第5話 仲間?僕(しもべ)?が増えたんですけど……。

 こ・う・し・ん、します。ヨロシクね♪


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仲間?僕(しもべ)?が増えたんですけど……。


 緊急事態は何とか回避する事が出来ました。


 まだ、アリシアが心配ではありますが……。


 あっと……失礼しました、この度ヴァンパイアに転生した“雅 煌太(みやび こうた)”ことリュードです。


 寝堕ちで気が付いてみれば木の上で……そのまま森を歩いていたら希少となっている白狼の獣人で狼女のアリシアを通りすがりに助け……すっかり私は信用されて僕にして欲しいと懇願されて…私も一緒の方が…と決断し契約しました。


 しかし、彼女を諦めていなかった領主が、部下を通じて魔術師が不死を得てアンデッドとなった“リッチのガルド” を追っ手として差し向けて来たんです。そして彼女が魂を抜かれるピンチの時に武具屋の店主さんが、この前私が頼んでいたリボルバーと言う拳銃(形は変わった物ですが)を届けてくれて、形勢逆転しピンチを脱する事が出来たんです。でも、その店主さんが私の前で膝を付いて頭を垂れて突拍子も無いことを言い出しました…………。


 


「エエエッ!私が頂点にっ!?って、どゆこと!?」


 


………………………。


 


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 


 


「貴方はその銃に認められし者……ですがその前に、まずは彼女を手当てする方が先決でしょう。あなた方の宿屋では相手に居場所が割れてしまっています。私の店の方が安全かと。早速参りましょう。」


 


 彼女は私を見て、真剣な面持ちで話して来ました。本気なのは直ぐに分かったので、まだ信用仕切れない所もありつつ、しかし他に手だてもなく私は彼女を抱き上げて店主さんについていく事にしました。


 


「わかりました、行きましょう、お願いします。」


 


「はい、では私について来てください。」


 


 と、彼女は立ち上がって歩き出します。私も彼女を追い掛けますが、とにかく速い!!私も追い付くのがやっと!更に脇道だらけを通り抜けて行く……どんだけですかこの人!ホントに何者!?


 右往左往しながら脇道を


くぐり抜ける様に通り過ぎて行きます。いくら道を知っていると言っても……凄すぎでしょ!?


 ウソッ、あっと言う間に着いちゃった……何処をどう通って来たかなんてサッパリです。断言してもいいくらいです!


 


「こちらから入りましょう。」


 


 彼女は裏口になるでしょう、そちらの扉を開いて私を促して来ます。確かに彼女の店の裏側なので、そこは信用して中に入ります。少し長い通路を通り抜けて、灯りのある場所に出ます。おお、確かにこの間ここは通っているな。


 


「こちらです。」


 


 彼女に案内された部屋に入ると部屋の中央辺りにダブルサイズのベッドがあり、周りに鏡台や洋服タンス等々私用の物がありました、寝室に案内してくれた様です。


 


「彼女をこちらに。」


 


 マスターさんに促されアリシアをベッドに寝かせます。


 


「これを飲ませて休ませれば、回復するでしょう。」


 と渡してくれたのは綺麗な水色の液体!?これなに?


 


「失礼しました、それは回復のポーションです。」


 


 不思議そうな顔をしていたのが分かったようで、説明してくれました。そうか、回復ポーションなんだ……と、感心してる場合じゃ無いな早速……先にちょこっと私が毒味……ふむ、格段に苦いと言うわけではないようです。気持ち体が楽になった気がするし。よし、飲ませよう!


 私はアリシア抱き寄せ、ポーションを口に少しずつ運びます。何とかアリシアも飲んでくれました、良かった……このままベッドに休ませよう。


 私は再度アリシアをベッドに寝かせ、マスターさんに向き直ります。マスターさんも改めてまた片膝を着いて頭を垂れて来ます。


 


「あ、頭を上げて下さい。何度も言いますが、私はそんな偉い人間……じゃなかったヴァンパイアではありませんよ。」


 


「いえ、あなた様にお渡ししたその銃は魔銃と呼ばれる物。貴方はその銃に選ばれたのです。頂点に立たれる御方……。」


 


 頭を垂れたまま、同じことを聞かされるので彼女の肩を掴んで身体を起こし、話し掛けました。


 


「私は、その辺の事が良くわからないんですが、教えてくれますか?」


 


「は、はい♪おまかせ下さい♪で、ですが、その前にお願いがございます!」


 


 嬉しい顔の反面、懇願する顔になって私を見つめて来ました。


 


「お願いとは?」


 


「はい、私もあなた様の僕にして欲しいのです!」


 


「はいぃっ!あ、貴女を……ですか?」


 


 ま、まさかの……いや、先程も聞きましたけど。ホントに驚きです!一体何が貴女をそこまで変えてしまったのか……。え!?私のせい?それは照れますね♪


 


「そうです、店の者達は知っておりますが私は元々魔族です。あなた様にお仕えする為にもこの秘密をお話ししています。」


 


 わっ……秘密事を聞いてしまった……成る程、さっきの道の歩く速さといい、魔術か何かでしょうか、納得です。っと、それはいいとして……私の僕になりたいってホントに?……マジか?


 


「でもどうして?これが関係している事は聞きましたが?」


 


 と、手にした銃をしみじみと見つめながら彼女に問い掛けます。


 


「駄目でしょうか?是非ともあなた様の僕としてお役に立ちたいのです!どうか!」


 


 い、いや、そこまで詰め寄られても断る理由なんてありませんよ、美人だし……しかも下から上目遣いに懇願されてはねぇ、ヤバイなこの誘惑……ウホッ、失礼。


 でもね、私はこの世界に来て間もなくて、分からない事だらけであるのにホントに良いんでしょうか?僕が2人も……って何なんでしょうこの展開は?どこかのドッキリ!とか言います!?


 しかし、それはさておき私としては彼女の申し出は凄く有難い申し出であり、この先も色々と助かりそうなので願ったり叶ったりですが……。


 


「分かりました、貴女を私の僕として契約します。良いですか?」


 


「は、はい♪有り難き御言葉……♪」


 


 わ、破顔した顔がスッゴク色っぽ過ぎる……いかんいかん!どうして首筋に直ぐ目が行くのか……儀式をせねば……。


 


「ご、ゴホン!では、儀式をしますよ。」


 


「はい、お願いします♪」


 


 私の前で目を紡錘って儀式が終わるのを静かに待つ彼女。私もイメージをして地面に六芒星を描きます。そして、彼女を僕に……と祈ると、おお…やはりアリシアの時と同じ彼女の胸の中央に六芒星が浮かび上がって、彼女の心を掴んだ様な感覚が私に入り込んで来ました。彼女の中に六芒星のアザは消え……周りは元の明るさに。彼女も顔をほんのり紅く染めて妖艶に……私を嬉しそうに見つめていました。て、照れますねヴァンパイアですけどね。


 


「私の名はリュードです、貴女は?」


 


「はい、サリーナと申します。」


 


「これからよろしくサリーナさん。」


 


「リュード様、わたくしの事は呼び捨てで構いませんわ。」


 


 と、言われても……何だか照れる……。ま、まあ、そうも言ってられないか。


 


「サリーナ♪」


 


「はい、リュード様♪」


 


 こらこら、何処かの新婚カップルじゃないんだから!アリシアが見たら激怒しそう……。げっ、寝てる筈のアリシアから怒りマークが見える……。


 


「ところで、話しは変わるけど何故私がこの銃に選ばれたからと言って、頂点に……なんて話しになるのか教えてもらえるかな?」


 


 そうです、何度も繰り返される問題発言……頂点……何故そこに行き着くのか凄く知りたい事でした。


 


「分かりました、こちらにお掛け下さい♪」


 


 私は小さくて縦長の丸テーブルに高さの釣り合った丸椅子が2つある内の1つに腰掛けました。サリーナはカップと皿にティーを用意してテーブルに。


 


「お話しいたします。座っても宜しいですか?」


 


「勿論、サリーナの椅子もテーブルも君の物だからね。どうぞ♪」


 


「ありがとうございます♪聞いていた話ですと、貴族のヴァンパイア様達は私共僕の者を同じ椅子……所謂同等の位置に座らせる等と言うことは一切無いと聞いていたものですから。」


 


 ああ、成る程…私も大雑把な知識としてヴァンパイアと言うのはプライドが高いと聞いた事があります。


 


「他のヴァンパイアはともかく、私はそんな上級職ではないよ。ましてそこまで拘っていたら、私の方が気が滅入りそうだしねw」 


 


「優しきご配慮、痛み入ります、では失礼させて頂きます♪」


 


 そうして彼女も反対側の椅子に腰掛け、カップを口に運んでました。彼女はティーをひと口飲んで喉を潤してから彼女は語り始めました……。


 


「実は太古の昔……伝説のヴァンパイアロード(君主)が居たと言い伝えがあるのです。その者は魔銃と自身の爪を巧みに使い、他のヴァンパイアの貴族達も足下にも及ばない程強かったとか。彼は国を創り、ヴァンパイア達を統一し永く繁栄した、と古い文献に書き記されていました。」


 


 そんな伝説が!?……ってよく調べましたね、その方が感心しちゃうな。


 


「私は、この魔銃をどんどん形にしていくにつれ、ドキドキしたのです。そのせいか、その伝承が凄く気になっていました。それで更に文献を調べて行くうちにこの銃がその魔銃であると確信に至ったのです。」


 


 な、成る程……。


 


「つまりは、この魔銃に選ばれた者はヴァンパイアロードになれると?」


 


「そうです!リュード様は爪を武器とし、この魔銃も認めさせてそれを使いこなした……そのヴァンパイアロードの生まれ変りと言えることでしょう♪」


 


 な、なにその自信と爆弾発言……私がそのヴァンパイアの生まれ変りですと?しかも君主になるですって!?……サッパリ、ピンと来ません。何か偉い期待をされたものです。


 


「いや、もし生まれ変りだったとしても頂点に立てるかどうかは分からないよ。自信家ではないしね。貧乏くじを引いた可能性だってある、それでもサリーナは良いのかい?」


 


「はい♪構いませんわ♪この銃を頼まれた時点で、決めていた事ですし♪」


 


 エエエッ!ナニソレ!?別の意味で、私の僕になろうとしたって事?今までモテた事なんて一切無かった私……逆に怖い……。


 


「じゃ、じゃあ今度はこの街や隣の領主の事なんかを教えてもらえるかな?」


 


「分かりましたわ♪では、先ずはこの街は……。」


 


 こうして、アリシアを傍で心配しつつサリーナからこの世界の事情を聞くことが出来ました。


 それと、彼女は私達と一緒に旅はしないということになりました。確かにお店を構えているし、従業員にはまだ任せられそうにないですしね。逆に彼女が街に居てくれる方が私達も何かと動き易いでしょう。その代わり、支援出来る物資や武具があれば都度送る事が出来ると、サポート役にまわりたいと転送の魔方陣を教えてくれました。


 これはありがたい♪緊急時には助かります。まして旅をしていれば野宿する事も否定は出来ません。チートな事ではありますが、活用させてもらいます♪


 


 


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 


 


「なっ!何だとっ!奴が倒されたと言うのかっ!」


 


 そのハラル国のエラル領主の館では驚きの声が上がっていました。


 今は領主の部屋で執事からの報告を受けていたようです。執務室の様で、領主用の大きめの机に革張りの背もたれ付きの豪華な椅子に、壁には絵画が。机の前には対面に長椅子と真ん中にテーブル。


 間違いなく寝室で無いことは確かです。勿論窓もあって、月明かりもその部屋を照らす手助けをしていました。


 


「はい、様子を見張っていた者の話からすると女をガルドから取り返した者は、長い爪を武器とし、途中で銃も使用していたと。」


 


「一体其奴は何者なのだ!」


 


「口から牙の様な物が出ていたのを、様子を見に行かせた者が見たと話しておりました。まさかとは思いますが、ヴァンパイアかもしれません。」


 


「な、なんと……!」 


 


 領主は苦虫を噛む様に顔を歪ませていました。領主からすると、一番あり得ないパターンだった様で。


 


「むぅ……最悪な状況だな……。其奴に太刀打ち出来るかどうかも分からない。しかしどうするか………。」


 


「珍しく、悩んでいる様だねエラル君。」


 


「はぁぁっ!そ、そ、その声は!?ラーウッド男爵様!!」


 


 突然、部屋の窓側から声を掛けられたので驚いて声が上擦ってました。


 ラーウッド男爵と呼ばれたその男は黒髪のストレートのショートヘアで赤いラインが入った黑基調のマントを羽織っている、いかにもヴァンパイアと言わんばかりの風貌。


 この男が男爵とするなら、まだ上が沢山居ると言うことですか……まあ、ある程度は私もサリーナから聞きましたけどね……。


 


「ネズミは捕まえたのかい?子爵様から催促を受けてね、状況を聞きに来たのさ。」


 


「は、は、は、はい!……そ、それがその……。」


 


 エラル領主も顔に脂汗を必至に拭いながら、事の顛末を話していました。


 


「へぇ♪あのガルドがねぇ♪」


 


「は、はい、どうやら見張らせていた者の話ですと、相手はヴァンパイアの可能性があると……。」


 


「ふぅん、成る程…なら、ガルドが倒される可能性はあるかもねぇ♪」


 


「は、はい。申し訳ありません。」


 


 顔が3分の2ぐらい青ざめてました。いくら人間の方の領主と言えど、かなり怖がってます。


 


 しかし、そんな領主を余所にラーウッド男爵は外を見ながら笑みを浮かべていました。


 


「ならば、私が出向くとするかな。毒には毒を持って制すると言うしね♪」


 


「はっ!い、いえ、男爵様自ら出向かれずとも……。」


 


「他に手があるならそうするが、何か方法はあるかい?」


 


「そ、それは……。」


 


 流石に、応えられずうつ向いていました……。


 


「身の程を分からせる事も必要の様だしね、私がいこう。」


 


「わ、分かりました。相手がまだよく分かっておりませんので、お気をつけ下さい。」


 


「それは、誰に言ってるんだい?じゃあね♪」


 


 男爵はマントを翻すと、コウモリとなって窓から飛び去って行きました……。


 


(ちぃっ!この化け物が!)


 


 舌打ちしながら小声で呟いていたのは、男爵には聞こえず……それよりも、もっと厄介な事が私達に迫っているとはその時は勿論知る由もなく……………。


 

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 読了ありがとうございます。リュードはこの先どうなっていくのか……スローライフが得られるのか……続きをお楽しみに♪

 紅龍騎神でした……♪♪

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