古民家カフェ

悠はやむを得ず大学を中退した。病気があまりにも深刻で、入院期間は二カ月ちょっとあった。そして病院退院日、悠は二カ月ぶりとなる日の光を浴びた。退院前、医師から過度な運動と食事は制限するよう言われた。

悠は幼い頃から体が弱く、風邪や熱は平均に比べると多いほうだった。多少大人になってからは風邪や熱はひかないようにはなってはいた。


「悠、どっか寄ってくところとかある?」

悠のお母さんの美佳子振り向いて聞く。

「んー、あそこの公園行きたいな。白山公園」

「公園だなんて珍しいわね。いいわよ」


数年ぶりに来た白山公園は変わった場所はなく、いつの時代も子供たちの遊びの場となっている。ここの公園は山の山頂のひらけた場所にある公園だ。ベンチに座り、そこから街を見下ろし絶景が広がっているのを眺める。


「悠はこの先どうするつもり?」

「就職先を探しながら、バイトで金を稼ごうかなと。しれしかないかなーって」

美佳子は、自身もそう思っていたかのようにうなずくと

「自分のやりたいように生きなさいね。後で後悔しないように選択するんだよ」

「うん、そうする」


しばらく座っていると足元に青のゴムボールが転がってきたので拾い上げると、その先に三歳児ぐらいの小さい男の子が立っていた。手元にあるボールを見ていたのでそれを男の子に渡す。

「どうぞ」

「……ありがとう」

照れながらも男の子は礼を言うと、青いボールを両手で持ちながら向こうにいる親子らしき人の方へと向かって行った。


僕も昔はあんな時があったのか。そう悠は懐かしく思った。

無邪気で自由で、自分が思ったことがなんでも叶うと信じていたあの頃が。

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