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人の死とは突然にやってくる。
あの日のあじいちゃんのように。
目を開ければそこには白い天井が見えた。
もう夜だが、雲一つもない空は、月の優しい光をいっぱいに広げる。
病室が月の光に照らされる。薄く照らされる病室はさみしく見える。
僕がそのさみしくみえる景色の一部にいると思うと、余計自分がさみしく思える。
僕は突然のことに、死というものを実感できずに死ぬところだった。
むしろその方が良かったのかもしれない。でもまだそれは早い。まだ生きたいから、早いと思えた。
急に意識が途絶えた僕は救急車に乗せられ手術を受けた。奇跡的に手術が成功し、その数日後僕は目を覚ました。そして医者からこう告げられた。あなたの症状は、もやもや病というものです。もやもや病、またの名をウイリス動脈輪閉塞症。太い脳血管の終末部が細くなり、脳の血液不足が起こりやすくなります。症状で言うと、手足の痺れ、言語障害、脳梗塞、脳出血が挙げられます。
この病名は以前から知っていた。
中学二年の頃、ある日突然手足が軽い痺れに見舞われ、いつも通り息を吐いた瞬間、全身の力が抜ける感覚がした。その瞬間、血の気が引いた感覚がした。一度も戦ったことのない未知との遭遇に、太刀打ちできない戦士のように、どうすることも出来ず、ただ立ち上がれずにベットにもたれていた。
スマホで検索すると一番上に出てきた「もやもや病」という言葉は、電撃が走ったかのように脳に焼き付いた。
もやもや病は定期的に手術をしないと何が起こるのかわからない病気らしい。小児時代に手術を受けた人が大人になり、何事もなかったのに突然病気が再発し脳梗塞になったというケースもある。つまり、
いつ死ぬのかわからない病気だ
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