同級生

「久々だねえ、悠くん!」


「波瑠奈も、相変わらずで良かったよ」


「えへへ〜、それほどでも。にしても悠くん、なんで古民家カフェをやってるの? これって自営業? てことは店長さん! 悠くんすごいよー!」


「ちょっと、勝手に話進めすぎだって。まあ、内容は合ってるけど……」


「だよねえ、見た感じ悠くん一人だけだもんね。私ここで働こうか?」


「まーたなにを言ってるんだか。噂だけど、波瑠奈は東京でモデルをやってるとか? 本当なの?」


「んー、まあ、ホントだよ。あーあ、残念だなー。悠くんのカフェで働けないなんて」


「適当なこと言うなよー」


「適当じゃないもん、ほとんど本当だもん!」


「残りは?」


「……うそ、今の仕事が好きです」


「古民家カフェよりモデルの方が、波瑠奈は似合ってるよ」


「う、ありがとう」


「とりあえず空いてる席座ってよ。それでなんか飲みながら話でもしようよ」


「じゃあここ! カウンターがあるカフェってなんかかっこいいね〜」


そう言うと、波瑠奈はカウンター席に座り、宙ぶらりんな足をパタパタとさせる。


「私冷たいのが飲みたい。梅雨明けたのにまた雨って、蒸し暑くて蒸しパンになりそー」


「そんな蒸しパンと冷たい飲み物です」


悠は波瑠奈の前に自家製のたまご蒸しパンとキンキンに冷えたカフェオレを差し出す。


「え、蒸しパンなんてあるの?! え、でも私頼んでないよ」


「懐かしい友人への軽いおもてなしだよ。これ、俺のばあちゃんが教えてくれた蒸しパン。めっちゃ美味いんだけど、俺はまだ完璧には真似出来ないや」


「めっちゃ美味しそうだよ、じゃ、いっただっきまあす」


波瑠奈は蒸しパンを頬張り、そして口角がひょいっ、と上がる。


「悠くん、これめっちゃ美味! めっちゃたまご!

めっちゃ蒸しパン! 」


「ありがとう、って、そんな美味しい?」


「めっちゃ美味しい、めっちゃ。これはすごいよ、今まで食べた蒸しパンより断然これが一番」


「そ、そうか。ならよかった」


悠はたいして濡れていないコップを拭き、棚に戻す。


「あ、悠くん今照れてるでしょ」


「照れてない!」

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