第九章
二人の決意
「ようやくくっついたのかー! 良かったな!」
「本当に。僕もカノアさんを連れ回した甲斐がありました」
「うん……色々ありがとう」
「むっふふふふふふふ……っ! そーなのだ! これで私とカノアは恋人同士っ! もう何を気にすることもなくイチャイチャラブラブできるっ! ぬわーーーーっ! 我が世の春がきたああああああっ!」
リズと無事に恋人同士になれた次の日。
俺とリズは今回のことで一番お世話になったラキに、ちゃんと報告しに行った。
ラキは初めて俺と会った時からずっと俺のことも、リズのことも心配してくれて、本当に色んなことをしてくれたから。
リズにお返ししたいって思うのと同じくらいラキにもお返ししたいし、俺もラキみたいにちゃんと出来たらいいのにっていっつも思ってる。
普段は俺なんかじゃ絶対に入れない、パライソの真ん中にある聖女の館。
俺とリズを見たラキはすぐに全部分かった感じで笑顔で出迎えてくれて、〝転送装置〟っていう変な機械で、三人でリリーの部屋に遊びに行ったんだ。
「リズ様の幸せな姿を見ることが出来て、僕も嬉しいです。リズ様は僕にとって、本当の家族以上に大切な方ですから……」
「ううっ……! 感謝するのは私の方なのだ……っ! 私の至らぬ部分をラキはいつも真っ先に支えてくれた……。私はずっとラキのことを弟のように思っていたが、実際はその逆……守って貰っていたのは、いつも私の方だったのだ……っ!」
「はははっ! 確かにリズは頭も良くて超強い大魔王なのに、ちょいちょいポンコツだからなー! ようやくカノアともくっついたことだし、これからはラキを見習ってしっかりやるんだぞ?」
「ぐぬっ!? なぜそこでリリーが偉そうにするのだ!? なぜ!?」
「そりゃ、ラキは将来私の旦那様になる相手だからな。ダンナの手柄は私の物。私の手柄も私の物っていうだろ?」
「鬼嫁か貴様っ!?」
「あ、あはは……」
相変わらず仲良しのリズとリリーを見て、俺とラキは部屋の椅子に座りながら乾いた感じで笑った。
「ですが、よく一回でリズ様に告白できましたね? 僕の計算では、カノアさんは一度目のアタックでは結局何も言えず、ショボショボになって帰ってくるとばかり……」
「うん、まあ……実際そうだったし……。もうダメだって思った時に、リズが……」
「私がカノアを心配して手を握ったのが嬉しくて、つい言ってしまったと……。昨日もそう話してくれたな……? ぐ、くぅぅぅぅ……! な、なんと健気な……っ!」
俺の方に目を向けたラキの質問に、俺も正直に無理だったって答えた。
そうしたら、リリーと話してたリズもぴょんぴょん飛び跳ねて戻ってきて、俺の腕にぎゅって抱きついた。
「心配して当然だろう!? 大好きなカノアのことはいつだって見ているし、気にかけているのだからなっ!」
「うん……そうしてくれてるの、めっちゃ分かる」
「なるほど……そうだったんですね。リズ様の仰る通り、それはお互いのことを思い合っていたからこその行動だったのだと思います。やりましたね、カノアさん」
「俺だけじゃマジでなにも……。そもそもリズと仲良くなるとか、ラキやリリーと話すとか……そういうのも、俺だけじゃできなかったし……。全部、みんなのおかげ」
「ふふ……立派です。もう以前とは見違えるほどカノアさんは立派になりました。その証拠に、今だってちゃんとご自身の気持ちを僕にお話ししてくれてます。リズ様のこと……よろしくお願いします」
「……うん」
「へー……。カノアもいい面構えになったじゃないか。頑張れよ、応援してるからなっ!」
ラキもリリーも。俺とリズのことをむちゃくちゃに喜んでくれた。
俺も凄く嬉しいし、リズも凄く嬉しそうだった。
俺はそんなニコニコするリズの手を思わず握って、絶対……かはまだ自信がないけど、俺に出来ることは何でもやろうって思った。
もうリズがいない毎日も、ラキやリリーとこんな風にお話しできない毎日も。どっちも少し想像しただけで、凄く嫌だったから。
そして――。
「それでな……実は、ちょっとカノアと一緒に出かけてこようと思っているのだ。まだ急なことで、昨日二人で話したばかりなのだが……」
「お出かけですか?」
「新婚旅行の下見か? 気の早い奴らだな?」
「違うわっっっっ! カノアよ……話してもいいだろうか?」
「うん。いいよ」
それは、もうリズと二人でそうしようって話してた。
前の式典の時と同じで、リズがそうしたい気持ちは、俺にもよく分かったから……。
「なに、大したことではない。私達もこうして深い仲になったわけだし、せっかくだから二人でカノアの両親に会いに行こうと思ってな……」
「げげっ……!? 本気かよ……? カノアの親って、前に聞いた感じじゃ相当アレだろ……」
「ですね……。復興式典でカノアさんの英雄的行動が広く知れ渡った今も、カノアさんのご両親からはなんの音沙汰もないですから……」
「言っておくが、これはカノアのためとかそういうのではないぞ……? 他ならぬこの私がそうしたいのだ……っ! ぐぎぎぎぎ……ッ! 事と次第によっては、親共がどうなるかは知らんがなァ……!?」
「ん……ちょっと行ってくる」
怒った猫みたいに髪の毛をぶわあって逆立てるリズをなだめながら、俺は実家であった色んなことを思い出していた――。
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