お供します♪
ハル
第1話 探さないで下さい
「愛(あい)、今度も良いお方よ。お見合いしてみたらどう?」
お母様が言った。
「嫌だってば!もう口説過ぎ!!私は、まだ、19ですっ!お見合い、お見合いって何なのよ!そういうお母様が、お見合いしたらどうですか?さぞかし、おめかしして正に馬子にも衣装なんじゃないの?いや…ババにも衣装かも?」
「まあっ!!なんて事……っ!」
「私は結婚なんてしたくありません!!」
私は部屋を飛び出す。
「あっ!こらっ!愛っ!」
私、基元(きもと)愛。19歳。
私の母親から昔から口癖のように、
『お見合いでもして早く結婚しましょうね』
そう言われ続けてきた。
多少、お金持ちの間柄に生まれ育った私。
でも許婚とか、政略結婚だとか、そういうのが全く無い分、お見合いをさせられる。
「お見合い、お見合いって、やってられないっ!第一、男なんて大っ嫌い!お母様は私があんな事があったなんて知らないから言われるのよ!」
私は、父から暴力を振るわれていた。
その後、父は他界し、私の母親は再婚。
そして、その父親からも暴力を振るわれていたのだ。
そんな中、私は好きな人が出来、告白して付き合えたのは良かったけど、まさかの暴力。
まるで私は動物みたいに扱われていた気がする。
それ依頼、男の人は苦手で……。
まあ、それ以前の問題だろう。
こんな人生を送っていると、そうもなるだろう…?
その日の夜。
「愛、まだ帰って来ないわね?連絡しても全然出ないし…」
「まあ、良いじゃないか。小さな子供じゃないんだ。心配しなくても、そのうち帰って来るだろう?」
「そうだろうけど……」
次の日。
『お母様へ』
『旅に出ます』
『探さないで下さい』
『お願いします 娘より』
「まあっ!」
「どうした?」
「愛が旅に出るって…手紙を残して出て行ったんです」
「……何!?全く!何て娘だ!まあ良いっ!放っておきなさい!」
そして、私の一人旅が始まるのだった。
―――― しかし
「光河(こうが)っ!!ちょっと!待ちなさいよ!どういう事なのよっ!!」
「いやーー、これには理由(わけ)が……あーーーっ!」
空を指差す。
振り返る女の子達。
「じゃあっ!」
走り去る男の人。
「あっ!ちょ…あの男…っ!」
「おっ!一隻の出港中の船を発見!お邪魔しまーす♪」
そんな事にも、気付かないまま船を出して行く私。
「…女の子…?珍しいー…。まあ、良いや。一眠りしようっと…」
彼は、そのまま眠っていた。
少しして―――――
目を覚ます彼。
「ねえ、ねえ。この船、何処に行くのーー?」
「知らないわよ。目的なんて考え……えっ!?」
バッと振り返る私。
「きゃあああーーっ!」
サササ……ガクッ
後退りし、海に落ちそうになる私。
グイッ
手を掴み抱き上げる。
ビクッ
「きゃあああーーっ!触んないでーーっ!」
ドンッ
押し退ける私。
「ってーー!つーか、落ちそうになってんのに、そう言われても……」
「ご、ごめん…なさい…じゃないっ!その前に、どうしているわけっ!?いつから!?私一人で乗ってきてたのに!しかも男なんてっ!」
「一人っ!?嘘っ!!じゃあ、この広い海の上で二人きり!?いいね〜♪誰にも邪魔されないで何でも出来るじゃん!」
「そう…って…違う、違う!!」
「じゃあ、さっそく本題キスから始め…」
グイッ
近付いてくる顔を押し離す。
「ふざけないでっ!」
「ええーーっ!どうして?」
「範囲1メートル、いや30センチ近付かないで!!至近距離禁止っ!!」
「………………」
「…はあ…はあ…」
興奮して言ったばっかりに、息が上がる。
「………………」
沈黙が流れる。
再び近付こうとする男の人。
一歩近付けば一歩引く。
「そんなに…駄目なの…?まるで磁石の同極みたいな感じだね?」
「…と、ともかく!次の港で降りてっ!一人旅が台無し!!邪魔しないで!」
私は運転する。
「………………」
「ねえ、ねえ」
「何よ!?」
「港、当分ないよ」
「えっ!?」
私は地図を見る。
「明日まで、着きそうにないね。この距離じゃ」
「………………」
「つまり、そういう事だから、一晩宜しく♪!!」
「………………」
《嘘でしょう!?》
そして一晩2人きりになる羽目になるのだった。
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