第2話 過去の話

 やがて僕は高校生を卒業し、米国の小さな神学校に留学することになっていた。


 その前に米国の建国宣言を間近で観たくてその場所に向かおうとしていた時だった。


 突如として銃撃音が聴こえた。


「元帥! お逃げ下さい!」


 そう叫ぶ兵士達が必死に抵抗を試みていた。相手はロシア系と中華系だろうか?


 その瞬間、声が聴こえた。


(銃撃の嵐の中を突き進むが良い。神の天使がお前を護るだろう)


 その声が聴こえた瞬間、突発的に元帥と呼ばれた老人の許に近付いた。


「日本人か?」


「僕が応援を呼びます。どこに行けば宜しいでしょうか?」


「ここから一マイル先に私の軍が待機している。そこまで行ければ……だが、この激戦では」


「僕があなたを担ぎます。何人かの兵士は僕らの後衛を護って下さい!」


 僕は老人を担いだ。老人は驚いた様子で僕に問いかける。


「君はサムライの血を引く者か?」


「一介の牧師見習い風情です! 未だ伝道師にすらなれていません」


「日本人は正直だな。そして同胞なら信じる。わしらを連れて行っておくれ」


「行け! 行け! 急げ!」


 老人は筋力がそれなりにある様子で重かった。しかし、火事場の馬鹿力がそれを克服させた。


 軍との合流を済ませた僕らは助かった。


「助かった。若者よ、君の名は?」


 僕は本名を伝えると老人は驚いた。


「君は叡一の息子だったのか……何という運命だ」


 この人は父を知っているのか? 父は神学者でもあったので海外にも何回かは行っていると思ったが、しかし、なぜ軍人と知り合いなのだろうか? 


 老人はしばらく思案した後、驚きの発言をする。


「若先生、君はハーバード大学神学部に進むべきだ。心配はいらん。我々がパトロンになろう。支援は惜しまん」


 今度は僕が驚いた。


「あの……それって……」


「わしの名はカーツじゃ。カーツ・グラント」


 かくして僕の人生は歪んでいく。

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