第3話 顔だけでは物足らない
「でもさぁどうせ、顔が変わるならキムタクとか竹野内じゃなくて、若い山崎賢人とか赤楚衛二とかにしとけば良かったよねぇ」
「本当だぁ。現実的な夢を見ちゃったよねぇ」
二人の暴言はもはや止まらない。昨日まではキムタク、福山雅治、竹野内豊が夢だったのに現実になった途端、夢が膨らんでしまう。顔が変わると言う非現実的な現象よりも都合の良い解釈をしてしまっていた。
「ねぇ、さっき佳苗とも話してたけど来週も飲み会開かない?」
「行くっ!」
結局久しぶりだったはずの飲み会は二週続けて行われる事になった。
「久しぶり!」
先週と同じ居酒屋、同じ時間、同じ席を予約して、ビールを天高く掲げて乾杯。3杯飲み干して旦那の話を始める。少しでも条件が変わると事実が変わらないと思った3人は冷静に前回と同じ条件を揃えて旦那の陰口を始めた。
「いやぁ、でもさぁ今週は本当に幸せだった。隣に福ちゃんがいるんだよ!何度か間違えて福ちゃんって呼んじゃったよ」
佳苗が興奮してテーブルをこれでもかと叩く。
「でもさぁ声が旦那はマジであり得ない。って言うより余計に腹が立ってくるよねぇ」
「分かる。夢見心地なのに一気に現実に戻される感じ?マジでウザかった。顔だけでなく声も変わってほしいわ!」
「亜子、耳栓してるんでしょ?」
「だって無理でしょ。気持ち悪い。キムタクの顔で声が旦那じゃ途中でマグロだって」
周りの席に人がいるのも気にせずゲラゲラ3人は大声で笑った。
この日の目的は旦那の声を変える事のみで、3人からは全く仕事の話も、子供の話もせず、只、旦那の陰口を叩き続けた。そして前回と条件を揃える為に閉店を告げられるまで長居し、店の外で旦那の陰口を叩き帰宅した。
その日は中々あゆみは寝付くことが出来なかった。明日起きて旦那の声が竹野内になっていたらと思うとドキドキして目を瞑っても寝る事が出来ない。このまま起きていて旦那が変わらなかったらショックがデカいと思ったあゆみはリビングでお酒を飲み直し、無理やり就寝した。
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