第23話 黄金卿
跳び出した浅井とサザミ
接近する二人の内、初撃を放ったのはサザミであった
サザミの腰から抜き放たれた11尺の黄金の大太刀の刃が、浅井の脳天目掛けて振り下ろされる
浅井はその刃の軌道を予測で知り、僅かに身体を傾けて避けると、跳び上がって回し蹴りを放つ
しかしその足は、サザミの頭上を通過する
浅井の蹴りを読んで屈んだサザミは、右手に持った大太刀の刃を上に向ける
そして振り上げた
昇る気の刃、それを浅井は大剣をぶつけてて弾き、地面に着地するのだが
地面に着地した浅井に向けて、刃が迫る
迫った刃それは、サザミが振り上げきった大太刀を頭上で手放し、その大太刀を背面で受け取った左手から放たれた横薙ぎであった
振り払われた刃は扇状に走る
浅井はその刃を跳び上がって避けると、上段から大剣を振り下ろす
「フッ!!」
地面に向かって落ちる重々しい一撃に対し、サザミは空いた右手で腰の鞘を掴み、刃の間に滑り込ませる
次の瞬間、衝突する大剣の刃と黄金の鞘
「グゥゥ――――――!」
僅かな押し合いの後、背後に弾き飛ばされたサザミは、腕から全身に奔った衝撃で体勢を崩す
そこへ浅井の大剣から形態を変えた銃から撃ち出されたビームが、地面を抉りながら一直線に迫り、サザミに衝突した
そして轟音と共に爆炎が上がる
黄金の鎧を砕くには威力は十分、煌びやかに広がった炎がその証拠だった
しかし拡散した炎の中から出てきたのは、倒れたサザミの姿ではなく前面に広がった黄金の盾であった
そして次の瞬間、巨大な黄金の盾が黄金の機関銃に姿を変える
(形態変化する武器ですか)
浅井は珍しい武器に驚きつつも、背面のジェットパックを点火して飛び上がる
ザザドはその背を追うように機関銃を持ち上げると、弾丸を撃ち出した
弾の数は数千発、その全てが一直線に浅井に迫る
まるで黄金の川のように進んだ弾丸を、浅井は高速で飛行して避け続けていく
その後、弾丸を回避するために上昇していた浅井は、突如サザミ目指して急降下を始めた
そして腰から3つの盾形の砲を切り離し、サザミへレーザービームを撃ち放った
「!!」
サザミは自身に向かって進むレーザービームを目視すると、構えた黄金の機関銃を再度、大太刀に変化させてから走り出す
そして降り注いだレーザービームを回避しきったサザミの下に、急降下して来た浅井が大剣を振りかぶりながら現れる
「オォォォォォォォォォォォォ!!」
「ッ!!」
大剣と大太刀が衝突する
その衝撃で二人の立つ黄金の船の表面が削り飛ぶ
「オォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
「キェェェェェェェェェェェェェェェ!!」
そして続いた数秒間の押し合いの末、互いの剣が弾かれるが、そこから斬り合いが始まる
斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃
僅か1秒で1万以上の斬撃が走るが、お互いに傷は無い
「中々、良い腕をお持ちだ、しかし」
「!!」
だが斬り合いの中で突如、大剣とぶつかったサザミの大太刀が変形する
大太刀の刀身から櫛のように無数の刃が、浅井目掛けて飛び出した
その刃たちを浅井は、背後に跳んで回避するが、即座に大太刀から変形したサザミの小銃の銃口が向けられ
続いて放たれる弾丸
その全てを浅井は、前面に張ったシールドで防いでいく
雨粒が傘に当たるように無数の弾丸がシールドを攻め立てる中、浅井は大剣を銃に変形させると、小銃を撃ち続けるサザミへ銃口を合わせ、引き金を引いた
発射されるレーザービーム、そのレーザービームは目前に広がったシールドを粉砕し、サザミへ迫った
まさかシールドごと撃って来ると思っていなかったサザミは、その攻撃に対して判断が遅れる
「ッ―――!」
だがサザミも数万の時を生きる歴戦の戦士、咄嗟に身体を傾かせてレーザービームを接触寸前で回避する
しかし体勢を崩したサザミの目前に、滑り込んで来る浅井
彼のその手には大剣が握られており、サザミへと一直線に振り下ろそうとした
だがその浅井の一撃より前に、放たれた一撃があった
それは今まで一度も変形していなかった黄金の鞘を、変形させた刀を使った左手による逆手斬りだった
片膝をつく低い姿勢から放たれた逆手切りを、浅井は僅かに跳んで避けた
しかしその行動こそがサザミの狙いであった
「ニィ――――――!」
黄金の鎧の内部で口角を引き上げるサザミ
サザミは空中にある浅井の胴体目掛け、右手に握った大太刀の突きを放った
サザミ渾身の一撃、力任せの大太刀、その刃先が浅井の心臓へ一直線に進み
そして貫く――――――事は無かった
「!?」
サザミの右腕が止まる
そしてその右腕で力任せに押し出した大太刀を止めたのは、刃に串刺しにされた盾形の自立飛行砲台3機だった
串刺しにされても動きを止めない盾形の自立飛行砲台は、砲口から噴射した炎の火力で大太刀の動きを阻害していた
そして必殺の一撃を止められたサザミへ向けられた刃が走る
「グゥッッッ!!」
飛び散る黄金、噴き上がる鮮血
刃を受けたサザミの黄金の鎧には、肩から腹にかけて一本の線が描かれていた
だがその一撃で浅井の行動は終わらない
中腹で止められた大剣を銃へと変化させ、そのひんやりとした銃口を腹に突っ込んだまま口を開く
「降参しますか?」
いつも通りの声音で放たれたその言葉に、サザミは笑いながら返答する
「
「では、満足するまで死合いましょう」
その笑みに応えるように、浅井もまた笑みを浮かべる
そしてその微笑みと共に、銃口からレーザービームが発射される
眩い光と共に撃ち出されたレーザービームは、サザミの内側で炸裂し、血肉と臓器の詰まった体内を焼いた
更に体内で行き場を失ったレーザービームが爆発を起こし、サザミの身体を後方へ吹き飛ばす
黒煙を上げながら浅井の十数m先に転がったサザミの身体は、大穴を中心に開けるだけに留まらず指先に至るまで焼け焦げていた
ピクリとも動かず黒煙を上げるサザミは、もはやただの無残な焼死体だった
だがそんな姿になっても、審判係の魚人から決着の言葉は飛び出さない
その理由は、至極簡単な事だった
――――――未だ決着は付いていない
そしてその事を証明するように、倒れ伏していた金の鎧が動き出す
下手なマリオネットのように歪な動きで立ちあがったサザミは、大きく腕を広げると、黄金船の内部に取り込まれていく
その後、巨大黄金船を輝きが覆う
「これは………」
驚く浅井を他所に、まるで地震のように揺れ始めた巨大黄金船は、その後すぐに大きな変化を見せた
黄金船は傾き始め船首を上部へ向ける
続いて内部から格納されていた無数のパーツが姿を見せ、更に黄金船が変形を開始する
「はは、ズイズさんから新兵装を試せと言われていましたが、流石にアレを彼一人に使うのは、過剰だと思っていたんです―――――が、問題ないどころか最適でしたね」
浅井は組み上がっていく黄金船の姿を見ながら、そう言葉を溢した
そして何度か頷きを見せた後、しろがねに指示飛ばした
「ではしろがねさん、ラ・セルガ・メディサ起動!!」
「御意」
熱量が込められた言葉と共に、浅井から無数の青白い線が広がっていく
そして数秒後、青白い線によって浅井の周囲に描かれたのは、巨大な設計図だった
設計図は完成と共に光を放ち、そして設計図通りに部品を構築し始めた
人型へと姿を変えていく黄金船と、構築した部品を組み合わせて形を創造するラ・セルガ・メディサ
その両者の変形と構築が終了する
結果、宇宙に二機の巨神が現れる
片方は無数の兵器と装飾で着飾った黄金のロボットで、内部には黄金鎧を身に着けた男が乗り込み
もう片方は洗練された白銀の身体を持つロボットで、内部には白銀鎧を身に着けた男が立っていた
そして二つのコックピット内で男が二人、目前の敵を睨む
「さあ、行くぞアザイ殿」
「ええ、楽しみましょうサザミさん」
笑みを浮かべながら、言葉を交換し終えた二人は、操縦桿を握る
そして一呼吸の間をおいてから、同時に動き出した
どちらもその巨体にあるまじき速度で接近する
サザミの黄金の機体の持つ大太刀と、浅井の白銀の機体の腕に取り付けられた武装から放出されたレーザで出来たブレードが衝突する
瞬間、青い火花が飛び散り、周囲を眩く照らす
互いに火花を浴びながら、鍔競り合う相手を強く睨み付ける
そして数秒間の鍔競り合いの末、均衡を破ったのは白銀の機体であった
白銀の機体は空いた左手から放出されたブレードを、黄金の機体の胴体へと突き出す
一直線に迫ったそのブレードを、黄金の機体は身体を傾けて避けると同時に、大太刀に力を込めて白銀の機体を弾き飛ばす
そして背面と脚部に収納されたミサイルを、距離が開いた白銀の機体へと射出した
簡単に撃ち落とされないように、不規則な軌道を描きながら飛ぶミサイル
全方位から迫る600発のミサイルに対して、白銀の機体がとった手段は、機体と兵装である自立飛行砲台による全方位レーザービーム射出だった
放出された無数の青い線が、次々とミサイルを凄まじい勢いで撃ち落としてく
そしてミサイル発射から1秒後、全てのミサイルは爆散して消える
だがその時に巻き起こった黒煙を突き抜けて、黄金の機体が白銀の機体に接近する
その手には黄金の大太刀が握られており、殺意の籠ったその鋭い刃を煌めかせながら大太刀が振るわれる
「チィ――――――!」
しかし斜めに走った大太刀の刃は、白銀の機体に接触する直前で止められていた
力強く振るわれた刃を止めたのは、生身での戦闘と同じく自立飛行砲台であった
「またもや………!」
二度も似たような方法で、攻撃を止められたサザミの顔は屈辱で歪んでいた
だがサザミも戦士、即座に感情を殺して黄金の機体の操作し、追撃を行う
黄金の機体、その胸部の装甲が開き、砲口が露出する
そして異音と共に、砲口から光が溢れる
異常とも言える眩い光、その輝きは瞬きの間に強まり、そして1秒後
白銀の機体に向けて撃ち出された
「ッ―――――――――――!!」
焦りを見せる浅井
彼は即座に操縦桿を動かし、白銀の機体の脚部に着いたブースターを吹かして上部へ飛び上がった
急激な機体の加速と上昇で、機体は僅かに悲鳴を上げる
しかしその急上昇のお陰で、黄金の機体の胸部から撃ち出されたビームは、白銀の機体の脚部の一部分のみを焼くに留まった
だが飛び上がった白銀の機体の危機は、未だ継続中であった
浅井の立つコクピット内に鳴り響く警告音
その不快な音が鳴る原因となったは、白銀の機体の背後から迫る無数のミサイルと、黄金の機体の背面から左腕に装着された機関銃から撃ち出した弾丸であった
その無数のミサイルと弾丸は、異常な軌道で飛行する白銀の機体へと向かって行く
浅井は背後から迫る脅威を、モニターで確認しながら指示を飛ばす
「しろがねさん、ミサイルと弾丸の対処は先程通りお任せします。それと掌部の砲をいつでも使用出来るように、継続してエネルギーチャージしてください」
「了解しました」
「では、そろそろ終わらせましょう」
その言葉と共に浅井の操縦する白銀の機体は、反撃を開始する
白銀の機体は背後から迫ったミサイルをレーザービームで撃ち落としながら、黄金の機体へと突貫した
その白銀の機体の接近を妨害せんと、後退を開始した黄金の機体から弾丸ばら撒かれる
「シールド展開」
だが強力な弾丸たちは、張られたシールドに阻害され白銀の機体に当たることなく弾かれた
そして無数のブースターで加速した白銀の機体は、後退する黄金の機体に追いつき、続いて振るわれた両者の刃が激突する
飛び散る青い火花、先程と同じ様に鍔迫り合いが始まった
だが数秒後、先程と違って今回はブースターで加速していた白銀の機体が、徐々に黄金の機体を押し始める
そして黄金の機体は、白銀の機体の圧力に耐えられず弾き飛ばされ、更に吹き飛んだ先に自立飛行砲台からのレーザービームが降り注ぐ
「――――――ッ!?」
想定外の攻撃に驚き目を見開くサザミ
3本のレーザービームは、彼の乗る黄金の機体に接触し、装甲の表面と片足の関節を焼き飛ばした
そして更に追撃で迫った白銀の機体が、黒煙を上げて仰け反った黄金の機体の右腕を斬り飛ばす
僅か3手で甚大な損害を与えられた黄金の機体
だが内部に鎮座するサザミの瞳には未だ火が灯っていた
「否、否。麻呂は、まだ終わらぬ!!」
叫ぶサザミ
黄金の機体には大太刀が無くなろうと、未だ必殺の武器が残っていた
だからその一撃に賭けるため、黄金の機体は左腕に装着された機関銃を切り離して、白銀の機体のいる前方へ放った
続いて黄金の機体は残り少ないミサイルを放つ
その狙いは、白銀の機体ではなく切り離した機関銃であった
ミサイルを受けて爆発する機関銃は、周囲を包むほどの黒煙を吹き上げた
その瞬間、黄金の機体の傷だらけの胸部装甲が開き、黄金の砲身が姿を現す
「全てはこの一撃のために!!」
狙いは一点、黒煙の先に居る白銀の機体
「互いに視界無し、されど貴様の位置は変わらず。そして此方の発射準備は一瞬」
黒煙発生から発射準備完了までの時間は、2秒に達さず
そして白銀の機体といえど僅か1秒半ほどで移動できる距離は限られており、先程と違って目視していない状況で回避する事は不可能と言って良かった
だからこそ今、瞬きの間に発射可能になった胸部砲が、光り輝き
砲口からビームが放たれる――――――――――――――はずだった
「これは………」
黄金の光が放たれる直前にサザミの視界に映ったのは、砲口に吸い込まれるように向かって行く青い光だった
その青い光を目撃した瞬間に、サザミは自身の敗北を悟る
「麻呂の行動は、読まれていた――――――――――――か」
青い光はビームを撃つためにエネルギーを溜めていた砲口内部で炸裂し、黄金の機体を内部から吹き飛ばしたのだった
――――――――――――――――――――――――――――
視界を眩ます閃光と共に発生した爆発
その美しくも残虐な光景を、視界に収めながら浅井は自身の行動を振り返る
まず浅井にとって一番恐ろしい攻撃は、黄金の機体の胸部にある砲から放たれるビームであり、脅威となるのはその威力と2秒とかからない発射速度だった
だからこそ浅井はそのビームに対策を講じる
その対策とは機体の掌部に付いた砲を、発射可能状態で維持する事だった
何故それが対策になるのか、その理由は胸部砲の仕組みにあった
胸部砲は機体内部に仕舞われおり、撃つためには頑丈な外装を開ける必要があり、そのため発射までの僅かではあるが、脆い内部が姿を見せることになる
浅井は早々にその弱点に気が付き、かつ弱点を突くために、胸部砲より早く撃つことが出来る掌部の砲を使用することにしたのだった
その後、戦闘を進めた浅井は、狙い通り掌の砲による射撃で胸部砲を打ち抜いてサザミを撃退する
「まあ、あの機関銃を爆破して撒いた煙幕は、予想外でしたが」
作戦通りに進めていた浅井、その唯一の想定外
それが煙幕越しの砲撃だった
しかし浅井はその煙幕越しの砲撃に対して、エネルギーが多く集まる位置に射撃を行うという方法で突破する
「さて、回収に行きましょうか」
行動を振り返り終えた浅井は、白銀の機体に乗ったまま進み、しろがねの動力源の反応がする黄金の機体の残骸が浮かぶ地点に辿り着く
その地点の中で浅井は、しろがねの動力源の反応を放つ黒焦げになった黄金の鎧を見つける
鎧は両腕と腰から下が焼け落ちていた
だが鎧の中に入っているサザミは、まだ僅かに呼吸をしていた
「この世界の方は、頑丈ですね本当に………………」
浅井はまだサザミが生きている事を確認すると、機体の手で優しく包む
その後、サザミを連れた浅井は飛行を続け、宇宙船へと到着した
宇宙船の鋼板には、サザミの船員が集まっており、その姿を確認した浅井はサザミを彼らの前に降ろした
そして鋼板に寝かされたサザミの周囲に集まる船員たち
浅井は、その集まった船員の一人である巨漢の魚人に声をかける
「サザミさんは、もう戦闘が行える状態ではない、つまり戦闘不能状態だと思われますが、いかがでしょうか?」
浅井の言葉に巨漢の魚人は反応を返す
「うむ、船長は戦闘不能であると確認した。おい、お前らよく聞け!!」
巨漢の魚人は、周囲の船員たちに聞こえるように声を張った
「この勝負、サザミ・ジェルフィーゴ・メルフィスの戦闘不能により、アザイ・ムネタカ殿の勝利とする!!」
その宣言に、沸き立つ船員たち
浅井はその歓声を聞きながら、背後に立っていたズイズに言葉を投げかけた
「ズイズさん、彼に回復魔法をかけて頂いても?」
一騎打ちの勝負が終わり、もう敵対する理由の無い浅井は、サザミの生存の為にズイズへ回復を依頼した
「仕方ないわね」
「結構だ両人」
しかしその提案を巨漢の魚人が蹴る
「あのままだと死にますが………………」
「まぁ、見ててください」
巨漢の魚人の言葉通り、浅井は静観していた
その時、船員の一人が大量の輸血パックを手にしてやってくる
そして溢れんばかりの輸血パックを、仰向けで倒れるサザミの上で切り裂いた
すると飛び散った血液が、重力が無いため空中に漂う
(一体、何が………、!!)
サザミとばら撒かれた血液、その行く末を目を細めて見つめていた浅井
その目前で、意思なく漂っていた血液が突然動き出した
全ての血液は一直線に、仰向け倒れ込むサザミの肉体へ吸収されていく
そして血液がサザミの肉体に取り込まれてから数秒後、異音と共にサザミの欠損部位が完全に再生を果たした
「船長」
巨漢の魚人は、サザミの再生が終わったのを確認すると、声をかける
その低い声に返答するように、サザミは上半身を起こした
「ご苦労、ミレオン」
「いえ」
そしてサザミは、まるで先程までのダメージなど無かったかのように、ゆっくりと立ち上がった
続いてサザミは、浅井に視線を合わせながら口を開く
「さて、アザイ殿。先の一戦見事であった」
「ありがとうございます」
「そして今回は麻呂の負けである。だから約束は守ろう、ほれ」
サザミはあっさり自身の敗北を認めると、懐からしろがねの動力源を取り出し、浅井へと放り投げた
山なりに飛来した動力源を掴み、取り込む浅井
サザミは浅井が動力を受け取ったのを確認すると、即座に背を向けて歩き出した
そして背後に居る浅井に言葉をかける
「では、またどこかでお会いしようぞアザイ殿」
シンプルながら敬意の籠ったその言葉に対して、浅井も背を向けて歩き出しながら言葉を返す
「ええ、またどこかで」
この後、デオス達と合流した浅井は宇宙船に戻る
そして当初の目的である、かつてゼノカ・マルケレス王国首都マゼレカがあったメーディルス星へと宇宙船を進めた
――――――――――――――――――――――――――――
浅井とサザミの一騎打ちから2日後
4人の乗る宇宙船は、メーディルス星の中間圏に浮かんでいた
そしてその宇宙戦内部で、最後の会議が開かれていた
「やはり、目的地点から動力源の反応がします」
デオスとズイズの仇である怪物が封印された地点から、浅井としろがねの目的である動力源の反応が発生している、それが何を意味するのか
「そうか、だったらこれが俺たちの最後の戦いになるな」
「そのようですね」
その答えは一つ、怪物の体内に動力源が取り込まれているという事だった
そして二組の目的が同一なら、これが最後の戦いになる事もまた必然であった
「皆、準備は出来てるな」
「ええ」
「いつでも、構いません」
「出来ています」
「儂も出来とるぞ!!」
デオスの確認に返答する、ズイズと浅井としろがねとアルバーニ
その言葉を聞き届けたデオスは、顔に浮かべていた笑みを仕舞い込みながら、宇宙船のドアを開いた
「では、行くぞ」
そしてデオスを先頭にして、浅井たちは宇宙船から飛び降りて、ゼノカ・マルケレス王国の首都マゼレカ跡地へと一直線に向かって行くのだった
3章 黄金船団編 完
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