第13話 おまえが強いのはわかったよ
強いのはわかったよ!
またひとり、受験生がふっとんで地面に倒れ込む。
打ちどころが悪かったのか、完全に気を失っているようだ。
このラウレスという黄金級の冒険者を、ぼくは好かない。
見たところ、ぼくやリウとそれほど違わない少年から青年期の人間の姿をしている。
こんな微妙な言い方をするのは、ラウレスの正体が竜だからだ。
わかるのかって?
そのくらいは、わかるんだ。
いわゆる知性を持った竜。
古竜というやつだ。
アモンの方をそっと見ると、彼女は険しい顔で少し頷いてみせた。
ほかのみんなは、と言うと、リウは別に相手が、古竜だろうがグレーターデーモンだろうが、気にしていない。
ギムリウスは、相変わらず、試験よりも地面のアリンコに興味があるようだった。
ロウは、なんというか、カッコつけていた。確かにカッコいいお姉さんなのは否定しないから、へんなキメポーズはやめて欲しいと思う。
「いやあ!」
それなりに気合いのはいった掛け声で木剣で斬りかかった少女は、たぶんいい師匠について、みっちり稽古を積んでいたんだと思う。
ラウレスは、剣が首筋に当たるのを委細構わず
「踏み込みが甘い!」
と叫んで少女を殴り倒した。
違うだろ。踏み込み甘いんならかわせてるだろ。いまおまえ完全に油断しててもろに一撃くらったよね?
なんで当たってないことにしてるの?
ひょっとしたら、まさかとは思うんだど、最初に
「一撃入れられたら褒美をだす。」
って言ってこととは関係ないよね? まさかね。
「育ちすぎの変態蜥蜴が。」
アモンの言い方にトゲを感じたて振り返ると、珍しく彼女は嫌な顔をしている。
「知り合いなの?」
「あれ、とか?
勘弁してくれ。あいつは有名なんだ。それこそ、わたしよりも、な。」
「強いの?」
「変態蜥蜴なんぞに知り合いはいない。」
竜にむかって、侮蔑の意味で蜥蜴よばわりするのは、現在ではひろく使われているスラングだが、歴史上、最初に言ったのは、この人らしい。
本人からきいたマメ知識である。
「ルト。おまえにあいつに、少し似てるな。」
と、リウが言った。
どこがっ!
と言い返したぼくにリウは笑いを含んだ声で
「かわいい顔で親切そうに相手を踏みにじるところが」
と言った。
はい。
いま、ラウレスが、やってるように、物理的にではなくて、プライドのほうなら、踏みにじったことならあったかもしれない。
でも、それはお互い様なんじゃないですかあ?魔王さま。
受験生は見るまに数を減らしていく。試験官の顔色も悪い。
それはそうだろう。受験生が片っ端から動けないほどの怪我を負わされているのだから。
落とすため、ではなくて実力を見るための試験でこれをされたらたまらない。
当然手当だって必要だし、あとの指導にだって差支える。
「剣の実技試験は辞退いたしますわ。」
例の御曹司のグループに、順番が回ってきたとき、世話役の女魔法使いがサッと、あゆみ出て、そう告げた。
なるほど、その手があったか。冴えてるぞ、ドロシー!
ラウレスが、じろりと、試験官を、睨んだ。
「実技の試験は、零点になりますが、もともとがクラス分けのための試験ですので。
受ける受けないは受験生に任せます。」
試験官もほってとしたように、口早にそう言った。
「ならば、少しハンデをつけようではないか。」
試験官の冷たい視線に気が付かないのか、この、変態蜥蜴は。
「君たちは魔法も使え。わたしは、魔法なしで構わない。
この、条件でも尻込みするか?
冒険者というのは、なにより勇気が肝心なのだぞっ!」
「わたし。やります!」
残った受験生の列から歩みではのは、あのリウが、助けたエミリアという少女だった。
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