第17話 はじまった学園生活

寮の部屋は、入学年と言うよりは、年齢で分けられているらしい。


あと、性別も。


亜人は亜人で一括りになるらしく、ギムリウスとアモンは二人部屋で同室。

ロウは、一人部屋をもらっていたが、これは吸血鬼という種族の特性が加味されたんだろうと思う。


ぼくらは、三人部屋であとの一人は、マシュー坊ちゃんだった。

彼の一派が、あんまり坊ちゃん、坊ちゃんを連発するので、クラスでの彼の呼び名はマシュー坊ちゃんになってしまったのだが、まあ、これは仕方がないのかもしれない。



授業は、聴いてるふり、寝てないふり、をすればいいものではなく、十時間ばかりのコースを十日かけて受講の後、試験があるらしい。

そこで受からなければ、さらに十日。

特に厄介だと思われたのが「一般常識」で、これを合格しない限りは、学校の外への外出すら禁止。ずいぶん厳しいと感じたが、受け始めて納得した。


ランゴバルドは、少なくとも中心部の道は、きれいにマス目状に区画整理されており、道は、機械馬のひく大型馬車が楽にすれ違えるほど広い。

つまりそこを移動するには歩行者も守らなければならないルールが、あって、例えば道と道が交差する場所には、一定間隔で色がかわる表示版が置かれている。


正面の表示版の色が青なら進んでいい。赤なら止まって、色が変わるのを待つ。


店での買い物には、基本的には西方共通通貨のみを使用。単位はダル。

両替場所は、日常の買い物に使う硬貨ならば、路上の両替商が行っているが、正規の認可を受けたところを使うこと。でないと、贋金をつかまされる危険がある。

認可された両替商のマークは、これこれで、いまの相場はたとえばグランダの銀貨1枚なら32.5ダルとなる。


テキストもよくできていたし、これは確かに、何もわかっていないヤツを外に放りだせない内容だ。


「と、言うことで。」


夕食に行くために集まったアモンとロウに、ギムリウスの食事について、あれこれ指示している間にも時間はたつ。

リウは、今回はマシューたちと食事に行くようだ。

もともとのメンバーにプラス、エミリアやあのラウレスに一撃いれた剣士の少女もまじっている。

これはもうあれだ。マシュー派じゃなくて、リウ派でいいんじゃないか。


ドロシーが、夕食の誘いにきた。彼女はもちろん「一般常識」関連の補講などはなく、それでもいくつかの基礎科目で、マシュー坊ちゃまと同席するために、それを受講している。


それについての愚痴をきいてほしそうだったのだが、ルールス先生に呼ばれていると伝えると目を丸くして「元学長の?」と聞いた。


それは聞いてなかったな。まあ・・・・


ローゼバックの真実の瞳


を使う魔導師がただものであるわけがないか。


ドロシーは、リウたちと夕食にいくことになった。

「またね。」という意味の内容を表す言葉を十回は繰り返してから、ぼくはドロシーと別れた。


教官棟は、寮から10分ばかり歩く、別棟だ。

3階建てで、入り口にエントランスのある、まあ、言ってしまえば貴族のお屋敷風の建物だ。


門番に話をすると、すぐに部屋に通された。


ドアをくぐった瞬間。

ぼくの顔が歪んだのに、気がついたのだろう。待ち構えていたルールス教官は面白そうに笑った。


「わかるのか?」


わかるに決まってる。

「“迷宮”の“階層”が変わった。」


「なるほど、さすがに『銀級』に登録しようとしただけのことはある。」

ルールスは、ぼくに座るように指示すると、サービスよく

「少し長い話になる。飲み物はいるか?」


「それとあと、なにか食べるものも。夕食を食べそびれました。」


「遠慮ないのお。」


ルールスは、デスクの装置に呼びかけた。


「ネイア! なにか飲み物と軽食を。」


教員兼任の護衛をこんな使い方をするのだろうか。ネイア先生に少し同情した。


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