第3話 ……愛銃です。
どうも、ヴァンパイアに転生しました”雅 煌太“みやび こうたこと、リュードです。
いやもう、ヴァンパイアと言っても何が出来るのかさっぱり分からないままにあれよこれよと起きまして……。成り行きで、僕となった狼女ことアリシアさんと西の街“ラザルド”に来ていました。彼女の知り合いの宝石商で宝石を買ってもらい、やっと宿にありつけた所なんです……。
で、ベッドが1つしかなく大胆にも彼女が一緒に……と言うのでお互いに緊張しつつも寝ることに。
でも、疲れが出たんでしょうね。安心した顔で寝入ってしまいました。……って、やましいことはないですよ!ね?信じて!!
で、私の方が緊張して眠れなくなってしまい……そっとベッドから降りて、椅子に座りました。明日の武器屋さんで、私専用の銃が見つかるのか…はたまた新しく作ってもらうのが妥当か…。
イメージだけでも、固めておこうと考えたんです……。
元の世界では、銃という武器は世界中にありました。まあ、皆さんご存じの通り短銃からライフル等々様々な用途やパワー、銃弾がいくつまで装填できるかとか創られて改良されて大量に生産されて……。
で、私も護身用と考えて銃を持とうと考えたんです。アリシアの件と言い、こちらの世界もなかなか物騒なので……。
そこで思いついていたのが、元の世界での時にエアー銃、ガス銃、電動銃等々、ミリタリー好きにはたまらないモデルガンが出回っていて……。私は銃の知識がほとんど皆無なのに、1丁だけ凄く気に入っていて自身のお小遣いでガス銃を1つ買って大事に遊んでました……。その形の銃がこっちの世界にもあればなぁと。更に改良出来ればと思ったんです。
その銃とは”リボルバー”と総称される銃で、6発ずつ弾が装填でき撃つごとにシリンダーが回転して弾が銃身を通り射出される……筒の中を通る時には溝で弾を回転させることで威力を増す。銃の種類によっては固い物を貫通させてしまうものもありました。
その”リボルバー”の中でも”マグナム”と呼ばれていた銃があります。44(フォーティフォー)マグナムは代表格でしょうけど、私はその銃よりももう一つの”マグナム”……”コルトパイソン357マグナム”6インチ……
この銃が気に入ってガス銃を買ったんです。モデルガンなので、護身用とか犯罪になんて事はありませんでしたけどね。弾もBB弾と言う白い丸い弾で的に当てるとか、空き缶を狙い撃つとかそんな程度でしたけど私にはその銃が大事でした。今でも元の世界にはあります、どうなっているかは分かりませんが……。
その銃に似た形のものがあって、更に進化出来るなら……無くてもオリジナルで作れるなら……自分の愛用の銃になる……その思いが膨らんでました。万が一の接近戦だけでなく、中距離の戦いでも……。
守りたいものは守らねば……ってかっこつけても、弱いんです私……。ガンバロ♪
と、その武器屋さんに思いを馳せながら夜は更けていったんです……。
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「おはよ♪ゆっくり眠れたかい?」
彼女が目を覚ましたようです。ベッドで背伸びを始めてます。
「ふぁ~~、んん……おはようご……え、え、え、ええっ!!」
途中から覚醒した彼女が大声を上げてました。
「おいおい、声が大きいぞ。」
「あ……はい……。」
「クスクスクス、アリシアはホントに可愛いな♪」
ベッドにお座り状態で顔から全身真っ赤に染めてうつ向いてました……。襲ってませんからね私……ヴァンパイアですけど。
「今日はまず、食事をしてから武器屋さんに行ってみよう。私の求めるモノに出会えればいいが……。」
「わ、分かりました、着替えたら食事の用意をしますね♪」
と慌ててベッドから降りて着替え出す彼女。別に酔っていた訳じゃないんだから、そんなに照れなくても?
「もう少しで、食事が来るから朝食をしよう。それから出かける前に試したい事がある。」
「え、あ、はい、分かりました。」
彼女も着替えを終わらせ、私の向かいの席に座りました。ドアをノックする音がして食事が運ばれてきます。
食事代も少し上乗せで支払ったので、宿の主人も喜んで親切にしてくれます。一応は拠点のような物ですから最初から危険は困るので。
「さ、食べようか。へぇ、美味しそうだな。」
焼きたてのパンが6種類とミルク……と行きたいところですが、コーヒーに似た飲み物で。
「だ、誰かと一緒に食事なんて……何だか信じられません……♪」
「今度からは一緒だね。」
「は、はい!嬉しいです♪」
6種類のパンをそれぞれ半分にして分け合い、これは美味いとかこれはこんな味付けなんだとかパンの味を話しながら食べてました。
「あの……そ、その……昨日はごめんなさい、先に寝てしまいました……。」
「え、ああ、そんな事を気にしてたのか。私もアリシアの可愛い寝顔を見られて良かったよ♪」
「へ!?あ、あ、あの……リュード様ったら……♪」
可愛い!!純だなあ……僕にして良かった、離さないどこ……ヴァンパイアなので。(言ってる本人が意味分からん)
そんな他愛もない話をしつつ、こんなのんびりした生活がしたいなあとふと思ったのでした。私にそんな時が来るんでしょうか?いや、作らねば……。
食事が片付けられて武器屋さんに赴く段階で、もう一つの試練……太陽の光……これを克服できるかどうかで、今後の方針が決まると言っても過言ではない……死活問題なんです。
「さて、フードは深めに被ったと。手袋も履いて……と。どうだろうな?き、緊張するな。」
「そ、そうですね。私も緊張してきました。少しだけ出てみますか?」
「あ、ああ、そうだね。一気に出て一瞬で消し炭は御免だからね。す、少しずつね……。」
私達は部屋を出て宿屋の入り口の扉を開き、日が入るので少し後ろに下がり日光の当たる位置に片脚を出してみました……。お、靴を履いているので、大丈夫そうです。では、手は……ゆっくりと日の光の中へ……手袋が日を遮っているので焼かれずに済んでます!
「おお、イケそうだね。良いんじゃない?」
と、片手だったのを両手を出した途端!ジャケットの腕の裾がちょこっとずれた!!
あああ、手首の地肌がぁぁぁ!や、や、や、焼けるぅぅっ!!私ってバカ!自分自身を呪ってやるぅ……ヴァンパイアですけど。
………………………………………………!? え……は……何で!?
「あ、あの、リュード様!?」
アリシアも驚いてます。両手首が……燃えない?灰にならない……嘘……。
私は恐る恐る手袋を脱いでみます……するとどうでしょう、無事じゃないですか!な、なら顔は?頭は?こうなれば思い切って………………!!
「……おおお……。」
何とフードを取った頭丸出し状態で、日の光に対応している……。
「リュード様、凄い……♪」
アリシアも感動してうっとりと私を見つめます。でも何で日光に平気なんだろ?転生だから?それとも……。
取り敢えずはこれは強みです。夜間しか動きが取れないなんて事になったら行動にかなりの制限がされてしまうし不利な条件になります。なので、チートとしか言いようがないんですけど昼間に行動が出来るのは有難い!手袋とフードの買った意味が無くなりますけど。でも、何かの時はと気持ちを切り替えつつ……。
「じゃあ行こうか。」
「はい、リュード様。」
こうして私達は紹介して貰った武器屋さんへと足を進めたんです………………。
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「何!?黒ずくめの男だと?」
「はい、戻った者からの話からその様です。」
「ソイツは何者だ?独りか?」
「その様です。しかし其奴は自分の爪を伸ばし、剣のかわりに振り回し、その場にいた全員を切り刻んでいたとか。その動きは速く、攻撃は全てかわしていたと。」
「ほう……ふんっ余計な事を。商品が間に合わないではないか……して追手は差し向けたのか?」
「奴を向かわせました……必ずや取り戻すかと……。」
「そうか……だが、あまり事を荒立ててくれるなよ……。」
「勿論です、領主様……。」
ハラル国のエラル領主……まだ、アリシアの事を諦めてはいないとは……。しかも、捕まえるために刺客を送った?なんて奴でしょう。どんな奴なのかはさっぱり分かりません。そんな事になっているとも知りませんでしたから。
その者は、ラザルドの街に私達が居る事を突き止め急ぎ向かっていました。と言ってもまだもう少し後で相対する事になるんですけどね……。
「着きましたね、ここです。」
おお、確かに武器屋さんの面構えです。店の看板は勿論、扉の両側には剣や盾、銃!?でしょうねやっぱり。それが立て掛けられてます。如何にも……と言った感じです。でも、裏の顔があるなんて店を見たぐらいじゃ分からないですよね。
「よし、入ってみよう。」
「はい。」
私達は扉を開けて、中へと進みました。中は小綺麗な感じで、きちんと武器類も飾られてます。値段は付いてるものとそうでないもの。ついてないのは交渉次第と言ったところでしょうかね。
「へいっらっしゃい!!なんの武器をお探しで……?」
いかつい感じのマッチョな風貌のおじさまが低く野太い声で話しかけてきました……。
「ああ、スイマセン武器を勿論、見に来たのですがその前に宝石商さんから紹介状を預かってきました。」
「紹介状だぁ。」
大丈夫かな?この店員さん!?。私が渡すと、訝しげにその手紙を見ながら奥の方へと入って行きます。
「ちょっと待ってな……。」
って!あの人が店主じゃないの!?嘘でしょ、じゃあ店主さんてもっと怖いとか……な、なんか逃げる準備が必要……。
「こんの馬鹿っ!!!お客さん帰ってないだろうねっ!!」
「ひ、ひいいぃっ!だ、大丈夫っすよ~~っ!」
「あたしにとっては大事なお客さんだっ!失礼があったらただじゃ済まないからねっ!!」
「スイマセン、マスターっ!!」
な、なんか女性の怒鳴り声が……しかも、さっきのマッチョな店員さんですよね?怯みまくってる……何が起きてます!?
「ごめんなさいねぇ、うちの若いのが血の気が多くて……あら、いい男♪」
へ!?あの……先程の怒鳴り声とは違って、カウンターに出て来たのは意外と美人じゃないですか。この人が店主さん……所謂マスターと呼ばれてた人ですか?マッチョな女性が出て来るのかと思ってましたが、とんでもない!ナイスバディで美人さんです。奥での声とギャップが怖いですけど……。
成る程、それで武器屋さんなのに清潔感があるんですね。これならお客さんもリピートしてくれるでしょう。
意外と人気そうですね……。
「ごめんなさいね、ひいきにさせてもらっている宝石商さんのお客様とは知らず……失礼な事を。」
マスターと呼ばれる女性は私達に丁寧に謝ってきました。いや、こっちとしてはもっといかつい男性が店主さんかと思ってドキドキしましたけど……。
「い、いえ、武器屋さんなのに美人の店主さんで驚きました♪」
「えぇ~~♪ありがとうございます~♪もしかして、口説き上手とかって言います?」
「い、いえいえいえ、そんな事は全く……素直にそう思ったものですから……。」
「お優しいですね♪何人の女性を泣かせたのかしら♪」
ちょ、ちょっと待って!私って口説いた事もモテた事もありませんっ!断言しますっ!それよか女性から見向きもされなかった人間ですよ!……ヴァンパイアですけど。
「ははは、そんな感じに思われるとは……周りに私を慕ってくれる女性が今まで居なかったので、嬉しいやら切ないやら……。」
「そうなんですか?私ならこんないい男絶対逃がしませんけど♪」
「ありがとうございます。光栄です、今は1人彼女が私を慕ってくれているのでありがたい事ですが……。」
「リュ、リュード様……♪」
「それはそれは、ご馳走様です♪」
良かった、話せそうですね。これなら私の注文を請け負ってくれそうです。
「それで、武器の事ですが……。」
「ええ、ここでは詳細を話すには大っぴら過ぎます。奥の部屋にご案内しますわ。」
マスターさんは、私達を連れて奥の更に奥の部屋へと案内してくれました。ホントの個室のようで、後で聞いた話だとホントに大事なお客さん、もしくはプライベートな人しか入る事が出来ないとか……初対面でそこまで信用してくれるんですか?いくら宝石商の紹介状があると言ってもそこまでは無いと思うんですけど……何で!?
テーブルを挟んでマスターさんと対面に座りました。マスターさんも改めて紹介状の内容を読み返してます。
しばらくすると、別の女性が紅茶!?のような飲み物を持って来てくれました。お辞儀をして退出すると、マスターさんが話を切り出してきます。
「それで、宝石商さんの手紙の内容だと飛び道具を作りたいとか……?」
「はい、私のイメージに沿った物があるかどうか……なければ新しく作る事は可能かな?と思って。」
「どんな形ですか?」
「あ、はい、こう…こう…こうで……。」
私は先のイメージしていたリボルバー”コルトパイソン357マグナム 6インチ”を説明下手ですが話しました。
マスターさんも腕を組みながらしかし真剣に話を聞いてくれました。ただ、顔つきから見ても難しそうな表情です。気持ちに沿った物は駄目なのか……そう思った時でした。
「ちょ、ちょっと待って!? この形……もしかしたら……あれって……。」
急に部屋を飛び出して行くマスターさん、私達の方が呆然となってました。何がどうしたのか……。勢いよく扉を開けて戻って来たマスターさんの手には大きめの石の塊のような物を持っていました……。
「これは、ある場所で発見されて私が引き取った物なの。貴方の言う武器と似ていないかしら?」
「ま、まさか、これ……。」
そうです、その”コルトパイソン357マグナム”に形状が似ていたんです。見えている所が部分的なのではっきりと断言できませんでしたが、かなりリアル感があります。
「どうやら、当たりの様ね。だとしたら、とんでもない武器になるわよ。」
「え、そうなんですか?」
「ええ、たまたまこれを復活してみようと思っていたところよ。貴方なら使いこなせるかも……。」
「お願いします!是非!」
私は深々と頭を下げました。このチャンスを逃したら、二度と手に出来ないかもしれないと思ったんです。その思いが伝わったのか、マスターさんが快く了承してくれたんです。
「分かりました、この話請け負いましょう。」
「よろしくお願いします。」
「お願いします。」
お互いに握手を交わし私に合った銃に仕上がる事を祈りつつ、数日かかるので完成したら届けると言ってくれました。それならとお願いをして店を後に……。
「良かったですね、リュード様。」
「ああ。後はそれを使う事が起きなければいいけどね……。」
「そうですね、私もそう願います……。」
一番なのは、武器だの戦いだのが起きないでゆっくりまったり過ごせるのが良いなぁと思うんですけど……いつそうなるのか……。
「そ、それで、あの……。」
ん? どうしたかな?やけに照れくさそうに彼女が話しかけてきました。
「どうしたの?」
「はい、あの……私に稽古を付けてくれませんか?」
「稽古!?」
ハイ!? な、何がどうしたの?アリシアだって強いんじゃあ……。
「狼の時は爪や牙を使って戦う事も出来ますが……人型の時は、同じ訳にもいかないので……その、護身術ぐらいは……とか。」
ああ、成る程。私も基本的な体術や護身術とかは全く皆無ですから一緒に練習とかいいかも♪銃が出来上がるまで時間もあるし、そうしよう。
「よし、戻ったら早速やってみよう。私も練習したいし。」
「え、そんな、リュード様はお強いじゃないですか!?」
「いや、私も基本になる戦闘術なんて習った事が無いから逆に2人で独自の戦闘術なんて考えるのはどうかなと思ってさ。」
なあんて!突拍子もない発想……自分でビックリ!
「す、凄い……良い考えです!それなら動きを見切られずに相手を出し抜くことが出来ます!」
「良かった、爪での剣術的な戦い方も考えたいしね、そうしよう。」
「はいっ♪」
そんな話で盛り上がりながら、宿へと戻りました。でもその数日後……銃の出来上がり当日ですよ、タイミングが良いのか悪いのか……悪いのは私の所為? そうですか……ガクッ……。
何と、アリシアを狙って”奴”がやって来たんですよ………………………………。
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