苦しめられる理由
無事にサプライズが、成功して僕達四人は月の星公園に来ていた。
相変わらず親子連れがいる。
美咲さんが、見つめながら話した。
「昔ね、華や晴海と話した事があるんだ。子供が出来ない
椚さんは、隣に立った。
「詩音さんは、欲しかったんですか?子供」
「小さい頃の俺は、勝手に男もどうにかすれば子供が産めるもんだと信じていた。それがね、無理だって気づいた時絶望したんだ。」
そう言って、柔らかい笑顔を浮かべる。
「ちゃんとカミングアウトできたのは、あの店を持ってからだった。お客さんが、彼氏にプロポーズするって嬉しそうに話してね。その人に子供は?って聞いた事があったんだ。」
美咲さんは、子供達を見てる。
「そしたら、その人が言うんだよ。美咲君の頭の中は、最初からいる前提で動いてるんだねって」
「どういう意味ですか?」
月が不思議そうに首を傾げる。
「親がいるのは、当たり前だと思って生きてきたわけだろ?俺も父親が途中でいなくなったけど。最初からいなかったわけじゃない。その人は、俺に言った。いる前提で動くと手に入らなかった時に絶望しか残らないよって、そしてそれに囚われてしまうよって」
いる前提か…。
「だから、美咲君は結婚すれば子供がいるという前提で私にその質問をしたんだろ?って言われた。そうかもしれないって思った。だって俺は、男も子供が産めるって信じてたから…。」
椚さんは、美咲さんの肩に手を回した。
「その人が言ったんだ。ないのは、不幸なのかな?って…。祖父母がいない、親がいない、兄弟がいない、友達がいない、恋人がいない、伴侶がいない、子供がいない。ないのは、不幸でしかないのかな?って。俺は、答えられなくてね。」
美咲さんの目から涙が流れた。
「その人は、私はあったからずっと不幸だったんだよって笑ったんだ。一番最初に結婚しようとした相手が亡くなったんだと言った。それからの人生は、絶望だったと…。誰かを好きになれば、失う事を考え次第に付き合いが浅くなっていったと。最初からなければ、私は絶望などしなかったと…」
そう言いながら、椚さんの手を握った。
「だから、その人はない前提にして生きてみようって決めたんだって…。そしたら、自分を愛してくれる人にまた出会えたんだって笑ってた。俺は、まだある前提だったんだよな。優君に子供は何て言っちゃって」
そう言って美咲さんは、涙を拭った。
「俺は、詩音さんを好きになった時からない前提でしたね。詩音さんが俺を好きになるわけない、付き合えるわけない。って、全部ないだった。だから、詩音さんが受け入れてくれた時嬉しかった。これ以上望むものはないって思った。」
「俺も、優君のお陰でかわったよ。なくても、いいんだって思えたから」
そう言って、笑ってる。
「じゃあ、仕込みがあるので帰ります。」
椚さんは、美咲さんの手をとった。
「どうせ辞めちゃうなら、どうどうと手を繋いで帰りましょう」
「ハハハ、そうだね。月君、星君、ありがとう。また、来てよね。」
「はい」
「今日は、ありがとうございました。」
「じゃあね」
美咲さんと椚さんが、帰って行った。
「
「何、突然」
「苦しめられてるんでしょ?その事に」
「ああ、そうだね」
「僕は、いらないよ。椚さんと同じ。僕の望みは叶ってるから。こうやって、月が笑ってるだけでいい。」
「見てると欲しくならない?」
「みんな、そうなんじゃない?でも、僕は見てるだけでいい。一人の人間を育てあげるなんて、僕には出来ないよ。」
「どうして?」
「そこまで、いい人生を歩んできてない自信だけはある。」
「俺も、そうだな。」
そう言って、月は親子連れを見つめてる。
僕も、月の腰に手を回して見つめる。
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