サプライズのお願い

俺達の前に現れたのは、椚さんだ。


「ここです。」


やってきたのは、moonstarジュエリーだった。


「婚約指輪を貸し出してくれるんですよ。」


「サイズ、わかるんですか?」


「華君が、計ってくれました。」


そう言って、お店に入った。


「ここ、有名なんですよ。プロポーズをもっと簡単に出来るようにってコンセプトです。指輪のサイズがわからなくても、好みのデザインがわからなくてもいいって事です。」


店員さんが、やってきた。


「いらっしゃいませ」


「予約してる。椚です。」


「どうぞ、こちらへ」


そう言って、別室に案内された。


「男の人へのプロポーズで、間違いなかったですか?」


「はい」


「指のサイズはわかりますか?」


「はい、16号であってると思います。」


「はい、わかりました。」


男と聞いても、店員さんは驚かなかった。


「この種類から、お選び下さい。」


「せっかくなら、一粒がいいですね」


「喜ばれますよ。」


「じゃあ、これで」


「かしこまりました。」


そう言って、店員さんはいなくなった。


「これは、何をしてるの?」


「プロポーズ用のリングを借りてるんです。ここだけがやっているサービスです。30号まで選べます。失くした場合は、全額払わないといけなくなりますが…。プロポーズから、一週間以内に借りた指輪を持ってくる事とこの店で婚約指輪を買う事、その条件を守っるなら、5万円でプロポーズ用の指輪を貸していただけるんです。」


そう言って、椚さんは笑ってる。


「しかも、イミテーションではなく。全て、本物です。本物を貸してくれるのは、こちらだけなんです。」


そう言うと店員さんが現れた。


「商品は、こちらになります。内容にご納得いただけましたら、こちらにサインをお願い致します。」


椚さんは、サインを書いている。


「5万円になります。一週間以内にお待ちしております。」


「はい」


椚さんは、料金を支払って指輪を受け取った。


俺達は、店を出た。


「食事が終わったタイミングでいいたいのですが?」


「はい、黙ってます。」


ひかるの言い方に笑いそうになってしまった。


「よろしくお願いします。」


「任せて下さい。」


「でも、何でプロポーズしようと思ったんですが?」


「詩音さんが人生の覚悟を決めたのに、俺だけ覚悟を決めないのは違うのかなって思いました。俺も、あの人の10年を背負う覚悟を決めたいと思った決意が指輪です。」


そう言って笑った。



そして、今美咲さんに指輪を見せている。先に美咲さんに色々言われてしまったが、サプライズできたようでよかった。


「もしかして、プロポーズされてる?」


「それ以外に、こんなの持ってる人はいますか?」


「俺は、子供産めないよ。男だよ」


「だから、何ですか?俺は、子供欲しいなんて一言も言ってませんよ。」


「一緒になる未来に幸せだけがあるわけじゃないよ。」


「詩音さん、急に怖くなったんですか?幸せばかりある人生なんて楽しくないですよ。」


「俺は、優君に甘えてるだけだよ。傷つけるかもしれないよ。嫌いになるかもしれないよ。」


「詩音さん、俺は甘えられて嬉しいです。傷つけられて嬉しいです。嫌いには、絶対なりません。それは、自信があります。詩音さんに片想いしていた5年間以上に俺は詩音さんを愛する自信があります。結婚して下さい。俺が、詩音さんの人生を背負って生きます。だから、俺に詩音さんのこれからの人生を下さい。お爺ちゃんになっても傍にいます。詩音さん以外何もいらない。だから、詩音さんはこの先、何も苦しまなくていいんです。俺の望みは、詩音さんがいるだけで、全て叶ってますよ。」


そう言って、微笑んだ。


ストレートな気持ちに胸をうたれて、俺と星は泣いていた。


「よろしくお願いします。」


美咲さんは、泣いた。


「指、貸して下さい。」


「はい」


椚さんが、指輪をはめた。


「おめでとうございます。」


パン、パパン


何も話していなかったのに、お店の人がサプライズしてくれた。


担当していた方が、見ていてくれたのがわかった。


「サービスです。」


ケーキが出された。


美咲さんは、さらに泣いていた。


椚さんも泣いていた。




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