第41話 魔術戦

「クセル! 術を『氷棺』を解除する。」

シャクティが叫んだ。


「だめだ!」

クセルは、キッパリと答えた。


「しかし。これでは『氷棺』が邪魔で攻撃が通らない。」

「“ヤツ”は、こちらの用意したフィールドの中で戦ってくれている。」


突進したクセルの体が、氷の棺桶に吹っ飛ばされる。普通の人間ならばそれだけで、致命傷になるような衝撃だ。

実際に、起き上がったクセルの、腕が妙な方向にねじれていた。

一振りすると、元に戻った。


「こちらが一度、用意したフィールドを引っ込めるなんて、カッコ悪いことができるかっ!

Dad¥;Gilda;lfmsldkq390ur92488-03 !!!」


「じ、じゃあ・・・・」

「間違いない! わたしたちは目的にたどり着いたのだ。

あとは・・・『試し』を受けるだけだ。我々が共に語る価値のある相手かどうか。」


クセルの言葉の一部は、遠い昔に失われた言葉で発生された。

観衆にもその内容は知られたくなかったのである。


Dad¥;Gilda;lfmsldkq390ur92488-03


現在の西域で話される一般的な言語に、翻訳すれば


“王の御前であるぞ。”


クセル・アヴァロンは、目的の達成まであと一歩まで来たことを、実感した。

グランダの魔王子ハルトは、王位継承の条件として「最強のパーティ」を編成するよう、父王から命ぜられた。

彼は、単身魔王宮へと潜り、戻った時に、「魔王宮」内部で知り合った仲間で編成されたパーティを連れていた。

それが、「踊る道化師」。

そのなかに、「真祖」ロウ=リンドの名を見いだしたクセルは、冷たい心臓が鼓動を始めるのを確認した。

真祖に会うことができる。


真祖ならば、この呪われた身にかけられた呪いを除去できる。

カザリームから離れることのでしない、クセルはなんとか、「踊る道化師」とコンタクトをとる方法を模索した。

例えば、自分たちの偽物が暴れ回っていたら、どうだろう。

制裁をくだしたくはならないだろうか?


あまり、高い可能性ではなかったが、彼女はそれに賭けた。

そして、それは、予想以上に理想的な形でむくわれたのである。


あとは!

赤光を放つ目が、回転する棺桶を睨んだ。

わたしが、わたしとシャクヤが、この者の試しを通過出来ればいい。

それで、真祖に会うための道は開かれる。


「昏らき森の魔女、氷河の果の碧零花をもって産まれる命を雪ぐ!

血鎖千条!」


まるで、血に浸したような赤黒い鎖だった。

地面から噴き出すように出現したそれらは、高速で回転する棺桶に絡みつき、ついにその動きを止めたのである。


この間に、シャクヤも、また次の魔法を完成させていた。

「消滅の光!」


それは、古竜をも葬る禁断の魔術。正直、閉鎖空間以外では使って欲しくは無い。

ほら、観客席にでも命中したら、その後ろの港湾管理局の建物こみで、消滅させてしまうから。


無敵の光線は、氷の棺に命中し、反射してシャクヤの立っていたすぐそばをかすめて、地面に突き刺さった。爆発は起こらない。だが、光がえぐった地面は、溶けて、オレンジ色の炎を上げていた。



「光である以上、反射はできる。氷の棺を鏡に見立てて、反射させたのか。」

シャクヤは、顔色を変えている。

「そして、わたしたちにも、観客にも被害の出ない角度を計算して?

なるほど、確かに。」


“古の魔王、その人かもしれないな。”


シャクヤは、剣を頭上に振りかぶった。

一撃で決める。

棺ごと両断し、骨肉もろとも、血の一滴までも他の次元に飛ばす。


クセルの血鎖によって、回転を止められた棺であったが、完全にその自由は失われてはいない。

今も、シャクヤの光魔術を跳ね返したように、角度の調整程度の動きならば、やってのける。

そして今も。

シャクヤの一刀両断の構えを笑うように、カタカタと動いていた。


「シャクヤ、いや『ルト』。大魔法はなしだ。こいつは魔法の熟練者だ。

後の先を取られる。」

クセルは、そう言いながら、さらに鎖を増やした。


「わかった。コツコツ削るんだな。」


そう言いながら、シャクヤは、全身の力とバネを使って、全身全霊のいちげきをはなっていた。

氷棺を。それを縛る鎖もろとも。

リウを真っ二にする攻撃が。





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