第2話 西の街にて
お邪魔します……いや、してます。私は雅 煌太(みやび こうた)、転生してリュードと名乗ってますが……。
この度ヴァンパイアに転生しまして……。
まだまだこの世界が分からない事だらけなんですけど、最初からドタバタでアリシアと言う名の狼女の女性を助ける事になり、しかも僕にしてしまった……どう思います、この展開?
転生して即この状況になるとは……でも、この世界が把握できていないのもまた事実なので彼女に助けてもらえるのは助かるかと。
そして、今彼女と共に西の街”ラザルド”に着いたところです……。人口1万8千人の大きい街で、大きな石の壁に囲まれている街です。門は南門と北門の2か所あり、それぞれ門番が2人居ます。役人が2人居て通行料でしょうか何かお金を払って中に入ってます。でも、私は先の宝石しかない……。換金前だし、困ったな……。
「私にお任せください。街に入るお金は持ってますので……。」
ははは、アリシアさん凄い!よくぞ私の思ってることが分かりましたね。そんなに顔に出ます?あ、出てるんだそうなんだ……。
「済まない、助かるよ♪」
「い、いえこの程度の事リュード様の為なら……♪」
え、頬を赤くして照れてらっしゃる?……わ、私もつられて照れちゃった……可愛いと思って……。
何組か、先に並んでいて順番待ちをしている時にそんな話になりました。で、次は私達の番です。
「私が交渉します。一緒について来てください。」
「分かった、頼むよ。」
役人たちに聞こえないように小声で話し、前に居た組が通行料を払って中へと入って行きました。私達も役人たちの前に出ます。
「何だ、お前達。女は分かるが、男は珍しい格好だな……、この街に何の用だ?」
あからさまに疑ってる顔で、私の恰好を追及してきました。まあ、このジャケットスーツなら分からないでもないですが……。
「すみません、他意はありません。夫はおしゃれにハマっているのです、どうですか?」
「いや、まあどうって言われてもな……。」
アリシアに聞き返されて返答に困ってしまった役人さん……おっと、口の中に牙を隠しておかなきゃ……。
すぐにバレない様に口の中に牙を隠します。バレては居ないようですが……。
「で、何用でこの街に来た?」
もう一人の役人が同じ質問を投げかけてきました。
「衣装屋さん等をまわって、違う衣装も揃えようかと思いまして。ここなら件数も多いですし、気に入るものもあるかと思ったものですから……。」
なるほどね、確かに衣装を探しにと言えばそんなに疑われる事も無いかな。
「そうか、中で面倒を起こしてくれるなよ。通行料を払ったら通って良し。」
「はい、肝に免じておきます。」
彼女は通行料を払い中へと進みました。私も彼女について行きます、やっと中へと入る事が出来ました……。
街の中はやはり大きいだけあって、商店街・住宅街が沢山立ち並んでます。東側の奥は大きな屋敷があり、この街の領主が住んでいるという事でした。因みにあの血晶石はその屋敷と土地が即買い出来ると教えてくれました。
どんだけの価値があるんでしょあの石……。大事に持っておこう……。
その商店街を少し歩いて、突然路地裏に……。彼女が急に振り向きました、どうかしたかな?
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!リュード様を夫などとおこがましい事を言いました!その、ファッション狂とも……ああ言うしかなかったんです!お許しください!」
何度も頭を下げられました。なんだ、そんな事を気にしてたんだ。格式高い他のヴァンパイアさんだったら激怒状態でしょうけど、元の世界での私の境遇からしたら気にもなりません。
「大丈夫だよ、気にしてないし。って事は無いか、夫……と言われて逆に緊張しちゃったよ。私が夫で良かったのかい?」
「え、あ、その……お嫌でなければ……。」
照れちゃって可愛い……なんか私の方がそんな事を言われたら照れますな。初めてそう言われましたし。
「いやな事は無いよ。ありがとう。」
「リュ、リュード様……♪」
あら、うっとり顔で見つめられちゃいました。あの、一応ヴァンパイアですからね。夜の狼さんより怖いかもしれませんよ……。
「さ、まずは両替商?換金屋?質屋?を探そう、まずは小さな宝石を売ってお金に換えて宿を取ろう。それから食事だな。」
「はい♪そうしましょう。知り合いの宝石商があります、そこで換金しましょう。」
その宝石商は、そこから真っ直ぐ行った5件目を左に曲がり更に3件進んだ右手にあり、早速入店。私を見て少し驚いたようでしたが、彼女を見て分かったらしく表情を崩してくれました。
「なんだ、君か……。」
「ごめんなさい、お久しぶりね。」
「ああ、最近顔を見せないからどうしたのかと心配もしてたんだ。」
店の主人と知り合い?何度か来ているようですね。
「ええ、捕まって売られる所をご主人様に助けてもらって……♪」
「はぁっ!?つ、捕まって売られる所だったって?で、助けてくれたのがこちらの方だって言うのか?」
「そうなの、リュード様です。私の命の恩人で、今はこのお方の僕……♪」
「いや、それは良かった…ってなにィっ!!」
おお、店主さんノリツッコミが良いな……気さくそうで良かった。
「でね、宝石を換金したいの。見てもらえる?」
「あ、ああ分かった。見せてもらえるかな?」
私はポケットから小さめの宝石2,3個をカウンターに出して鑑定してもらいます。
「初めまして、リュードと言います。よろしくお願いします。」
「初めまして。あまり見ない顔だが、どちらから?」
「放浪の身なので、何処からとも言えませんが……。」
「そうですか、アリシア自身から僕になるくらいですから悪い人ではないと感じますが……よろしく頼みます。」
「勿論です、私も頼りにしている所で……先程、街に入る時にも助けてもらった側なので。」
そう話しながらも、店主さんの手と目は宝石に見入ってます。私の顔を見上げてちょっと驚いた様子で話しかけてきました。
「どこでこの宝石を?」
「いや、たまたま持っていた物でお金も無かったので換金できればと……。」
「ふむ……。」
店主さんが複雑そうな顔をしていました。
「え、どうしてそんな事を?」
「うむ、アリシアが居るから正直に話すが3個とも純度の高い宝石だ。言い値で引き取るが、どうだ?」
「え、そんなに!?」
アリシアも驚いていました。私も血晶石があるので、この宝石たちも言い値が付くほどの価値があるとは夢にも思わず……。
「いや、当面の生活費と武器を買う事が出来ればと思ったんですけど。」
「武器を!?」
「え、リュード様それはどういう?」
アリシアが武器が無くても強いじゃないですか?と言いたげな顔をしてますが、私としては魔術と爪を剣のように扱う事は出来ますが、それだけでは今一つ不安な気がして……。先の門番の一人が銃のような物を持っていました。ライフルに似た形ですが形状が若干違います。でも銃のようなので、あれば良いかなと。ライフルとまでは思ってませんけど、銃が1丁あれば護身用にいいなと。決して狙い撃ちの腕が良いとは言いませんけどね……。
「ええ、アリシアや自身を守る意味でも銃!?を1つ持てればなと……何せアリシアの件もある事ですし。」
「成る程……分かりました、当面の生活費分をまずは支払いましょう。残りはその武器を購入した時の値段分を…それでどうでしょう?」
「了解です、助かります。よろしくお願いします。」
「じゃあ取引成立です。」
と、早速生活費と言って当面生活していけるだけの金銭をくれました。
「ありがとうね♪」
「なに、君を預けるんだこれぐらいは当たり前だろう。何しろ高価な宝石を売ってくれたんだ、当然の事だ。」
どんだけの値が付く宝石なんでしょ。でもこれで武器が手に入れば御の字です……。
「因みに武器を扱っているお店は知っていますか?改良か新しく創るか出来ると良いのですが……。」
物はついでです、訊ねちゃいました。
「そうか、貴方は知らないのですね。改良から新規まで……分かりました、私の知り合いの店を紹介しましょう。表向きは普通に武器を扱っては居ますが、武器の研究も裏ではしてますから貴方の思う武器が出来るかもしれません。どうですか?」
「願ってもない、紹介して貰えますか?」
「分かりました、私の紹介状を持っていけば話が通るようにしておきます。少し待っててください。」
「ありがとうございます。」
そう言ってカウンター奥の方で紹介状を書いてくれました。欲しいと思う銃があるかどうかですが、改良出来そうなのはありがたいですね。是非行ってみなければ。
「出来ました、これを持って行ってください。」
おお、紹介状……私はそれを受け取りました。
「旅のご無事を願って。」
「ありがとうございます。」
「ありがとう♪」
「アリシア、君も気を付けてな。ではまた、良い宝石があったら引き取りますよ。」
「その時は是非。」
と、その宝石商のお店を出ました。外は星空満天です。……って!思い出した、今は夜になっていたので良いですが、日光の光ってやばくない!?
明日お邪魔すると言っても日中部屋から出られないとか?あ、待てよ服は着ている訳だから……後はフードになるものを被って、手袋を履けば防げるかも……そうしよう。
「リュード様、どうかしましたか?」
私のあたふたした顔を見つめて、怪訝に思ったのかアリシアが声を掛けて来ました。
「ああ、いや直射日光はまずいかと思ってね。」
「あ、そう言えば……。」
彼女もそれに気づいたようです。
「直接肌に触れなければいいのだから、フードと手袋があれば上手くいくかもしれないな。」
「あ、そうですね。後で私が買ってきます。」
「分かった、頼むよ。」
「はい、まずは宿を取りましょう。こちらです。」
彼女に案内されて、暫く歩いた所で宿に到着。夜遅くだったので断られるかとも思ったのですが、何とか部屋を借りることが出来ました。2人部屋……は良いんですけどっ!!ベッドが1つしかないっ!しまった、ベッドを2つの部屋で頼むのを忘れてた!こ、こ、こ、これは緊急事態……。
しばらくすると部屋に食事が運ばれてきました。一緒に注文していたようで、部屋で食事にありつく事が出来ました。
気の利いてくれる彼女だ……フードと手袋を買いに行くとも言っていたのですが、そこの宿屋は手荷物、小荷物になるようなアイテムを売っていたんです。たまたまですよ、丁度あったんですよその物が。早速購入しました、即買いで。
なので、外に出る事は無くなりました……そこまでは良いんです、そこまでは……問題はここから……1つしかないベッド……やっぱり私が椅子で寝るしかないでしょう。女性を椅子になんて…ねぇ……。
「わ、私はソファで寝るから君はベッドに寝るといい。」
と、早速私はソファの方へ。
「い、いえ、とんでもありません!ご主人であるリュード様を差し置いて私がベッドになどと…おこがましいことです。ですからリュード様がベッドの方へ。」
「いや、それじゃ可哀想だし……。私は寝られれば何処でも構わないよ。」
「で、では……一緒に……嫌ですか?」
マ、マ、待て!早まっちゃいけない!貴女は夜の狼さんの事を知らなすぎるっ!ヴァンパイアですけど!私だって欲はあります、抑えきれないかもしれない……。ズ、ズルいよ……嫌ですか?なんて……断れないじゃないですか、どうなっても知りませんよ……。
「じゃ、じゃあ、良い……かな?……その……一緒だけど……。」
「は、はい!」
私はベッドの半分に横になって……ああ、下着ですがね……って私の身体って細マッチョだったんだ……うわ、腹筋割れてる……高校時代に部活をしていてちょこっと腹筋が割れて来ただけでも感動したのに今や完全に割れて……凄いや♪ え、えーとおじさん彼女を待ちます。彼女も下着姿ですが、残りの半分に横になります。うわあ……下着姿も悩ましくて可愛い……おじさん持つのかこれは~……。
毛布を掛けてあげて……顔を見あわせました。
「アリシアのお陰で落ち着けたよ。これからもよろしく頼むよ♪」
「ありがとうございます♪ リュード様って他のヴァンパイア様とは雰囲気が違いますよね?」
「そうだね、私は放浪中だし貴族にすらなっていないしね。」
「そうなんですか?」
「貴族の方が良かったかい?」
「いえ、私は威張っているような貴族のヴァンパイア様よりリュード様の方がよっぽど素敵です♪」
「はは、素敵なんて初めて言われたよ。でも、良いのかい?私は強くも無いし、貴族や王族でも無い……無名のヴァンパイアだけど?」
「はい♪私は助けて頂いた時からリュード様の僕になら……と決めていました。他の誰でも無い……リュード様に……♪」
「ア、アリシア……急な出会いで、急な事になったけど、これからも頼らせてくれ♪」
「そ、そんな……勿体ないお言葉……私の方こそよろしくお願いします♪」
「ありがとう♪」
2人で毛布を被りながら……世間話を少々していました。少しくですが、この世界感が分かった所もありました。
まだ、話を沢山聞きたいのはやまやまですが……彼女が寝息を立てていました。疲れているし安心したんでしょうね、可愛い寝顔です……。
えっ!?夜這い!?!?いやいやいや!そ、そこまでは……自信がありません……ガクッ……………………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます