沈んだ世界と沈む世界
「おいおい、いきなりリズの親父とお袋が帰ってきたってだけでも凄いニュースなのに、次は世界滅亡かよ?」
「ど、どどど……どういうことなの!? っていうか、もう僕達の世界って殆ど沈んじゃって、これ以上滅びるところなんて残ってないんだけど!?」
「ホーッホッホッホ! 人間共の代表ともあろうものが、何を狼狽えておるっ!? 先代の言葉はいつだって正しいのじゃ! 我輩と共に覚悟を決め、その耳の穴をかっぽじってよぉーく先代のありがたいお言葉に耳を傾けいッ!」
「クックック! よぉーし、これでこちらの世界の主要な者達は集まったな? ならば、今から話すことをよく聞くのだ!」
「はーい」
リズのお父さん達やハルさんに色々言われた少し後。
魔族の人達の居住区からパライソの議事堂に移動した俺達は、魔族だけじゃなくてリリーやトルクスさんみたいな人間の偉い人も含めて、みんなが集められた。
四天王のタナカさん達や、アールリッツさんや他の勇者さん達。
他にも、勇者ってほどじゃないけど有名で強い冒険者の人達も、結構呼ばれてるみたいだった。
「こほんこほん……! ではまずはこの私、冒険者ギルド受付改め、この世界を管理する女神ハル・ヨルネットからお話しさせて頂きます」
「フフフ……。ハルさんのことは前からただ者ではないと思っていたけど、まさか本当に神様だったなんてね。道理でスキルの覚醒なんていう芸当を簡単にできるわけだ」
「いやはや。これについては隠していたというよりも、言う必要が特になかっただけなのですよ。なにせ私のような神々は世界を作った時点で殆どの力を使い果たし、後は今の私のようにスキル関連の力くらいしか残りませんゆえ……」
まず最初にみんなの前に出てきたのは、〝セカイノメガミ!〟ってデカデカと書かれたタスキを肩からかけたハルさん。
自分が女神だってことを無茶苦茶アピールしてるな……。
「ではでは! まず最初にこの世界について説明します。大前提として、今皆さんがいらっしゃるこの世界は、何を隠そうこの私が作りましたっ! ですが、実はこの世界にはもう一つ、〝別の世界がくっついている〟のですよ」
「別の世界? あー、もしかしてそれってあれか? 私達がこの前流された魚のいない海のことか?」
「はいリリーさん惜しい! あの海は確かにこの世界とは別の場所ですが、あそこは隣の世界とこの世界を繋ぐ〝トンネル〟で、あの場所の更に先こそがもう一つの世界になります」
「クックック……! 我々も最初はあの場所に迷い込み、そこから向こう側の世界へと飛び出してしまったのだ……! リズが見つけた私のドールの残骸は、その時に残していった物というわけだなッ!」
「あの場所へは、特定の条件が揃った時にしか行くことができないの……! 今の私達の技術ではトンネルまで行くことは出来ても、自由に向こう側から戻ってくることも、こちらから向こう側に行くことも難しいのよ……ッ!」
そうだったんだ……。
だからあの時、あの海に最初に流れ着いた時は俺の水泳EXでもなにも分からなかったんだな……。
じゃあ、あそこにサメ猫が助けに来てくれたのって、かなりラッキーだったのかも。
「そしてそして! つい最近起きた大洪水も私達の責任や天変地異などではなく、全てあちら側の世界が原因で起こったことなのです。それについては先代大魔王さんがお詳しいですよね?」
「うむッ! 我々は十二年前あちら側からやってきた謎の軍勢と戦い、その戦いの余波であちら側の世界へと飛ばされてしまった……。そして見たのだ……とうに〝滅び去ったもう一つの世界の姿〟をな……ッ!」
「な、なん……だと!?」
「それは穏やかではありませんね……。僕達の世界と繋がっている場所が、滅びているなんて……」
「私達が見たあちら側の世界の文明は、もはや完膚なきまでに滅びていた……。我々は可能な限り現地で調査を進め、戻れぬ十二年の間に様々な情報をコツコツ集めていたというわけだ……! フハハハ……! えらいだろう……ッ!?」
「さすがパパ様なのだっ! 本当に立派でえらいのだっ!」
「ファ――――ッハッハッハ! そーだろうそーだろう! 転んでも決してただでは起きぬ! それこそ我ら大魔王の掟よッ!」
ま、マジか……。
リズのお父さんのその話に、俺の背中を冷や汗流れていくのを感じた。
だって、俺達だってついこの間大洪水で死ぬかもしれない目にあったんだ。
俺達と同じような世界の人達が、もう今は誰も残ってないなんて……。
想像するだけで凄く怖かった……。
「この世界を襲った大洪水の原因となった〝大量の水〟も、リズやカノア君から見せて貰ったサメ猫やサメ犬のような〝巨大生物〟も、そして私達が戦い、この世界にも現れた〝十字型の怪物〟も……全ては〝あちら側の世界からやってきた存在〟なのだ! あちらの世界は確かに滅びたが、〝滅びた原因〟はそのまま放置されている……。そして世界が繋がっている以上、その滅びはやがてトンネルを通過し、我々の世界にも魔の手を伸ばしたというわけなのだ……!」
「待てよ! まだ肝心なことを話して貰ってないぞ! アンタの言う向こうの世界がダメになった原因ってのはなんなんだ!? それがヤバイのなら、私達はそれをなんとかしないといけないってことなんだろ!?」
「そ、それはそう。俺もまだ死にたくないし」
「案ずるな……! 無論、その原因も明らかにしてきたッ! あちら側の世界が滅びた原因……それは〝星の外〟から無限に降り注いだ大量の水だ。そしてその大量の水をなんとかするために、〝あちら側の女神〟が全ての力を注ぎ込んで最後に生み出した存在……。それこそがカノア・アオ……君の持つ水泳EXなのだ――!」
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