね!?夢だったなんてやめて下さい!たとえヴァンパイアになった私でも……女性から好かれるなんて……奇跡以外の何物でもない!!


 は、離したくない……一緒にスローライフを送りたい……どこかで静かにのんびりと……なぜそうさせてくれないのか……。


 


 あ、すいません今それどころじゃなかった、私は今ラーウッド男爵というヴァンパイアの貴族が、私を直接訪ねてくればいいものを、このラザルドの街を襲って炙り出そうなんて画策して。しかも、どさくさに女性を次々と餌食に……許されませんね。確かに私も今はヴァンパイアではあります。が、転生前は人間です。人間寄りの考え方をしていると言われれば否定はできません。でも、関係のない人々を巻き込もうなんて私には耐えられません!


 更には騎士団の女性団長を除いた14人の団員達を倒してモンスターにし、団長を男爵の生贄の様に差し出させるなんて破廉恥極まりないっ!! もったいないじゃないかっ!!!………ウォッホン!


 と、とにかく男爵から団長を助けだし確保しました。すいませんねぇヒーローや王子様とかじゃなくて………ヴァンパイアなんです正直に。そりゃ、ドン引きしますよね~~。ただ唯一はっきりしてる事は男爵を倒そうと思っている事です。じゃないと、私の大事な人達が悲劇になってしまう……それだけは死んでも避けたい!


 なので、全力でぶつかっていきます!………勝てるかな………!?


 


 それで、先程のエラル領主のところの執事さん………ホントに足早っ!!国を出て、更に東方の国ではないですが正確には東南………と言った方がいいかな?辺境の場所ですが、片道20㎞以上はあるでしょう。その先に城が1つ丘の上に建っていてそこに到着していました。


 城の周りは荒廃していて草木も朽ちています。いつでも空は暗く、別場所に来たかのように急に景色が変わります。城自体は意外なもので荒廃している様子は全くなく、明るい訳でもないんですが清潔感が漂っています。…なんですけど、執事さんがこのお城に正面からではなく裏側の秘密の入口より中へと入っていきました……なんで?


 


 お城の中も廊下全体に赤い絨毯が敷かれ、間隔を置いて松明が灯されています。城なので洋風な飾りやタペストリー等が廊下に飾られていました。もっとも私自体はもっと暗いイメージがあるんですけど、そこまでではないようです……。


 で、執事さんはそのまま5階にある………あ、全部で7階ありますよ。詳しくはまた追ってお話しするとして、その5階の部屋へと足を運んでいました。


 物々しい装飾が施された観音開きの扉の前に立ち、ノックを3回たたきます。


 


「誰だ………。」


 


 その声は女性の声で、聞くからに美人そうな綺麗な声。しかし、張りがあり若く思わせる様な口調。


 


「ミレーナ様、戻りました。」


 


「アシスか……入れ。」


 


「失礼致します。」


 


 執事は、そう応えて扉の片方を開けて中へと入っていきました。……ってか、どゆこと?何で知り合いなわけ!?


 い、いやいやいや、ここ子爵様の城ですよねぇ!!この人、エラル領主の所の執事さんですよねぇ!!………はいぃっ!?


 部屋の中に入った”アシス”と呼ばれた執事は中に居る者に近付くことなく、途中で片膝をついて頭を垂れていました。


 


 部屋の中は赤い絨毯が敷き詰められ、中央に直径2m位の装飾の施されたおしゃれな丸テーブル。しかしそれに合った装飾のおしゃれな椅子は1つ………後は家具や装飾・タペストリー等は全く無く、松明が数か所に設置されているだけの簡素な部屋です。しかし、その椅子に優雅に座る女性が1人。その傍には細身で、白髪のリーゼントに白髪の髭。白いワイシャツに黒のスーツ。直立に立っている男性が1人。


 私は勿論、後で知ることになるんですが、黒髪のストレートなロングヘアで20代の若さを保っている美女ヴァンパイアで、”サキュド・ミレーナ”と言い、サキュド家頭首なんだそうです。そして、傍にいる男性が”アラネロ”という執事さんだそうで、ミレーナ子爵と共にしているとの事。


 


 その、子爵様に用事があって来たはずなんですけどどうして知っているのか……?


 


「ミレーナ様、ラーウッド男爵が奴らの元に向かいました。」


 


「へえ、エラルが仕向けたのか?」


 


「いえ……本人が直に相対すると………。」


 


「フンッ、2枚目な顔の割には血の気が多い奴だね相変わらず。場所は?」


 


「はい、ラザルドの街でございます。」


 


 アシスと呼ばれた執事は頭を垂れたまま応えていました。


 


「ミレーナ様、いかがしましょうか?」


 


 ミレーナの直属のアラネロ執事さんが、真顔のままミレーナに問います。ミレーナ子爵は口元を吊り上げにやりと笑い椅子から立ち上がりました。


 


「面白そうだな……相手の同族の事も気になるし………アラネロ!出かけるぞ!」


 


「御意。」


 


「アシス、案内しろ。その後は引き続きエラルの動向を見張れ。」


 


「仰せのままに。」


 


 何と、ミレーナ子爵の密偵!?驚きです!これは情報が早いわ。どのみち私達は後々分かった事なのですが……。


 


 彼女は右手を横にまっすぐ伸ばすと、何処からともなく武器が現れ彼女の手に。それは装飾が施された細長い棒に三日月の様な湾曲した巨大な刃物、そうです死神の鎌のような武器です。それを軽々と片手首で回転させ、更に変形!?みるみる折りたたまさったり伸縮したりしてバトン位の大きさの棒状へと変わります。そして左腰へと装備したんです。 嘘でしょ、あの………怖いんですけど………何者ですか?あ、ヴァンパイアか………。確かにその武器を軽々と振り回すところを見ると子爵位が付くだけあって強そう………。え゛………まさか爵位が上の人達はもっと強いってこと!?マジですか!


 彼女は高質の真っ赤なマントを羽織り、アラネロとアシスと共に部屋を後にしていました。そんな動きがあるなどと当然把握することなど出来ず、私は目の前の戦いで精一杯で必死な状態でした………。


 


 


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 


 


 


「さっきの威勢はどうしたのかな?」


 


「くっ………!」


 


 思った通り、やっぱり苦戦。あの両手のフィンガー強すぎでしょ!!何あの硬さ!私の爪を受け止め、更には私のジャケットが一部裂かれました!何か仕込んでるとか?いや、見る限りは彼自身の特殊能力にしか見えないが………反撃できずに防戦一方です!何とかしないと………。


 今、街の中央の上空でラーウッド男爵と相対していました。爪の剣を躱され、あろうことかキュアの銃弾をも躱されたんですよ!!あり得るか、んな事っ!あ、さっきあったか………。某映画じゃあるまいに、銃弾を紙一重で躱したんです!6発撃って6発とも………。逆に私でも出来るだろうかと、感心した位で。


 でもどうしたら………全く隙がない………戦い慣れしているのか、私には分が悪い……このままでは………。


 


「考える間を与えるほどお人よしではないのでね………。」


 


 右手のひらを前に突き出し、何かを喋りだしました。しまった!魔法か!?


 掌の前に直径60㎝位の魔法陣が重なるように2つ並んで現れます!


 


「絡み取れ………”血の鉄条網・ブラッディチェーン”」


 


 なっ!?深紅の鎖が無数に現れ鉄条網に!私を捕まえようと向かって来ます!私も飛翔して捕まるまいと逃げるのですが、誘導弾の様に追いかけて来ます!!


 


「私のチェーンからは逃れられないよ………。」


 


 くそっ!こうなったら爪で切り裂いて………なっ!?き、斬れないっ!!マジかっ!し、しまった!?


 


「ぐあぁぁぁっ!!」


 


 丸い篭に入れられるかの様に捕まります!しかも、無数に鉄の棘が内側に突出していて私の全身を容赦なく襲ってきます!


 激痛と出血で、おかしくなりそうです……。


 


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……。」


 


 痛ってぇ……何なんだこの鎖は……はっ?、そうかこれが奴の武器か……どうりで両手があれほど硬い訳か……そうじゃないとこの蕀の鎖を持って平気なのは説明がつかない。普通なら掴んだ時点で激痛と出血大サービスになってしまうところだし……。


 


「これで終わりじゃないんだなぁ……そらっ!!」


 


「がっ!?!?」


 


 私は鉄条網の網に掴まれたまま一本の鎖で繋がれているラーウッド男爵に振り回されて高い塔の壁に激突させられます!!なんつうパワーですか!コンクリートの壁がその網の大きさより二回りほど大きく破壊され、私も網ごと建物の中へと落ちていきました! 幾重にも体中に棘が突き刺さり、出血も酷いし大激痛です!!堪えるのが必至でまともに声も出ません!!ダメージが滅茶苦茶大きい!


 


「がぁぁぁぁっ!!」


 


 地面に激突し、更に身体に深く突き刺さります!私も悲鳴を上げて、もうホントに意識を失いそうです………。


 


 それを見ながらゆっくりと壊れた壁の穴からホバリングしながら降下してくるラーウッド男爵………。どうだと言わんばかりの悠然とした態度で地面に降り立ちました。万事休すか………?


 周りを目で追ってみるとそこは教会のような建物で……何か神聖な場所のようで木製の長椅子が並び、その前方には祭壇があり、その上の方には聖母!?いや、女神か!?とにかくわかりませんけど綺麗な女性の巨大な銅像がありました。今の壁が壊れて崩れた瓦礫で長椅子等が散々な状態になってます。


 私は、網篭の中で座った状態でいました。何せ出血が酷く、かろうじて………左手が何とか動かせそうですが………キュアを撃てるかどうか………。完全にヤバいな………何か嫌だな……これで第2の人生が終わりって……まだ、2人と幸せになってない!!守れないで終わるなんてまっぴらです!!何か方法はないか……ま、待てよ……2人と言えば、サリーナがくれた小瓶が……。


 懐を探ってみると1瓶ありました。もう1つは落としたか、衝撃で割れたかです。見つかりませんでした………。


 でも、1本………貴重な大事な1本……ホントに使うことになろうとは………そうですね、私が弱い証拠です。そのせいでこれを使うことになるんですから………。


 有難く使わせてもらうよ……君の血は無駄にはしない!………左手で小瓶の蓋を開けて口へと運んでました。


 その刹那一気に体中の血液が沸騰するように熱くっ!!


 


「ぐぅぅぅぅっ!!」


 


 網の中で物凄い熱さが体中を駆け巡りしかし動く事も出来ずにそれに耐えるしかありませんでした。これ、他のヴァンパイア達はどうなんだろ?血を啜って平然としてるように見えるけど慣れてるのかな?でも、まずはこれに耐えきらなければ………。私の苦しんでいる姿に、ニヤリと笑う男爵が居ました。


 


「いいねぇ、その苦しんだ表情は最高の御馳走だ♪気分が良いよ。」


 


 あの……その考え方は理解不能です………返事をする気にもなりません。それどころじゃないですけどね………。


 でも、ようやく落ち着いてきました………楽になってきた……ん!?……何だこれ!?えぇ?キュア!?


 


 とんでもない事が起きました!キュアの銃口からレーザー光線の様に赤い細い光が真っすぐに伸びています!


 私は利き手ではありませんけど、左手にキュアを持ちゆっくりとですが銃口をいろんな方向に向けてみました。


 すると、その赤い光が壁に当たると屈折して更に進み地面に当たって止まります………どの方向でも同じ様に屈折して時には壁に、時には天井に、時には地面に……弾かれたり跳ね返ったりする方向までその光線が見えます。銃口を……ってまさか!?これ銃弾の軌道が見えているのか!?


 


「どうしたのかな?銃を振り回しているが、見当違いの方向ばかりだと思うが?フフフ。」


 


 なっ!?男爵にはこの光線が見えてない?私だけが見えるのか?これはサリーナがくれた奇跡なのか?だとしたら感謝だな。せいぜい悪あがきをしてみるさ………。


 私はその軌道を合わせながら右に3発、左に3発銃弾を射出しました。ギリギリ撃つ力だけが残っていたので、撃てるだけ撃ったという感じです。なので、後は動ける気力も無い……。


 


「フフフ、何処を狙っているのか………全弾私には当たるどころか違う方向ばかりだ……悪あがきだね。そろそろ飽きてきたし、終わりにしようか。」


 


 ラーウッド男爵が右手の鈎爪をむき出しにし上から振りかぶって私に向かって来ました!!網篭の隙間から狙って手刀で私を仕留めようということなのでしょう。その男爵が私の目の前に迫った時です!!


 


「がっ!?ガハアァァァァァッ!!!」


 


 急に男爵が目の前で悲鳴を上げてその場に崩れ落ちます!


 


「せっ……背中がっ!?……ぐっ、銃弾か?……き、貴様…銃をわざと………ぐうぅっ!………。」


 


 ラーウッド男爵の背中に私が撃った銃弾が6発、全弾着弾していました………そうです、男爵が最初の降り立った位置に居た方向に合わせていたら、完全に外してました。しかし、とどめを刺しに男爵がこちらに向かって来ると予想したんです、その方向に合わせた………一か八かですけどね♪♪


 


 男爵は四つん這いになりながら地面に血反吐を吐いていました。かなりのダメージを負わせる事が出来たようです。カッコ良く言えば起死回生ってヤツですかね♪気を失いそうで、動けませんけどね……カッコ悪……♪


 


「やって…くれたね………下等のくせに…やる事も下等だな………。」


 


「ふっ、無差別に…人を殺す…貴方ほどじゃ…ないけどね………。」


 


「ぐうう…き、今日の所は……引き上げるとするよ…。次回会う時は…その次はないよ………。」


 


 男爵がそう言い放ってゆっくりと立ち上がります。ふらつきながらも、上を見上げました。


 


「ヴァンパイアは不死身な種族なのだ……何度でも復活する………一旦サヨナラだね、そうだ名前を聞いておこうかな。」


 


「……リュードだ………。」


 


「覚えておくよ………。」


 


 男爵が上を見上げたまま目を瞑ります……が、そのまま何も起きません………?


 


「な、何だ!?どうしたというのだ!?一体何が………!?」


 


 男爵自身が驚きを隠せないでいます!


 


「な、なぜだ!どうして変身できない!?」


 


 ああ、成程。蝙蝠化して自分の城に帰ろうとしてたんですね、しかし蝙蝠に成れないってどうしてかな?


 そのうちにも男爵が段々と疲弊していきます。男爵にも焦りが見えてきました、背中からの出血もかなりのものです。その傷が一向に治る気配が無い。段々と青ざめていくのが目に見えてきます。


 え、なに?私が撃った銃弾って………ヴァンパイアが回復できないような成分だったりする!?マジで!!


 いや、まさかねぇその怪我位で……ホントに!?


 


「ば、馬鹿な!……馬鹿なぁ!」


 


 男爵が叫んで四つん這いに崩れ落ちてしまいました。疲弊が半端なくなってます。


 


「リュード!貴様何をした!変身も再生も出来ないとは!」


 


 さすがに私にも返事を返す気力もありませんでした。それが返って無言の圧力になったのでしょう、どや顔から一変して悲しい顔に変わりました。青ざめて、懇願の顔をしてます。


 


「た、助けてくれ……どうか……頼む!」


 


 私を掴もうと手を出してきますが、もはや力も無いようで震えながら手も伸ばしきれず……。


 


「た、助け!?……助……………。」


 


 何と、男爵の頭から徐々に灰になっていきます!


 男爵は私に懇願する体勢のまま、灰となっていきました……チェーンの網篭も一緒に。


 取り敢えず、生き残ったのかな?男爵の灰は、壁に空いた穴から風が吹き込み拐って行きました。要は不死身じゃ無かったね、私も同じでしょうけどね.


 あ、明るくなって来たな日が差し込み出した…朝か……ちなみに私は日の光は大丈夫ですよ、実証済みですから逆に人間には怖がられそう……?


 丁度、壁の傍だったらしく寄りかかっていました。ははは参ったな……これじゃ、帰ることも出来ない。


 勝った意味が無いな……良いお笑い草だ……!?


 と、突然背後で扉の開く音が?傍に扉があった様で全く気付かなかった。靴音がゆっくりと近付いて来ます。大人か子供か?男性か女性か?振り向く事すら出来ないでいます、情けなや。


 


 その人!?は膝を着いて覗き込んで来ました。


 


「あ、あの……大丈夫……。」


 


 女性が不安そうな顔をしながら見つめて来ます。私は何とか微笑んで頷きました。


 


「ありがとう、お陰様でね……奴を倒すことが出来た……。」


 


 そうです、現れたのは騎士団長の美人さん。ドン引きしてたのに、勇気あるなあ。


 


 彼女は、自身の服の一部を裂いて私の頭に巻いてくれました。全身血だらけですからね、失血死しそうですよ。で、でもね、彼女を襲うなんてこれっぽっちも思って無いですからね!だって助けた意味が無くなるじゃないですか!それはしません!


 


「お礼がまだだった…ありがとう」


 


 やっと微笑んでくれました、この顔が見たかった………。


 助けた甲斐があるというもの……。


 


「こちらこそ、怖がらせて済まない……図々しいとは思うけど……私を…サリーナの…武具屋まで…連れて行ってくれないかな?」


 


 すると、彼女が目を丸くしました。


 


「彼女を知っているのか?」


 


 どうやら、知り合いのようですね。サリーナが僕になったのは内緒にしておくとして、知り合いなら話は早いな。


 


「知り合いなんだ、お願い出来るだろうか?」


 


「………分かった、私もサリーナとは旧知の仲だ。少しここで待っててほしい。」


 


 ほう?古い知り合いですか、それは良かった。あ、でも後でサリーナとの間柄がバレるな………どうするか………。でも、珍しいですねサリーナが魔族なのを知ってるんでしょうか………?


 私は頷くと、彼女はすぐに外へ出ていきました。人の声や物音が乱雑に聞こえてきます。夜の惨事からすると、かなりの被害で大騒ぎでしょうね。


 


「済まない!遅くなった。」


 


 彼女は足早に駆け込んできました。


 


「馬と荷車を用意するのに手間取った。さあ、行こう、立てるか?」


 


 私は、抱えられながら何とか立ち上がりちょっとずつ歩を進めようとしました。


 


「ちょっと待った、これを羽織った方がいい。」


 


 彼女は大きな布を私の頭からかけてくれてローブの様な状態に。確かに血だらけの姿じゃ目立ちすぎますよね、いくら何でも。


 


「ありがとう。」


 


「いや、良いんだ。それよりも……。」


 


 と、外を見やる彼女に私も怪訝に思いました。外がどうかしたのかな?


 外に出てみてその意味が分かりました。彼女は申し訳なさそうですが、私には十分すぎる代物です。馬は確かにありました。問題は後ろの荷車……幌馬車とはいかなかったようで、2輪の荷物車です。応急に板で背もたれを取りつけてくれてました。文句は言えません!


 私は何とか乗り込み、板に寄りかかってました。自力で移動出来ない分、有り難い。


 

「では、出発する。」

 


 私は無言で頷いて、彼女にOKしました。彼女も頷き返して馬を歩かせて行きます………。


 生きてたのは良かったけど、戻ったら怒られそうだなぁ……謝ら………そう言えばどうやって謝ろう?私………満身創痍なんですけど………。まあいいか、戻ったら考えよう……これからの事も話さなきゃだし………と思いつつ、武具屋までの道を周りを見渡して被害を確認しつつ戻る私なのでした……………………………………。



 

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 読了ありがとうございます。リュードは無事に生還か?はたまた張り倒されるか………次回をお楽しみに♪     紅龍騎神でした……♪♪

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