第18話 コルネスの意地/過去との対峙

 次々に戦場に突入して行くコルネス軍

 空からは戦闘機や飛竜部隊が、地上には戦車や騎兵部隊、更には歩兵部隊が進行していた

 そして地上で骨の軍勢を撃破していくコルネス軍歩兵部隊の先頭には、巨大な斧を振り回すコルネス軍四将が一人、ドドザ・オーガ・シーウルルド・モーテサバットの姿があり、更にその背後にはドドザとよく似た鎧を着込んだ三人の兵士が続いていた

 

 「我らコルネスの意地を見せてやれ!! 全軍突撃!!」


 ザザドは戦場の中心で戦いながら、背後に控えるコルネス兵たちにそう激を飛ばす

 

 「テメぇ、ドドザ、抜け駆けすんじゃね! くそっ! あの野郎、先に行きやがったな! おい、テメら、俺達も行くぞ!!」


 そして先陣を切ったドドザに負けじと大声を上げ戦場に駆けていったのが、怒りっぽい性格で、リーゼントヘアーが特徴的な耳長人族の四将、マシャーテ・ブルブランデであり

 

 「ザザドちゃんだけに手柄を渡しちゃだめよ、あなた達!!」

 

 続いてその背後から跳び出していったのが、美形で長い金髪と花柄のマントを靡かせる人族のオネエ四将、メロー・カラバリアであり

 

 「さあ、我らも残虐に全ての敵を殺してやろうぞ!」

 

 最後に楽しそうな声音で歩き出したのが、趣味と特技は拷問、腕に着いた巨大な鎌と4mを超える体躯が特徴の蟷螂人族の四将、ディオラ・パルデロッサであった

 ドドザ以外の四将は、コルネス国とデオス一派との同盟の報を聞いた後、即座に行動可能な全軍に指示を送り、コルネス全軍と言っても良い総数の軍勢を率いてコルネス国に攻撃を仕掛けてきた敵首魁の待つ戦場へ向けて進軍した

 そして戦場に到着した彼らコルネス軍は、ドドザ率いる部隊と共に骨の天幕に空いた大穴から戦場に参戦したのだった


 「オラよ!!」


 「華麗なアタシの技で、死になさい!!」


 四将率いるコルネス全軍の介入で、アルバーニの骸の軍勢の一角が崩れ始める

 地上でコルネス兵たちに倒され次々に崩壊していく骸兵、その親玉であるアルバーニは、その光景を見ながら笑みを浮かべる


 「カカカ、カカカカカカ!! コルネスの小童どもも、中々に面白い事をしてくれるのぉ」


 あくまでもメインであるデオスたちの付け合わせ、道端の雑草程度にしか思っていなかったコルネス国の思わぬ活躍にアルバーニは称賛を送った

 だが続けて「これはどうじゃ?」という言葉と共に、先程召喚した破壊骸巨兵を差し向ける

 指示に従い動き出した破壊骸巨兵

 狙いは地上を掛けるコルネス兵たちであった


 「ゴォォォォォォ!!」


 叫びを上げながら破壊骸巨兵は、無数にある腕を振るおうとしたその時、巨大な爆発音が無数に鳴り響き骨の天幕の側面が吹き飛ぶ

 そして開いた大穴から入った数えきれない程の数のミサイルが、破壊骸巨兵に次々と衝突した


 上がる爆炎と黒煙、飛び散る骨の残骸

 凄まじい衝撃と威力に、肉体の三割ほどを吹き飛ばされ膝を付く破壊骸巨兵

 

 「一体何じゃ!?」


 単純な力では自身を凌ぐ破壊骸巨兵のダウンにアルバーニは驚き声を上げ、次に破壊骸巨兵を今なお襲うミサイルが飛んできた方角である、骨の天幕に空いた大穴へ視線を送る

 そこでアルバーニが見たのは、コルネス国とは違う旗を掲げた複数の軍隊の姿だった




 骨の天幕から約1㎞地点の丘にて

 合計約600万の兵士が隊列を組み、指示を今か今かと待ち望んでいた

 殺意と熱気立ち昇る彼ら軍隊の正体、それこのフシューラ星に存在する国家の連合軍であった

 連合軍内の国家の中には敵対する国家同士も存在していたが、それでも彼らはコルネス国からの要請、そしてコルネス滅亡後に自国にも襲い掛かって来るであろう最悪の怪物の脅威に対して、協力して対処する決定をした

 そして連合軍が戦場到着して10分後、遂に連合軍の司令官かの采配が振られる


 「全軍、突撃ぃ!!」


 「「「「「「オォォォォォォォォォォォォ!!」」」」」」


 雄叫びが大地を揺らし、フシューラ連合全軍が戦場へ駆けて行った

 

  

 

 地響き、地響き、地響き

 大量のミサイルによって崩れ落ちる骨の天幕

 その隙間から侵入していく地上部隊、航空部隊たち

 そして消滅していく骸たちと、動きを阻害される破壊骸巨兵

 コルネス国含め合計6万を超える軍隊の参入で完全に均衡は崩れ、天秤は大きく傾いた

 そして今、骨の兵隊たちを相手にする連合軍を背後に、戦場の中心で3人が対峙する


 「ああ、楽しい、楽しすぎるぞぉ! こんなにも楽しいことになるとは、城壁都市を落としたあの日の儂は思っても居なかったわ。カカ、カカカ、カカカカカカ!!

 それこれもお前たちのおかげだ、炎と鎧の若人たちよ。ああ、この気持ちをどう言葉にすればお前たちに伝わるのか。こんな事ならば詩の勉強でもしておくべきだったな」


 言葉が尽きぬアルバーニ

 対してデオスと浅井は冷静に相手を睨みつける

 

「のぅ、若人たちよ、儂はこの日を忘れる事の無い思い出にしたいのだ。だからどうか全てを振り絞って儂を滅ぼしに来てくれ!」


 「ああ、安心しろ。アルバーニ・コープス。お前は俺達が滅ぼす」


 「カ、カカカ、カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!!」


 デオスの言葉に嬉しさから笑い続けるアルバーニ

 その声を前に二人は構えを取る


 「行くぞムネタカ!!」


 「ええ!!」


 そして1秒後、二人はアルバーニに向けて飛び出した

  

 「焔ノ大蛇ほむらのおろち!!」


 「形成しろ、精霊剣エレクバール!!」


 デオスと浅井対アルバーニ戦、初手はデオス達二人の技であった

 白い炎の八首蛇と琥珀色の斬撃が空を走り、アルバーニへと向かう

 瞬きの間に二つの輝きはアルバーニの目前に到達し、衝突する――――――直前

 アルバーニの背から生える巨大な骨の翼が、炎と斬撃の間に滑り込む

 そして次の瞬間に骨の翼と炎が衝突して爆発と黒煙が吹き上がり、琥珀色の斬撃が黒煙共々骨の翼を結晶化する

 空に出来上がった巨大な琥珀の結晶、周囲を映すその結晶に大きな罅が走り

 砕ける結晶、舞う結晶、続いて無傷のアルバーニが飛び出し、巨大な骨の剣をデオスに突き出した 


 「カカカ、カカカカ、カカカカカ!!」


 それを間に入り込んだ浅井が受け止め、弾き飛ばす

 続けて浅井の背後から飛び上がったデオスの手から、白い炎が吹き上がる

 伸びる熱線、それをアルバーニは炎の翼で掻き消し、骨の尻尾をデオスに伸ばした

 だがその骨の尻尾は即座に浅井に斬り飛ばされる

 更に浅井の援護を得たデオスは、背中から炎を噴き上げて勢いをつけると、株のアルバーニに向けて蹴りを放った


 「火葬絶脚かそうぜっきゃく!!」


 破裂音と共に飛び出た右足

 アルバーニは残った片翼で受け止めるも、勢いを殺しきれず地面に叩きつけられる


 「カハッ!」


 大地に突き刺さり、苦悶の声を上げたアルバーニの下へ更に琥珀色の斬撃が迫る

 その斬撃をアルバーニは即座に地面から骨の壁を生やして防ぐ

 だがその背後から、いつの間にか降り立っていたデオスの拳が撃ち出された

 数は16個、灼熱の拳が弾丸のように迫る

 それを容易く骨の大剣で切り裂きながら、アルバーニはデオスたちに声を飛ばした


 「もっとだ、もっと儂を愉しませろ!!」


 地面に広がる魔法陣

 召喚される無数の骸たち

 数万体のその骸を二人は一蹴し、続けて二人の剣と拳がアルバーニへ向かう

 強烈な二撃、それを難なく受け止めたアルバーニは、身体から骨の腕を生やして二人を弾き飛ばした

 だが弾き飛ばされた瞬間に浅井は精霊剣から斬撃を放つ


 「カッ!?」


 不意を打たれるアルバーニ

 彼は琥珀色の斬撃を避けきれず、先程生やした骨の腕に斬撃を浴びてしまう

 そして始まる結晶化

 侵食するように骨の腕を結晶に変えていく

 

 「ぬうっ!」


 アルバーニはその結晶化が肉体に到達する前に生やした腕を切断したが、体勢を大きく崩す

 そこへデオスの回し蹴りが放たれた

 だがその足がアルバーニの身体に接触する直前に、アルバーニの身体から生えた顎がデオスに噛みつき、そのままデオスを地面へ叩きつけた


 「チィッ!! ムネタカ!!」


 「分かってます!!」


 デオスに変わって迫っていた浅井の大剣が振り下ろされる

 脳天からの一閃

 狙いは分かりやすい、だがだからこそ力が乗ったその刃がアルバーニを真っ二つに切断した

 倒れ込む二つのアルバーニの身体

 そこへ骨の顎を一瞬の内に塵に変えたデオスから、巨大な炎の波が放たれる

 飛び退く浅井、その僅か横を通過した炎の波はアルバーニを飲み込むと巨大な爆発を引き起こした


 空気を揺らす衝撃と吹き荒れる熱風、更に周囲に広がった黒煙

 その黒煙の中、影が揺れる

 そして這い出てきたアルバーニは、未だ健在なだけではなく、まるで合成獣のように複数の生物の一部を模した骨を体中に纏っていた

 

 「しぶといですね、本当に………!」


 此処まででも相当なダメージを喰らっているのにも関わらず、未だ凶悪な姿を保つアルバーニに対して浅井は愚痴を飛ばす

 そしてデオスも迫る期限に焦りを感じながら眼前を睨む


 「後3割ほどか………、――――――!?」

 

 デオスが僅かに言葉を溢した瞬間、突如彼の足元から無数の骨の棘が飛び出してきた

 それはアルバーニの尾から生えた数本の尻尾が、地面を進み飛び出したものだった

 鞭のようにしなった骨の尻尾は、地面を切断しながら暴れ回る

 それをデオスは跳び上がってスレスレで回避するも、そこへ巨大な骨の腕が振り下ろされた

 だがデオスは炎を噴き上げて体勢を変えて防御の姿勢を取る

 しかし鋭い爪の勢いは凄まじく、デオスは防御ごと吹き飛ばされる

 

 「――――――グゥッッ!!」

  

 地面に衝突し、吐血するデオス


 「カカカ! さあ、次は鎧の若人、お前だ!!」


 続いてアルバーニは狙いを浅井に変える

 デオスの支援のため飛んできた浅井へ尻尾の先端を向けると、勢い良く撃ち出す

 その尻尾を浅井は二刀で細切れにすると、続けて精霊剣を振るった


 「シィッ!!」


 拡散する琥珀色の斬撃

 ほぼ隙間なく撃ち出されたそれは、先程のよりも巨体になったアルバーニには避ける事不可能と言い切っても良い数であった

 だがそれをアルバーニは身体の形を変えながら華麗に避けきると、空中の浅井に向けて剛腕を振るう


 「ッ!!」


 その腕を浅井を予測を使って回避し、そのまま魔力暴走の爆発を起こしてその場から離脱する

 そして浅井は、先程吹き飛ばされたデオスと合流を果たす

 

 「デオスさん、大丈夫ですか?」


 「ああ、問題ない」


 「でしたら、一つ作戦があるのですか乗って頂けませんか?」


 「どんなだ?」


 「それはですね………………」


 二人は目前のアルバーニを睨みながら、数秒間の作戦会を終えた


 「――――――どうしょうか?」


 「良い作戦だ、それで行こう」


 そして作戦を決めた二人は動き出す

 

 「オオォォォォォォ!! 灼熱死海しゃくねつしかい!!」


 雄叫びと共に広がった灼熱の海

 それは大地を塵に変えながらアルバーニへ迫る

 周囲数㎞を埋め尽くす炎の壁を前に笑み溢したアルバーニは、肉体から無数の骨で出来た巨大な合成獣を放ち受け止める

 そして拡散していく炎の波、その背後から飛び出す浅井

 その手には光り輝く琥珀色の剣が握られており、今振りかぶろうとしていた


 だがその剣が振られる前に、アルバーニの肉体から無数の骨の鳥が飛び立った

 壁のように広がった鳥の大群、それはアルバーニによる精霊剣エレクバール対策の一手であった

 精霊剣エレクバールの斬撃は、触れたものを結晶化する強力無比な能力だが、本命に当たる前に別の物にあったてしまうとそちらを結晶化してしまい、本命に届かないことが弱点であった


 (お前たちがこの現状を打ち破る一手はその剣であろう。ならば防いだ後、まずは鎧の若人、お前から殺してやろうではないか)

 

 「カカカ! それは悪手であったぞ鎧の若人よ!!」


 アルバーニは嗤う

 敵の作戦を喰い破ったからだ


 「カカカカカカカカカ――――――カッ!?」 


 だが浅井はアルバーニの予想通り動く事は無かった


 「ハァァァァァァァァ!」


 浅井は剣を振り抜くと思いきや、そのまま精霊剣エレクバールから手を離して投擲した

 そして回転しながらアルバーニの背後に飛んで行った精霊剣エレクバール

 その先に居たのは、デオス・フォッサマグマであった

 最初の灼熱死流を利用し、背後に周り込んでいたデオスは作戦通りに浅井の投げた精霊剣を受け取り、今振りかぶった


 「儂を舐めるなよ!!」


 しかし先に行動を起こしていたのはアルバーニであった

 アルバーニは浅井が精霊剣を投擲した先に向けて、咄嗟に攻撃を行っており、身体から跳び出した骨の爪が精霊剣ごとデオスを貫いていた

 噴き上がる血、そして砕け散る精霊剣の破片が周囲へ飛び散る

 

 「カカ、カカカ!! 良き作戦であった、だが儂の方が一手上であったな!!」


 作戦どころかデオス達にとっての必殺である精霊剣すらも砕いたアルバーニは、自身の勝利を確信した

 だがそれは必殺の精霊剣と最高戦力であるデオスすらも囮とした浅井たちの思い壺であり、アルバーニの確信は数秒後に脆く崩れ落ちる

 

 「!?」


 「オォォォォォォ!!」


 魔力の過剰放出を利用した爆発を利用し得た加速によって浅井は、嗤うアルバーニの目前に辿り着いていた

 そして浅井はアルバーニが反撃するよりも先に、己の腕をアルバーニの内部に突き刺す


 「なんじゃと!?」


 驚き声を上げるアルバーニ

 その肉体の奥底へと浅井の腕は進み、そして浅井は目的の物を掴み取った 

 ――――――瞬間、青い光が迸り、周囲一帯を吹き飛ばした


 「ガァ、ガカ……………、一体何が起きた……………」


 そして爆発により体の半分を消し炭にされたアルバーニが視線の先で見たのは、巨大な銀の銃を手にし、更に鎧を変化させた浅井の姿だった

 

 

    ――――――――――――――――――――――――――――


 浅井とデオスの作戦会議まで時間は僅かに戻る


 「アルバーニからしろがねの動力源を抜き取るために、デオスさんと精霊剣を囮にしても良いでしょうか?」


 「おう、構わんぞ。それで囮の詳細は?」


 「まず精霊剣の存在は私にとって切り札的存在であり、それは奴も認識しているでしょう。なのでそれを逆に利用します。

 最初にデオスさんが炎で奴の視界を塞ぎます。次に正面から突撃した私が奴の注意と攻撃を引きつけます。その後、背後に回ったデオスさんに精霊剣を投げ渡しますので、精霊剣と共に囮になってください。そして最後に私たちの切り札である精霊剣を持った最強戦力に気を取られた奴に対し、私が突っ込んで動力源を引っこ抜くという作戦です。どうでしょうか?」


 「良い作戦だ、それで行こう」


 作戦通りに動いた彼らは、最高の成果を獲得するに至った

 そして現在、3つ目の動力源を取り込んだしろがねの姿は先程とは大きく変わっていた

 外装は更に分厚く、背には3つの盾形の自立飛行砲台が浮かび、その手には大剣が変形した巨大な銃が握られていた

 浅井は即座に強化されたしろがねの能力を確認すると、指示を飛ばす

 

 「しろがね!! 兵装展開!!」


 その指示により、複数の砲台が空中に組み立てられていく

 そして完成した4つ砲台と共に、浅井の背と手に持っている銃の砲がアルバーニに向けられ、圧縮された魔力を加工したレーザービームが放たれた

 輝く青、合計8つの熱戦が大地を抉りながら走る

 その熱線に対し、身体を修復し終えたアルバーニは飛び上がって回避しようとする

 だが熱線は飛び上がったアルバーニに吸い付くように追尾していき、そのままその背に追いつくとアルバーニの身体に大穴を開けていった


 「――――ッ!? グゥ………!」


 翼を含めて身体に八つの穴を開けられたアルバーニは、地上に向けて墜落していく

 更にそこへ左腕を失いながらも高速で飛来したデオスの追撃が加えられ、アルバーニは地面に叩きつけられた

 だが肉体を大半が消し炭にされながらも、笑いながらアルバーニは反撃に転ずる


 「……グゥ…………グカ、カカカカ! 面白いのぉ!! 【totyos[mish]mi】 【totohyos[misn]mi=hatmi】 【hatryosrfutottokfu,hatryosrkokofu1nanayossmisy-hatyosi】」      

 

 呪文と共に地面から大量の骨が跳び出す

 地獄の針山のような規模の骨の棘は、浅井とデオスの壁となってアルバーニまでの道を塞いだ

 だがその道を砕きながら二人は一直線に進み、遂にアルバーニの目前に辿り着く

 

 「待っていたぞ!! 【totyos[mish]mi】 【mishatyyatot=misk】 【hatryosrfutottokfu,ton[misttoh]kokofu14nanayossmisy-hatyosi】」


 そこに待ち構えていたアルバーニが、デオス達へ向けて地面から巨大な骨の鯨を出現させる  

 山のような骨の鯨は、飛び出したデオス達をその質量で吹き飛ばそうとする

 だがそれを二人は真正面から一瞬で砕き潰し、アルバーニの正面に着地する


 「オラァァァァァァァァ!!」


 「吹き飛べぇ!!」


 そして二人でアルバーニのがら空きの胴体を殴りつけて、上空にかちあげた


 「ゴォハッ!!」


 飛び散る破片、打ち上げられたアルバーニ

 隙だらけの獲物に二人は狙いを付ける

 デオスは残った左腕で浅井は全ての砲口を上空へ向け、そして二人の最高火力を撃ち放った


 「白炎火葬・天道撃砲はくえんかそう・てんどうげきほう!!」


 「これで終わりです。全砲発射!!」


 白と青の輝きが空へ伸びていく

 唸りを上げた二つの熱戦はアルバーニへ向かい、その熱線を防御をしようと再生させた骨の翼を容易に蒸発させる


 「カカ、見つけたぞ、儂の輝き――――――――――――――――――――――」

 

 そして美しい輝きと共に、何かに気が付き目を見開いたアルバーニを飲み込んで消えていったのだった

 

 

   ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 アルバーニの消滅と共に、地平線から日が昇る

 二人は眩い朝日を浴びながら倒れるように座り込む

 そしてお互いがお互いを称え合うように拳を突き合わせた

 

 「お疲れ様です、デオスさん、しろがねさん」


 「はい、お疲れ様でした」


 「ああ、そっちもな」


 白い息を吐きながら会話を交わした後、二人は小高い丘の上から戦場を覗く

 二人の視線の先では眩いオレンジ色の光に照らされ、残っていた骸たちがゆっくりと塵になって消えていく姿が写り込んだ

 空に昇っていく塵は光で反射しキラキラと輝いており、その幻想的な光景に見える光景を浅井とデオスは見届けた

 

 その後、後処理を終えたドドザが連れてきた医療部隊の治療を受けた二人は、コルネス軍の輸送機に乗って戦場を後にするのだった



   ――――――――――――――――――――――――――――



 2日後

 メリーゼ空港内にて

 コルネス国の全面支援を受け完全復活を果たしたデオスと浅井は、ドドザと背後に控えるコルネス兵と向き合っていた


 「本当に構わんのか?」


 「ああ、もう貰うもんは貰っているし、次の場所に向かわないといけないからな」


 「そうか。うむ、分かった。今回はそちらの意向に従い、見送りだけで済ませよう。だが何かあればいつでも我らコルネスを頼ってほしい。いつでも我らは助けよう」


 二人の活躍を称えパレード開催を行いたいと言うコルネス国からの提案を、デオス達は断っていた

 そして彼らの意志を再確認したドドザも、その意向を尊重して見送りのみ盛大に行おうと部下を集めて今、この場所に立っていた


 「助かるよ。じゃあ、またなドドザ」


 「またお会いしましょう、ドドザさん」


 「うむ、では皆、我らが恩人に敬礼!!」

 

 ドドザの号令に従い、背後に控えていた全コルネス兵が敬礼を行った

 その敬礼を背に受けながら、二人は用意された宇宙船に向かおうとした時、デオスの名を呼ぶ声が響いた


 「もう話は終わったのね、デオス」


 「!? おい、何でここに居るんだ、ズイズ!!」

 

 美しく澄みわったった、その声の持ち主

 それは浅井がシーウォーン市場で出会った情報屋で、デオスの旧友ズイズ・メルテーシアであった

 彼女は宝石のように煌めく髪を靡かせながらデオスの前に立つと、隈の濃い目を細めてから口を開いた


 「奴の封印が弱まっているわ」


 ズイズの言葉にデオスが反応し、殺気を吹き上げた

 そして悪鬼の様な表情のデオスは、震える手を握りしめながらズイズへ視線を送った

 

 「遂に来たのか、その時が」


 異世界から来た少女、3000年前の後悔、そして国落とし

 遂に彼らは過去と対峙することになる

 






                            2章  骸の王編 完

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