帰ってきた大魔王


「ナーッハッハッハ! 久しいなリズよ! なんと美しく、立派に育ったことか! 父親として感無量であるぞ!」


「クックック……! なんとかかんとか帰ってきたわ……! 心配させてごめんね、リズ……!」


「あ……ああ……っ! ほ、本当に、本物の……っ!?」


「この人達がリズのお父さんとお母さん?」


 リズのお父さんとお母さんが帰ってきた。

 いきなり出てきたラキにそう教えられた俺とリズは、すぐに魔王城出張所地区に向かった。


 俺達が着いた頃には辺りはマジのマジで無茶苦茶な騒ぎになってて、その人達をかき分けて進まないといけなかった。


 なんでも、帰ってきたのはリズのお父さんと母さんだけじゃなくて、一緒に行方不明になってた殆どの人が帰ってきたんだって。


「うわああああああああああ――――ッ! パパ様、ママ様ああああああああっ! 良かった……っ! 本当に無事で良かったのだ……っ! えぐっえぐっ……!」


「十年以上も留守にしてすまなかったな……。私達も、まさかこのようなことになるとは思っても見なかったのだ……。本当にすまない……」


「あ、あの……! もしかして、お二人が僕の……?」


「っ!? まさか……ラキ……? ラキなのか!?」


「ああ……! ラキなのですねっ!? ごめんなさい……生まれたばかりの貴方を一人にして、本当にごめんなさい……っ!」


「リズ……。ラキ……。良かったね……」


 そうして、戻ってきた人達と待ってた人達はみんな嬉しそうに抱き合ったり、手を繋いだり、ちょっと戸惑ったりしながら再会を喜んでた。


 リズが五歳の時って言ってたから……えーっと……十二年か。


 長いな……。

 凄く長い……。


 ラキなんて、自分でも言ってたけどお父さんの顔も、お母さんの顔も覚えてない。

 それでもすぐに気付いて声をかけたのは、きっとラキが二人の写真とかを見てたからなんだろうな……。


 俺だって、家から追い出された時はもう皆に会えないのが寂しかった。

 つい最近また会えた時は、やっぱり懐かしくて嬉しかった。


 リズやラキ。それにここにいる皆は、そんな俺よりももっとずっと長い間離ればなれで、ようやくまた会えたんだ……。


 本当に良かった……。


「でもパパ様もママ様も、今まで一体どこにいたのだ……っ!? あの隔離された海域が怪しいとは思っていたが、あそこを隅々まで探してもあれ以上の手がかりはみつからなかったのだ……っ!」


「うむ……。それについては話せばむちゃくちゃ長くなるのだ……ッ! もう少し落ち着いて、詳細を整理した上で改めて同胞達に全貌を伝えなくてはな……。そして――」


 でもその時。


 良かったねって思いながら皆を見てた俺に、リズのお父さんがキリっとした顔を向けてきた。

 はわわ……なんかこうして見ると、確かにリズに良く似てるかも。赤い目とか。


「カノア・アオというのは君だな……ッ?」


「え……? はい」


「っ……!? ど、どうしてパパ様がカノアを知っているのだ!?」


「ファーーッハッッハッハ! 勿論知っているとも……! なぜなら、私達がこうして戻って来れたのも、戻らなくてはと決意したのも、全てこのカノア君の存在あってこそなのだからなァ……!」


「ククク……! そういうことなのよリズ……! 流石は私の娘……! 本当にクリティカルでいい男を捕まえたわね……! おめでとう……ッ!」


「にゃにぃーーーー!? す、既にカノアと私の関係まで知っているとっ!? な、なんでっ!? 一体どうやって!?」


「びっくり」


 いや、マジでびっくりした。

 最初は俺達が来る前に誰かに聞いたのかなって思ったんだけど、俺とリズが恋人同士なのはまだそんなに沢山の人に知られてないんだ。


 だから、それをリズのお父さんとお母さんが知ってるのは、本当におかしい。

 凄くびっくり。


「それについても話せば長くなるので今は割愛するが……! とにかくカノア君! 突然で悪いが……このままでは〝世界は滅亡する〟! それをなんとか出来るのは、この世で君だけなのだッッ!」


「は?」


「この十二年……私達は〝あっちの世界〟で調査を続けていた……。どうして世界がこんなことになったのか……どうすれば世界の滅亡を防げるのか……。そして、その鍵を握るのが貴方……。〝こっちの世界〟の海の神……カノア・アオなのよ……」


「さっぱり訳が分かりません」


「カノアに分からんのはそうだろうが、この私にもサッパリ分からんぞっ!? 世界が滅びるとは……カノアが海の神とは、本当にどういうことなのだっ!?」


 いやいやいや、本当にどういうこと。


 さっきの時点でももう凄くびっくりしてたのに、リズのお父さんとお母さんはもっと意味不明なことをぽんぽん言ってきた。


 世界がどうとか、俺がどうとか……。

 これは確かに、二人が言うみたいにちゃんと落ち着いて話を聞かないと理解できなさそう……。


 でも、俺がそんな風に頭にハテナマークを浮かべて呻いてたら……。


「――それについては、この私からも説明させて頂きましょう。構いませんよね? 先代大魔王さん」


「え……? ハルさん……?」


「フッ……ようやく来たか! もし貴様が嫌だと言っても、無理矢理引きずり出して説明させていたところだ……〝こちらの世界の女神〟よッ!」

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