あなたへ告ぐ

17

一年後の秋、僕と波留奈は二人で京都旅行へ行っていた。


当時修学旅行で行ったことのある場所や、まだ行ったことのない場所。紅葉に飾られた山一帯の景色や、もみじをかぶっているように見える金閣寺は、一枚の写真を見ているかのような景色と思わせた直後に、あー、と納得してしまう残念な気持ちが押し寄せる。


「金閣寺ってなんか、きんかくじーって感じだね」


隣の浴衣姿の波留奈が残念そうに言う。


「思っていたよりもなんか普通、みたいな、金だなあって納得しちゃうのがなー」


「ね、残念だよね。すごいんだけどね、駅前の京都タワーの方がまだ迫力あったな」


「そんなこと言うと、足利義満に怒られちゃうよ」


「足利……? 聞いたことあるけど、誰それ」


「この金閣寺建てた人だよ。なんで金にしたかはわからないけど」


「へえ。自分を目立ちたせたかったんじゃないかな。こんなに主張激しいと、そう思っちゃう」


そう言うと波留奈はスマホを金閣寺の方へ向けると、パシャ、というシャッター音をたて、「きんかくじめっちゃきれい、びっくりまーく」と文字を打ちながらかたこと語のように言う。


「ストーリー?」


「そう。でも安心して、これは友達用で、仕事用じゃないから」


一瞬忘れてしまいそうになるけど、波留奈はモデルで、僕の彼女だ。こんな僕にこんなにきれいで可愛い彼女が出来るなんて、大学生時代思っていもいなかった。中学の同級生で仲が良かったのはいつもの三人とほか数名ぐらいだけだ。あの雨の日、偶然波留奈が僕の店に来たのは運命だったのかもしれない。


「悠くん、そろそろお昼にしよっか」


「予約してたところ行こうか。懐かしいなー、あそこおいしかったの覚えてるからめっちゃ楽しみ」


「私も。早く行こう!」

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