第4話これから
「これからか……そうだな当面の目標は頭痛の問題の解決かな」
「実際おかしな話ではあります。システムはプレイヤーもカードどちらの健康にも万全になるように魔力を運用しているはずです」
「お前は……お前のことは何て読んだらいいんだ? 後、喋り方は楽な方でいいぞ」
「なら、エズラと呼んでください。私のような素晴らしいアイテムと仲良くなれる所持者ほど幸運な人はいないのですから感謝してください」
喋り方の話は本当に無かったことにするようだ。
「それで、先ほどは何を聞こうとしたのですか」
エズラが訪ねてきた。俺は今の状況すらも納得している部分がある。これがシステムの魔力による影響なら、アイテムであるエズラ自身もシステムにそう思い込まされているのではないのか? と尋ねたくなった。
「システムによるアイテムへの干渉と、私の話す内容の真偽の問題でしょうか……当然の心配だとは思います。それでは、アイテムとシステムの関係とアイテムとは何かについて説明しようと思います」
「アイテムはシステムによって作られたものではありません。先ほどの情報にもあったように、システムは10年前にこの世界に来ました。ですがアイテムには10年以上前からあることを確認されているアイテムも存在しています。」
昔に使われていた伝説のある武器のいくつかがアイテムとなっていて、今は高ランクのプレイヤーが所持していると聞いたことがある。ただ、会話が出来るアイテムなんて聞いたことがない。
「会話が出来るアイテムは珍しいのか?」
「いいえ、珍しくありません。ただ、アイテムと会話が出来る人は少ないです。これにプレイヤーもカードも関係ありません。システムが選ぶ所持者は、その所持者がアイテムの真の所持者となる可能性がある人であるということです」
「でも俺は最初からエズラの声が聞こえていたし、エズラも聞こえるのが当たり前みたいな感じで話してただろ」
そう、エズラは最初から俺に話しかけていた。当たり前のように所持者が決まったら話して返答がなければ、さらに返答の要求までしてきた。
「アイテムはただの所持者の下では何も起きません。真の所持者に使われ、その所持者とともに強くなることでしか自身のランクを上げることが出来ません。通常はアイテムが所持者を選ぶのはかなりの時間を使います。しかし私は次に手に取った所持者を真の所持者にすると決めていたので直ぐに話しかけました」
「私の話はもう十分でしょう。マスターの今後の話をしましょう」
「俺もエズラって呼んでるし、ヒラクで構わない」
「了解です。確認するとヒラクさんの目標は頭痛を治すためにランクを上げる。頭痛の問題はすぐに解決すべきです。高ランクを目指すのは推奨しますが、恐らく学校に通ってランクが1つでも上がればすぐにその問題は解決するはずです」
「頭痛の原因ははっきりとはわかりませんが、時期などから考えてシステムからの魔力の影響があったことは間違いないでしょう。なので、システムからの魔力が身体に影響を与えることがないようにすればいいだけだと考えます」
「でも、さっきランクが上がると魔力も上がるって言ったよな? 魔力が上がったら頭痛もひどくなるんじゃないのか?」
「ランクが上がることで受ける魔力は自身が魔力を獲得するからです。なので今受けている魔力はシステムがヒラクさんに影響するように使っているものなので話が違います。そして、魔力を手に入れることで周囲から受ける魔力に対抗できるようになります。そして私が求めているのはその先です」
「なるほどな。それでエズラは今の問題はそう時間もかからずに解決するはずだからその先の目標を決めろってことだな」
「そうです。私が導けば神の使いにも魔王にも成れるのでなりたい自分を教えてください」
「……目標というか日々思っていたけど、さっきの話を聞いていてその気持ちが強まったんだが、俺やっぱりシステム嫌いだな」
俺は登録証発行の日に周りの同年代がカードやプレイヤーになり一喜一憂して己の将来をすべてシステムにゆだねている姿や周りの会話全てがシステムやバトルのことばかりなこの世界がたまらなく嫌いだった。強くしてくれるのだって訳が分からない強くして何がしたいのかの目的もわからないのにみんなを強くしているのは不気味に感じる。ランクが上がればわかるのかもしれない。
「嫌いだからどうするのですか? 今までのように逃げていても頭痛は治りませんよ」
また、毒舌になってきているような気がする。もしかしたらあっちが本性なのだろう。そうに違いない。
「エズラ、質問だ。高ランクプレイヤーの最上位はシステムに干渉可能という噂を聞いたことがあるがそれは本当か?」
これはよく聞く噂話の1つで最高ランクプレイヤーはシステムの一部すらも扱うことが出来る真の権力者だという噂である。噂だけでなく実際に何人かは本気で信じている。ある宗教団体は自分たちの理想のために高ランクプレイヤーを自分たちの信徒にすることで世界を救済すると言っている団体がいるほどである。
「半分正解と言えます。正しくは真の頂はシステムに与えられた権力を超える権力を手に入れることが出来ます。つまり、自分の思い通りの世界にするなら今の世界ならランクを上げるだけで好きな世界が作れるというわけです」
そこまでぶっ飛んだことを考えているわけではない。ただ、俺が俺らしく生きていて良いと思えるようにするにはバトルをしてある程度まではランクを上げなくてはならないのだと思う。
「よし! エズラがいればある程度のランクのバトルに勝つなんて余裕だろ!」
「無理です」
……は? 無理? どうして?
「はっきり言って、ヒラクさんは最弱です。今までバトルに最も必要な魔力をシステムから拒み続けて、学校にも行かずただ登録しただけのプレイヤーなんて最弱中の最弱です」
言われてみれば、当たり前のことだった。同年代のプレイヤーは全員学校に行ってバトルの勉強をしている。でも、真の所持者というからには何かすごいことが出来ると思う。なぜなら私が強くなることがエズラを強くすることでもあるのだから。
「ついでに、カードはプレイヤーからしたチートレベルです。もともとの魔力への親和性が高いため登録しただけで魔力を大量にもらい、自身の体を強化しているのですから」
社会的に強いとされているプレイヤーは実はカードに支えてもらっているんだな。戦う力はほとんどカード頼みってことか。
「しかも、最低ランクのFランクバトルでもプレイヤーともう一人のカードが必要です」
「え? 低ランクの時から、仲間が必要だったのか。……知らなかった。」
あれ? 事前知識が全くないのに真の所持者とか言われて興奮して勝てる!とか言った俺ってすごく恥ずかしいかも!
「正直すごく恥ずかしくて、心配になるくらいでした。でも滑稽で面白かったですよ」
まずい、バトルにはほとんど意味のなかったと上に、今自分が周りよりも優れている数少ない部分すらもなくなりかけて、ただ馬鹿にされるだけになってしまう。しかし、そうなるとエズラは何の役に立つんだ?
「役に立ちますよ。マスターのために教えていませんでしたが、アイテムは所持者の意識レベルまで魔力でつながっているので大体何を考えているのか把握できます。私は導くのものです。ヒラクさんを戦えるようにするぐらい簡単です」
「まじか! 頼む! 俺一人でどんな相手も倒せるくらいに強くしちゃってくれよ!」
「了解しました。私の持てる限りを尽くしてヒラクさん! あんたを強くします!」
ここ数ヶ月ほとんど誰とも会話をしてこなかった自分がほとんどストレス無く会話の出来るエズラとの会話が楽しくなってしまった。この時の自分を数時間後には本気で殴りたくなりました。
エズラが興奮しているときはほとんど俺が大変な思いをするときだと数日後の俺は知ることになる。
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