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「私たちここを卒業してからもう九年経ってるんだね」


「そう考えると早いな。学生生活頃が一番時間の流れが遅かった気がする」


波留奈と悠は校長先生に招かれ、校長室に来ていた。


「見てみて悠くん! まだウーパールーパーいるよ! 長生きしてるんだね~」


賞状やらが飾ってある壁にある異色を放つつぼ型の水槽には、昔と変わらずウーパールーパーが一匹、びくともしないで水の中に溶け込んでいる。


「この子は今年で九歳になるんですよ。恐らく波留奈さん方が卒業した年に来た子だと思います。私はここに来て今年で三年目になるんですが、前回居た校長先生から伝言が置いてありましてね。この子を頼む、と。それがこのウーパールーパーなんですが、全く、困りますよね。この子のお世話は私一人でしないといけないんですから」


校長は扉を開け、三人分のペットボトルをトレーに入れて持ってきた。


「こんなものだけど、水分補給が大事ですからね。スポーツドリンクですが、受け取ってください」


「ありがとうございます」


からっからに乾いた喉にひんやりと冷えたスポーツドリンクが染みわたり、生き返った心地になる。


「今日は部活動とかないんですか? やけに生徒がいないなあと」


「来週にはテストが控えているんですよ。一週間前は部活動は基本行わないようにしているので」


「なるほど。それでか」


「校長先生!」


「なんでしょうか、波留奈さん」


「教室に行きたいんです、可能でしょうか」


「出来ますよ。今からですか?」


「……もう少し涼んでからでお願いします」


冷房空間を満喫したのち、僕たちは三年一組の教室に来た。




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