第11話 不得意分野
ギムリウスが困っているのはなんとなくわかる。
足取りがなんとなくおぼつかないし、サングラスの奥の目がキョドっている。
「やめさせたほうがいいんじゃ・・・」
ぼくが言いかけると、リウが制した。
「やらせてみよう。この先も己の能力の制限される場面は多いだろう。
創意工夫で戦うことを学ぶ必要がある。」
ギムリウスが骨の剣を構えると、皿が投じられた。
皿はゆっくりと。
放物線を描いて。
そして空中の一点でぴたりととまった。
「次。」
異常事態に目をまるくしている試験官にむかってギムリウスが言った。
「次、お願いします。」
次々と投じられた皿は、すべて空中で静止した。
それから、とことことギムリウスは、皿に近づき
「えい」
「やあ」
「とう」
と、聞いている方も気の抜ける掛け声をあげながら、次々と骨剣で皿を叩き壊した。
「失格・・・のための試験ではないから失格ではないが、これは無効。」
試験官はシビアである。
「もともと、中、遠距離でも攻撃能力の特性をみるものだから、皿を静止させたまではいいが、壊すのにいちいち近づいてしまったら試験の意味がない。無効。」
それはそうだな。
とぼとぼと列に引き返すギムリウス。
次のロウは、得意の甲虫弾で、すべての皿を壊し、アモンは、凝縮したブレスで皿に穴だけあけて割らない、とう高度な技を披露した。
「落とされる心配がないのはありがたいのですが・・・できれば同じクラスになりたいです。」
ぼくがリウにささやくと、リウはニィっと笑って
「そんなにオレと一緒にいたいのか?」
とか抜かした。
全員が終わったところで、休憩がはいり、続いて接近戦の試験が行われる。
事前情報によれば、相手は「鉄級」の冒険者とのことだったが・・・
「急遽ではあるが、黄金級の冒険者ラウレス殿が試験官として、参加いただけることになった。こんな機会はめったにないぞ。
みな、胸を借りるつもりで励め!」
試験官のひとりが興奮した面持ちで受験生に告げた。
「黄金級ってどのくらい? フィオリナくらい?」
ギムリウスがささやいた。
ぼくも銀級より上だと、いわゆる探索や冒険の成績が加味されてくるので、単純にどのくらい強いのかはわからなかった。
「よくわからない。でも一説には、単独で古竜に挑んで生還できると黄金級だと言われている。」
「ふうん」
ギムリウスはすねたように言った。
「つまんないの。」
「まあ、まあ。そう捨てたものでもない。」
自らも古竜であるアモンが、取り直すように言った。
「無駄に長生きして『古竜』などと名乗っているやつは、ただの育ち過ぎのトカゲだが、そうでないものもいる。」
少なくともこの時点でぼくはひとこと、注意するべきだった。
これは接近戦の実力を図るための「試験」であって、別に相手を倒さなくたっていいんだよ。
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