第5話 帝国は時間を守る
「多分、そろそろかな」
超音速で迫る物体が何かを降下した。
「馬鹿な! 自律兵器は米国でも試験段階の筈だぞ!」
「国家規模では、ですね」
「ま、まさか民間企業が協力を申し入れたとでも言うのか?」
「カーツ元帥は人脈を広くお持ちの様ですね」
早々に部下達を呼び集め、退却をする金丸。
「まあ、良い。どの道、パクス・シニカが訪れるのは変わらん。少し遅れるだけよ。総首教よ、せいぜい余生を謳歌しろ。我々の時代が来るのだ」
辺りは静かになる。
相手を閉じ込めているとしたら納屋当りだろう。
案の定、英子さんと菊さんは縛られていた。解放すると英子さんは少し微笑んで「本当に息子そっくりだわ。正義感の強い方ね」と言った。
「なぜ父を逃がしたのです?」
「双子の弟がいたからよ。継承者は独りのみと決まっていたから叡一は勘当同然で家を後にしたのです」
「そうですか。父の言葉の意味がようやく分かりましたよ。僕達は失われたイスラエルの血筋なのですね。そして、景教の総首教。菊さんとの結婚はいわば一族を再統一する為ですね」
「鋭いわねえ」
「しかし、ラジエルの書は燃やしてしまいました」
「あら、本当にそうかしら?」
あれ、違うのだろうか?
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