第3話世界の真実1
今から5年前の2X11年の1月1日0時に突如として日本の東京の秋葉原に白い塔が現れた。1時間後日本中にいくつか似たような白い塔が出現し始めた。
北海道、宮城、神奈川、愛知、大阪、広島、香川、福岡、沖縄の9か所に新たに白い塔が出現した。そして、全ての塔が出現してしばらくすると、塔から白い霧が出始め瞬く間に日本全土を覆った。その霧は一週間ほどとどまっていた。
一週間が経過すると、日本以外の国は世界からなくなっていた。というよりも、地球にすでに日本以外の国の存在を覚えている人はいなくなった。いくつかの記憶を失った人々の生活は大きく変化していた。
人々はシステムを操り生活に必要なものを働くことなく手に入れることが可能になった。国という制度は崩壊し、仕事という概念も霧消した。しかしこの世界には大きな1つのルールがあった。それはシステムという存在の絶対的な価値とそれを操るのに必要なランクという基準の存在であった。
システムは人々から労働の価値を奪ったが、闘争や順位争いまで奪ったわけではなかった。より強き者こそがシステムというこの世の価値そのものから与えられる恩恵が大きくなる世界となった。システムへの干渉の権限はランクというもので全て統一されていた。システムのランクが低くとも最低限度の生活は保障されている。しかし、上限はないに等しいほどの自由が高ランク者には約束されていた。社会的なルールですらランクの前では意味をなさなくなったが、無法地帯になった訳ではない。以前までの社会で犯罪に当たる行為はランクに応じて緩和されるとはいえ殺人などの凶悪犯罪まで許してしまうようなものではなかった。人々はこの現状に何ら不思議に思うことはなく今まで道理のように仕事をせず日々暮らしていた。
仕事もしなくなり時間が出来た人々が次に始めたものはバトルであった。15歳以上が参加可能なバトルはシステムに登録をすると自動的にプレイヤーとカードに選別される。この選別がその人のその後の人生を大きく決める行事となった。選別した結果は登録証と呼ばれる一枚のカードで判別する。
プレイヤーに選ばれた人は男性ならトランプのキングを女性ならクイーンのカードが与えられる。
カードに選ばれた人には中央に何かのマークの描かれたカードが与えられる。そこに書かれているのが動物ならば獣人に羽が描かれているなら翼人になど色々な亜人へと姿を変えていった。そして、プレイヤーに選ばれた人はプレイヤーとカードに選ばれた人はカードと呼ばれるようになる。
プレイヤーはバトルをするためカードを仲間にする。仲間になったカードとプレイヤーは一蓮托生である。ほぼすべての時間を共有し互いにランクを上げて強くなっていく。
このような内容を本は俺に教えてくれた。途中の登録証の話などはすでに知っていたが、この世界に前の世界があってシステムによって変えられた世界だったとは知らなかった。怖いことのように感じるのが普通な気もするが、俺はそれに対してはほとんど恐怖を感じていなかった。だが、これはおかしいと感じた。
「なぜ、この世界の人々は今の世界に違和感を感じない? 俺はどうして今この瞬間もさっきの話の内容に対してシステムに不信感を覚えないんだ?」
「それは魔力のせいです。魔力は事象を書き換えることに作用する力のことです。」
「つまり、システムの魔力によって当たり前のことと思わされているということか? でも、俺は登録証を作ったあの日確かに違和感を感じてその後原因を探ろうとしたり、そのことを思い出すだけで頭痛が起こったりしたんだが?」
「それについてはわかりません。多少でも魔力に対して抵抗できるということは亜人の条件を満たしているのでカードになるはずです」
「頭痛はどういうことなんだ?」
「頭痛に関しても同じです。システムからすれば体にまで警告を出させるほどに抵抗される魔力を低ランクに送るはずがありません」
「高ランクになると送れるのか?」
「今のマスターのランクで開示可能な情報では……不可能な情報の部分を省いて話すと、ランクが上がるということは魔力が多くもらえるようになるということです」
「魔力は一生ついてくるのか、じゃあ俺はこの先ずっと頭痛と付き合っていかなくちゃいけないのか?」
「いいえ、マスターのシステムからの魔力で受ける影響はバトルに向けて何も行動していないから送られているはずです。なのでランクを上げるために行動をして、ランクを上げれば強くなって頭痛の問題も解消されるでしょう」
「なんとなくわかった。ありがとう」
「では今後の話を始めます」
その幻想的で澄んだ声からは考えられないほど嬉しそうな声が聞こえてきた。
「え? 次の所持者でも探しに行くんじゃないの? 俺の今後の頑張る方向もわかったし俺もこれから帰ってバトルについて調べたりしたいんだけど」
「私は所持者を導くためのもので、今の所持者はマスターです。初めに言ったようにマスターのなさりたいことを叶えるためにお力添えするのが私の役割です」
「これからのことを語りましょう! マスター」
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