第4話
目が覚めた場所は不思議なところだった。
不思議と懐かしさを感じるが、脳内をいくら探してもそんな記憶は存在しない。
今居る場所は豪華な場所だった、今目の前に居る女性も豪華な衣装を身に纏っている、この女性も記憶にない。
だが、今目の前に広がる光景だけはどこか懐かしさがあった。
「まずは自分の能力を確認しなさい」
「はい、お姉様」
姉と名乗った女性はどこから取り出したのか豪華な椅子に腰を下ろし、優雅に扇子を仰ぐ。
能力の確認と言われても何をすればいいか分からない。
「すいませんお姉様...能力の確認とは一体どうすればいいのでしょうか」
「それもそうね
表示された数字の羅列。
Lv:20
名前:スカーレット・マナ
種族:【吸血鬼の姫】
職業:【魔法詠唱者】
称号:【真祖の吸血鬼】
HP:446
MP:9999
ATK:321
DEF:588
INT:988
RES:877
SPD:988
固有スキル:【魔力干渉】【不老不死】【日光克服】【弱点耐性】【血の循環】【夜行性】
スキル:【魅了Lv1】【吸血Lv1】【眷属支配Lv1】【眷属召喚Lv1】【他種族威圧Lv1】【血の鋭槍Lv1】【血の鋭爪Lv1】【血の怪線Lv1】【血の宝玉Lv1】
どうやら自分には魔法の適正があるらしい、それから魔力が他者よりも優れている事だ、これには姉を名乗る女性も驚いたらしく、不思議そうに眺めている。
「魔力が以上に高い...魔力干渉...まさか...」
小さく呟くと姉は地面に星形の円陣を描いた。
「これに魔力を流してみなさい、イメージとしては意識を集中させ、力を込める感じよ」
「は、はい」
言われたまま魔方陣に意識を集中させ力を込めてみる、魔法詠唱者とあるのだから使えるのだろう。
魔力を流せば魔方陣は光だし、近くに落ちていた死体が靄に包まれた。
「これはいったいどのような魔法なのですか?」
「これは眷属創造よ、今あなたの身の回りの世話をする吸血鬼を生み出しているのよ」
「吸血鬼...ですか?」
吸血鬼とは一体何なのだろうか。
自分自身が吸血鬼という種族なのは理解したが、吸血鬼という種族そのものが理解できない、元々魔法に適性のある種族なのだろうか...。
少しすると1つの死体は起き上がり膝をつく。
「もう一つは失敗みたいね、スキルレベルの問題でしょうね」
もう一つの死体は塵となり消えてしまったが、未だ臣下の礼を取る死体の姿は変わり、肌は青白く突出した犬歯が人間ではない事を物語っている。
「では名前を授けてあげなさい」
「名前...ですか...できればお姉様の案を頂けないでしょうか...」
「まぁ仕方ないわね」
姉は少し天を仰ぎ見るとすぐになにか閃いたのか扇子を勢いよく閉じる。
「そうね、レイハンなんてどうかしら」
「ではその名前で...」
マナは意識を死体に集中させ「レイハン」と思い浮かべると、主従関係が成立したのか死体の体組織が変わっていく。
元は18歳程度の見た目だったが、今は初老に差し掛かった紳士然とした老人だ。
髪も髭も白いその老人、いや、レイハンは恭しくお辞儀をするとすっと後ろに控える様に動く。
「当分は身の回りの世話を
「は、はい、あ、あのお姉様のお名前は教えていただけないのでしょうか...」
「そうね、わたしはスカーレットよ、さて、」
閉ざされた扇子をバッと開きスカーレットは外へと歩みだした。
その後ろをついて歩いていくと徐々に外の音が聞こえるようになり、なにやらとても騒がしい。
広がっているのは争い、いや、戦争の後処理だ。
死体の火葬や金品の捜索から運搬が行われていた。
「これは...」
マナには行われてる事が理解できなかった。
何故そのような事をしているのか、何故人間同士で争っているのか。
どんなに思考を巡らしたところで結論は出なかった。
スカーレットはため息をつくと人間の一人に指を差し魔法を放つ。
「
放たれた炎の玉は外れる事無く人間に当たり悲痛な叫び声と共に人間は倒れた。
それに気付いた周囲の人間たちが各々武器を持ち一行を取り囲む。
「
「銀武器だ!あぁ...後は...十字架とか...か?」
「知らん!!とりあえず信仰系の
人間の男が指揮を執り警戒を怠ることなく戦闘態勢に移行する。
そんな人間達を他所にスカーレットは優雅に前へと歩み出ると、持っていた扇子を一閃。
すると突如爆発的な強風が発生し相手の陣形を一撃で吹き飛ばし破綻させた。
「さぁ、まずは魔法の練習よ」
「はい!
迷いなく放たれた火球だったが、スカーレットの火球とは違い、威力が足りなかったのか人間の一人を焼き尽くす事は出来なかった。
その後も様々な属性を司る初歩魔法を試し打ち程度で放つ。
「魔法適正は全て良いようね、あとはレベルの問題かしら」
「お姉様、魔法とはこんなに簡単に扱えるものなのですか?」
「そうね、一般的には詠唱を必要とするけど、私達は特別だから頭でイメージするだけで使えるのよ、さて、次は属性の融合を試してみましょう」
マナは頭でイメージするがしっかりとイメージが確定しないせいで魔法は上手く発動しない、例えば火属性と水属性、各属性を5対5で扱うのか4対6で扱うのかで魔法の効果はがらりと変わる。
どちらの属性を主体にするか、そのイメージがうまくできていないのだ。
「属性の融合はまだ早いかしら、ならいっそ全部の属性を合わせてみたらどうかしら。火水木光闇、それぞれの属性を均等に融合するイメージよ」
「は、はい!お姉様!!」
そしてそれは眩い光を発する。
すべてを照らす純白、光力は衰えずあたりを白く染め上げる。
そしてそれはゆっくりと
「あら、これはできるのね、想像以上に魔法の才に恵まれているようね」
「これでよろしかったでしょうか?」
「えぇ、これはあなたの奥義、必殺技とも言える魔法、しっかりと練習してちゃんと扱える様にするのよ」
「はい!!」
元気よく頷く少女とは裏腹にスカーレットは僅かではあるが恐怖を抱いた。
それは魔法が去った後の光景、なにもありはしなかった、白に包まれた街は消し飛び跡形も残らない、星をも崩壊させる魔法...今回はあれの制御に成功しこちらに被害はなかったが、仮にあれがこちらに向いていたとすると...そこまで考えスカーレットは考えるのを止めた。考えても仕方のない事だ、制御できるように育てればいいだけのことなのだから...。
あれから15年の月日が流れた。
姉であるスカーレットととの生活もだいぶ慣れてきた。
スカーレットは吸血鬼としての生き方をマナにすべて叩き込んだ。
眷属の増やし方、領土の拡大方法、吸血鬼特有の弱点の克服、そして、女...それも乙女としての生き方。処世術というやつだ。
丁度、スカーレットと出会った日から15年、いつもの様に眠っていると急な寂しさに襲われ目を覚ます。
目を開いたそこには、やさしそうにマナの頭を撫でるスカーレットの姿があった。
「あら、起こしちゃったかしら?」
「んん~」
「貴女はもう立派な吸血鬼。もう私の元を離れ...私が貴女の元を離れなきゃいけない、でも、貴女ならきっと大丈夫、だから生きなさい。そしていい男を見つけるのよ。優しくて、強くて、守ってもらえるような、どれだけ時間が掛かってもいい、だから、幸せになりなさい―――マナ。私の可愛い愛娘」
スカーレットの言葉を聞いてもマナの意識は薄かった、深い眠りに誘われ、夢か現実か区別もついていないだろう。
そんなマナはウトウトと首を揺らしながらスカーレットの胸に抱きつき再びすやすやと眠りについた。
そして、スカーレットは館を飛び出し、マナの元に戻ることはなかった。
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