第4話 エピローグ
その夜、Aさんは寝ている娘を抱いて家を出た。
外にはタクシーを待たせていた。
鞄には赤ちゃん用のお出かけグッズ。
ほぼ、着の身着のままだった。
手には旦那の携帯を持っていた。
見つかったら殺されるかもしれない・・・。
Aさんは怖かった。
お風呂の電気をつけておいた。
娘とお風呂に入っているふりをするための小細工だった。
「警察に行ってください」
Aさんは、タクシーの運転手に言った。
「大丈夫?」
運転手さんは心配そうに尋ねた。
「家庭内暴力かなんか?」
「そんなもんです」
「子どももいるのに、大変だね」
「そうですよね・・・」
Aさんは改めて不安になってそう言った。
あの時、別れていればなぁ・・・。
自分が被害に遭うわけじゃないからいいや。
Aさんはそう思っていた。
4年前に戻れたらなぁ・・・独身で身軽だった頃に。
どうしよう、やっぱり一人で育てられないかもしれない・・・。
「すみません・・・やっぱり、前の場所に戻ってもらえませんか?」
「え、何で?」
「一人で育てられないから・・・」
タクシーは客の言う通り、乗せた場所に向かって走り出した。
子どもは暗がりでスヤスヤ寝ている。
気が付いていない。外に連れて来たことも、父親が何をしているかも。
見なかったことにしよう。
Aさんは心に決めた。
***
大手電機メーカー〇〇〇に勤務する、男(59)を高校生の娘に対する性的暴行容疑で逮捕。娘は幼児期から繰り返し暴行を受けていたが、母親は黙認していた模様。娘から相談を受けた友人の親からの通報で発覚し、今回逮捕となりました。
秘密 連喜 @toushikibu
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