再結成! 大魔王探検隊!


「こ、これは……っ! サメ島で見たチュパチュパボンボリアンデスワーム……いや、サメ猫の足跡ではないか!?」


「そうか。どこかで見たことあると思った」


「それって、パライソから出発する前にリズが言ってた猫とサメが合体した化け物だよな? そいつがここにいるってのか?」


 ハルさんが見つけた大きな足跡。


 俺とハルさんはひとまず看板を立てるのは後回しにして、皆にも集まって貰った。

 すぐには思い出せなかったけど、言われてみると確かにサメ猫の足跡と似てた。


「それは分からん。だがとにかく、これは私が以前サメ島でチュパチュパボンボリアンデスワームと勘違いした足跡で間違いなかろうな」


「でも俺が昨日調べた時は、サメ猫がいそうな感じはしなかったんだけど……」


「でしょうね……。僕の見立てでは、この足跡はかなり以前の物だと思います。ほらここ……このくぼみの側面から、綺麗な太い木の根がここまで伸びてます」


「なるほど。つまりこの足跡がつけられてから、根がここまで育つ程度には時間が経っている……と言う訳だね」


「カノアの水泳EXに引っかからなかったと言うことは、少なくともその時点ではサメ猫は海中には絶対にいなかったということだ……。いるとしたらこの島の何処かだが……あれほどの巨大なサメが動き回っていれば、流石に私達でも気づけるはず……っ! う、うむむ……! うむむむ……っっ! うむむむぅぅぅぅ……ッ!」


「ど、どうしたの? 大丈夫?」


 俺達が足跡をぐるって囲んで色々話してたら、突然リズが苦しそうな声を出した。

 心配になった俺はすぐにリズに声をかけたんだけど……。


「ぬわーーーーっ! 今までなんとか我慢してきたが、それももう限界なのだっっ! やはりこの島っ! そしてこの海には何かがあるっ! この匂い立つミステリーと危険なUMAの気配っ! 今すぐ徹底的に調べ尽くさねば気が済まんッ!」


「どういうこと」


「あちゃー……。こいつは完全にリズのスイッチが入っちゃったな。こうなったリズは、もう絶対に〝探検しないと気が済まない〟んだ」


「どういうこと……」


「リズ様は昔から様々な秘境探検や、怪しげな古代遺跡とかの話に目がありません。中でも実際に探検隊に同行するレトロなドキュメンタリー映像の大ファンで、魔王城のリズ様のお部屋では、その手の記録映像が一日中流れていました。探検の途中で突然現れた原住民にカメラマンが襲われたり、なんの前触れもなく妙に作り物っぽい毒蜘蛛に探検隊の隊長が刺されたりします」


「それなら私もリズに何回も見せられたな。でもあれって目的地に着くまでは沢山のガイコツや謎の足跡があったり、ピラニアとかがわんさか泳いでる湖とかがあるのに、帰る時は超スムーズなんだよなー! 不思議だよなー!」


「なにそれ超怖い」


「もはやこの島での生活拠点は十分に確保した……! ならば次に我々が成すべき事はただ一つ! この謎とロマンとスリルに満ち溢れた島と海とを徹底的に調査し、隠された世界の真実と財宝をこの手に掴むのだっ!」


 リズは頭の角を手に持ってぶんぶん振り回すと、そのまますぐに俺達全員に見たこともない丸い形のお揃いの帽子をパパって被せてきた。


 そして自分は背中に〝大魔王探検隊〟って書かれた旗をくっつけて、グッて握った手を空に突き上げた。


「どうだお前達! この私の考えに異議があるならば今ここで言うが良いぞっ!」


「いいんじゃないか? ぶっちゃけ私も退屈してたし。戻れるならさっさとパライソに戻りたいしな」


「僕も異論はありません。どれだけこの島での生活基盤を強固にしても、ここから帰る手段がなければ意味はありませんから」


「私もいいと思うよ。それに、そういう〝クエスト〟は勇者である私にぴったりだ。ただ働くだけよりもよっぽど皆の役に立てると思うよ」


「私も早くこの看板を立てたいと思っております故、大魔王さんの方針には大賛成ですっ! ぜひぜひ、どんどんやっちゃいましょう!」


「リズのしたいようにすればいいと思う」


 リズのその言葉に、リリーや他の皆はうんうん頷いた。

 まあ、みんな超強いし、ハルさんもあの看板さえなんとかすれば色々出来るみたいだし、早く帰れるなら俺だってそっちの方がいいし。


「良かろうっ! では改めてここに宣言する……! 大魔王探検隊――出発だっ!」


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