第3話 回顧
その瞬間、Aさんは思い出した・・・。
結婚前にBさんの部屋に行った時のことを。
Bさんは独身者が借りる、6畳の1Kに住んでいた。居室には割と広めのクローゼットがついている。Bさんがシャワーを浴びている間、Aさんはこっそりクローゼットを開けてみた。中に変な物が入っていないかチェックするためだ。
Aさん的にNGなのは、女装のカツラとか、SMグッズとか、浮気を連想させるものなどだった。もし、ここでそういう物を見つけたら、付き合うのをやめようと思っていた。
しかし、Aさんがそこで見たのは、意外な物だった。
それは、小さな女の子の人形だった。Aさんは暗がりから現れたそれに、はっとして、悲鳴を上げそうになった。
小学生くらいの子どもだった。あまりにリアルで、人間が座っているのかと思うほどだった。フローリングの床に体育座りをしている。Aさんは、Bさんが人形好きなのかと思いたかったが、女の子は裸だった。あ、これはもしかして・・・ラブドールじゃないかとAさんは気が付いた。子どものドールがあるということは知らなかったけど、肌触りからして、観賞用でないことは何となくわかった。ロリコンなんだ・・・。Aさんは側にビニール袋があって、中に子ども向けの服が入っているのにも気が付いていた。
Aさんは扉をすぐに元に戻した。そして、何食わぬ顔でベッドに横になった。結婚して、子どもに何かしたらどうしよう・・・。不安だった。これからそんな人に抱かれるかと考えると、気持ちが悪かった。
でも、生まれて来る子どもは男の子かもしれない・・・それに、実の娘に何かするなんて、普通はないだろう。Aさんの結婚への決心は揺るがなかった。もうすぐ38になってしまうのに、今から婚活を再開したら、結婚が40くらいになってしまう。それ以来、Aさんはその人形のことを一度も思い出さなかった。
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