あなたへ告ぐ

かわき

ぼくのおはなし

おじいちゃんが死んだ。

とうにょうびょうという病気で死んだらしい。

最近よく病院に行く回数が増えていたなと思う。

でも悪い気はしなかった。

おじいちゃんに会えるから。

でもどことなく会うたびにおじいちゃんの顔色は悪くなっていた気がした。

病院でゼリーを買ってそれを一緒に買ったり、リンゴジュースを飲んだり、それだけでも僕は幸福感を得られていた。

おじいちゃんもそうだったと思う。

プラレールの車両が動かなくなった時は、おじいちゃんのところへと持って行き修理してもらった。修理され戻ってきた車両は、前後が逆になっているのは今見てもいい思い出だ。

記憶に残っている最初のお葬式はおじいちゃんの葬式だ。

僕は泣かなかった。泣く理由がなかったから。

人は人の死に対して泣くのだろう。

当時の僕は、人の死というものに鈍感だった。

人は死ぬものだと思っていなかった。

言葉は知っていた。だけれど、それは空想上のもの。

だった。


【人の死は必ずある】

この当たり前のことが、当たり前じゃなかった僕に衝撃を与えた。


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