電話

俺は、美咲さんと帰る事になった。


ワインで汚れてるから、晴海君を迎えに呼んだ。


5分程でやってきた。


「その服どうしたの?兄貴、何で泣いてるの?」


「聞くな」


そう言って、俺と美咲さんは車に乗った。


無言で、帰宅した。


晴海君にポツポツ話した美咲さんは、辛そうだった。


そして、今、美咲さんを思ってるくぬぎさんに連絡してる。


プルっと一回コールで、出た。


「もしもし、美咲さんですか?」


「椚、何してんの?」


「家で、スマホ見ながらTV見てます。」


電話越しにも美咲さんが好きなのが伝わる。


「椚って、まだ俺が好きなの?」


ストレートに美咲さんが聞いた。


「何ですか急に、当たり前じゃないですか、今だって美咲さんと過ごせたらなって考えてたら電話ですよ」


モジモジした話し方にかわった。


「へー。そう」


「それ、聞く為に掛けてきたんですか?」


「なんで?」


「期待したんですよ。美咲さんが、椎名さんにフラれて俺に甘えてくれたりとかかなって。まぁ、ないですか」


その言葉に、美咲さんが泣いてる。


「美咲さん、泣いてます?大丈夫ですか?」


すぐに気づくのは、美咲さんをすごく好きだからだとわかる。


「なんで?俺が、しーちゃんの事好きなの知ってるの?」


「えっ?あっ…。ずっと見てたからわかりますよ。それに、あの忘年会の告白。嘘じゃないでしょ?俺、美咲さんの所で働きだした7年前から美咲さんの事少しずつ気になってたんですよ。だから、美咲さんが椎名さん好きなのはわかってました。俺、何かが勝ち目ない事もわかってました。」


そう言って、椚さんは寂しそうに話す。


美咲さんは、泣いてるのをバレないように話す。


「年下は、弟にしか思えない。」


「わかってますよ。泣かないで下さい。今、美咲さんが辛いのがわかって俺も辛いです。」


そう言って、椚さんが泣いてる声がする。


「なんで?泣くの」


「わかりません。美咲さんが、辛いと思うと涙がでてきました。また、明日からよろしくお願いします。電話、嬉しかったですよ。」


椚さんが、電話を切ろうとしてる。


「椚、少しだけ飲まない?友人の家だから、二人ではないけれど…。それで、いいのなら」


椚さんの声が、一瞬で明るくなる。


「いいんですか、場所どこですか?すぐ用意します。」


「メールする」


「はい、じゃあ後で!ワイン持ってきます」


そう言って、ウキウキ声の電話が切れた。


「晴海、誘っちゃった。」


美咲さんが、晴海君に言った。


「いいじゃん。4つ年下なぐらい。」

晴海君は、美咲さんの肩を叩いてる。


「椚は、可愛いすぎる。華みたいなタイプだから」


「いいじゃん、別に。」


そう言って、晴海君が笑ってる。


椚さん、会うのが楽しみだな。


「何か、材料買いに連れてってくれるか?晴海」


「うん。あのさ、月君、星君。華も呼んでもいいかな?」


「いいよ」


星は、キラキラした顔で言ってる。


美咲さんを好きな人は、たくさんいるのはわかる。


だけど、椚さんにはとても会いたいと思う。


「じゃあ、ちょっと行ってくるね。」


「うん、気をつけて」


「椚が来たらよろしく」


「わかりました。」


晴海君と美咲さんが、買い物に出掛けて行った。


俺と星だけになった。


「どんな人かな?」


「会えるの楽しみだね。」


「電話の感じからしたら、美咲さんが大好きな人なんだろうね。」


「うん、すごく好きなんだって感じたよ。」


「美咲さんには、幸せになって欲しいよ」


「俺も、今日のを見たからすごく思うよ。好きな人にあんな風に思われたり言われたりするのは、耐えられないよ。」


「椚さんのお陰で、乗り越えられたらいいね」


「そうだな。」


ピンポーン


インターホンが鳴った。


「はい」


玄関を開けた。



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