第2話 用心棒

次の日、港に着き、必要なものを手に入れて再び旅に出る事にした。


「さようならっ!」


「バイバーイ」




別れる私達。


そして、船を出港させる。



「ふ〜〜…良かった」

「何が良かったの?」



ビクーーっ



「きゃあああああっ!な、何でいんのよ!」

「だって君可愛いし、女の子一人なんて危ないから」


「そ、そんな理由…良い迷惑!私は一人が良いの!構わないで!船を戻すから降りて!!」



私は船を戻そうと方向転換し始める。




グイッ

止める彼。



ビクッ




「君みたいな可愛い子と旅に出る機会なんて滅多にないのに悲しいな」



「………………」



ボフッ



「うっ…!…つー…みぞおちかよ…」


「私は、そんな台詞に揺れ動きません!男なんて大嫌いっ!良い台詞(ことば)並べて、近付いて、信じられないっ!それに……と、ともかく…降りて下さい!」



船を戻す。



「可愛い子なら世の中には沢山いるんだから、私以外の恋人でも探したら?あなたレベルなら、他にも現れるんじゃない?」


「…君…もしかして…女好き?実はそっち系…?」


「違います!私は男の人が苦手なんです!…あっ!」


「あ〜、そういう事?だったらさ…尚更、一人旅なんて危険すぎるんじゃない?」



ドクン…

一瞬、違う口調に胸の奥に恐怖を感じた。



《今…一瞬変わったよね…》



私は尚更、怖いと思った。



そんな中、海の上で2人きりなんて……


もっと最悪だよ…


そう感じた瞬間だった。




「…………………」



「まあ、それでも君が嫌なら仕方がないか」



そう言って男の人は去り始めた。




私は男の人の背中を見つめるも、すぐに船に乗り込んだ。




そして、私と別れた彼の横を、スッと2つの影が彼の両脇を横切った。



「…えっ…?」



彼は2人の会話を理解したのか、振り返ると1つの船に乗り込んだ事を確認した。



「ヤバイっしょ?…でも…まあ、良いか?俺には関係ないし…」




そして―――――



「Hey!」



ビクッ



「ちょっと!何!?英語で違う人みたいな演技してもバレ……何?その目出し帽。変装しても分かって……」




振り返り話を続ける私。



スッ


ドクン…



言い終える前に私に銃口が向けられた。




「な、何…?」

「Driving change!!」

「えっ…?」



ドンッ

押し退けられた。



「ちょっと!何!?」



グイッと手を掴まれ別の人から押さえつけられた。



ビクッ


私は今までの光景が脳裏に過り怯え、恐怖から体が強張る中、ふと私の視界に大きい袋から札束が目についた。



「…えっ…?」



《これって…まさか…強盗…?》



「あなた達…強盗…まさか逃げ……」



私は暴れ抵抗したが、頰を打たれた。



「…っ…」



更に銃口を向けられ一気に私は怖くなる中、荒々しく洋服を脱がされた。



「や…辞め…」



肌が露わになる中、次の瞬間。



ドカッ


私を押さえていた人が離れた。



「……………」



「What do you when you run away?」

【お前ら逃げてどうするんだ?】



ドキン



「You before you know it」

【お前、いつの間に】



その後、英語で交渉し始める人影。



「さあな?それより人殺しなんて性に合わねーんだ。悪いけど海に飛び込んでくんねーかな?運転してるあんたも殺されたくなきゃ飛び込みなよ!迎えならすぐ来る。その前にサメに食われたりしてな?」



「なっ!」


「ほらっ!飛び込みなよ!」




二人は海に飛び込んだ。




「さーてと、運転、運転」

「ちょ、ちょっと…あなたに…」


「その前に、その格好どうにかしたら?俺が襲っちゃうよ」




私は乱れた格好に気付き、慌てて直す。



「ねえ、何処行く?その前に、今後の事、君に聞きたいんだけど?」


「えっ?」


「本当に一人で旅に出るの?今後さっきみたいな事がないって言い切れるのかな?」


「…それは…」


「まあ君が、一人で良いって言うなら、俺は戻るけど」




「…………………」



「…どうやら本当に男の人、苦手みたいだし。恐怖に怯えていた、あの姿はかなり理由あるみたいだし」


「あ、当たり前でしょう!?あんな事になって恐怖に怯えない方が、おかしくない?」


「…いや…それ以前の問題。相当毛嫌いしてる感じもあったし。一体、君の過去に何があったの?」



「………………」



気付けば、彼は私の傍にいた。



スッと片頰に触れる。




ビクッ


体が強張り、瞳を閉じる。




「………………」



ゆっくりと瞳を開ける。



「…そんな怯えなくてもいいから…とにかく、今は、犯人が置いてる荷物、警察に渡さなきゃならないから、ゆっくり考えなよ」



「…うん…それより、どうして?」

「えっ?」

「だって…船から降りたあなたが…」

「あー…」



✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕



事件の前に遡る。


俺が降りた直後、すぐに二人の人影が横切って、英語の会話に


「ちょうど良い。あの船に乗り込むぞ!」

「了解」



「そう聞こえた。見たら、君が乗ってる船だと気付いた。最初は、放って置こうと思ったけど……」



「ちょっと、これ貸して!いや…頂戴!」

「えっ!?困る!」


俺は、水上バイクを借りた。


「緊急事態なんだ!お手柄はあんたにやるから」

「お手柄?」


「二人の強盗逃走犯が、一隻の船に乗り込んだ。犯人は銃を所持。犯人は海に落とすから、警察(さつ)に連絡して!早く!」


「あ、ああ」



✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕



「で、今を至ってるってわけ」



「そうなんだ」




そして、荷物を警察に渡し犯人も無事に捕まった。




「それで?どうするの?」

「えっ?」

「これから」



「…………………」



「一緒に行った方が良いの?それとも一人で平気?」




私は正直迷った。


さっきのような事があったら?


でも、男の人と海の上で2人きりなんて――――




「迷ってる?」


「…確かに…さっきのような事があったらって思うと一人じゃ不安だし…でも、海の上で男の人と2人きりなんて…」



「分かった」


「えっ?」


「じゃあ、お試しで」

「お試し?」

「そう!一層の事、用心棒でも良いけど?」

「用心棒……それ!!良いかも!?採用!!」


「えっ!?」

「あなたは私の用心棒!!」

「マジで言ってる?」

「うん!」

「マジかよ…」


「だってあなたが出した案なんだから!」

「じゃあ契約のチューでも…」

「それは駄目!手出し無用!」

「えっ…?」


「男の人が苦手な、私に近付こうなんて無理な話!あなたは用心棒!それだけよ!」


「つーか、触れられないのって用心棒の意味あんの?」


「ある!ていうか、私、こう見えても良い所育ちだから逆に好都合!」



「いやいや、俺はストレス溜まるし!ご褒美何もないの

?」


「ない!」




私達は騒ぐ。



そんなこんなで、私、基元 愛。19歳。


彼・湖山 光河(こやま こうが)。20歳。



彼を用心棒として、船旅が始まるのだった。




































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る