これからはもっと


「カノアっ!」


「ただいま」


 あの後。


 怪物をお月様まで吹っ飛ばした俺は、皆の所に戻ってきた。

 そして空を飛んでるリズの前に俺もザバーーって水を噴き上げさせて固定。

 吹き上がり続ける水柱の上にぼーっと立つ感じで向かい合った。


 リズの周りにはラキやリリー。

 四天王のみんなも待ってくれてた。


「カノア……! 本当に……本当に無事で良かっ…………っていうかすごっ!? 凄すぎるだろそれッ!? な、なんなのだその芸当は!? どう考えても物理的におかしいだろうッ!? いつからそんなことが出来るようになったのだ貴様は!?」


「マジだ……。なんでこんなこと出来るんだ俺は……」


「自分でもわからんのか!?」


 うわ、リズに言われて気付いたけど、俺ってこんなことも出来るのか。

 ちょっとキモいな……。


 そんな風にびっくりしつつも、俺は気を取り直して右手を海の中に向ける。

 俺が手を向けた海がグワって割れて、その割れた水の中から俺の体より二回りくらい大きな機械のボールが浮き上がってくる。


『こ、これ……もしかして、博士が乗ってたエアルオーズの脱出ポッドじゃないですか!?』


「うん。ちゃんと中にお爺ちゃんもいる。少し怪我もしてたから、俺が治しておいた」


「は……!?」


 俺は水の上に浮かせたお爺ちゃんの機械に手をかざす。

 そうすると勝手にその機械がピコーンって開いて、中ですやすや眠る邪悪博士のお爺ちゃんの顔が見えた。


「お爺ちゃんのドールが爆発する前……リズは何かやってた。きっとあれのお陰で、爆発からお爺ちゃんだけは守れたんだ」


「そ、それは確かにしたが……。あまりにも爆発が激しく、助けられたとは思えなかった……。脱出ポッドの反応も感じられなかったのに……」


「ま、待てよカノア! 助けたのはいいけど、さっき怪我を治したって……お前ってそんなことも出来るのか!? まるで私の聖女の力みたいな……」


「俺が見つけたとき、お爺ちゃんはもう半分くらい水に浸かってたんだ……。だから、俺も慌てて助けなきゃって思って……。そしたら、怪我とか病気とか、お爺ちゃんの腰痛とかも全部治せて……」


「な……っ!? 冗談だろ!? いくら私でも、そこまでは治せないぞ!?」


 お爺ちゃんの機械をオルアクアはすぐに抱えて、頭と胸の部分をパカーって開いて中からラキが出てくる。

 そのままラキは真剣な顔でお爺ちゃんの体をさすったり、手首を持って確認した。


『ほ、本当ですリズ様……! カノアさんの言う通り、ヘドロメール博士は傷一つありません! 脈拍も呼吸も正常……。それに、博士が今年の健康診断で持病登録されていたリウマチも痛風も偏頭痛も高血圧も悪玉コレステロールも全部……っ! な、なにもかも治ってます……っ! 凄い……! こんな、こんなことって……っ!』


「マジか!?」


「そ、そんなのアリかよ!?」


「良かった……」


 自分でも、どうしてこんなことが出来たのかサッパリ分からない。

 でも……それは今までの水泳EXとは何かが違った。


 海……というか水だ。


 今もまだそうなんだけど……。

 まるでこの世界にある全部の〝水〟が、俺に力を貸してくれたような。


 海の水だけじゃなくて、雨とか、川とか……人や動物の中にも水ってあるし。

 そういう水全部が俺の味方になってくれた……そういう感覚だった。

 

「じゃあ何かァ!? ヘドロメールのジジイは、あんな騒動を起こした挙げ句逆に元気になってメデタシメデタシかヨォ!? どうなってんだァ!? ギャハハハハハ!」


「ハッハッハッハ! もう全部カノア殿一人で十分かもしれんな! ハッハッハッハ!」


「す、凄いですカノアさん……っ! 私……とっても感動しました……!」


 無事だったお爺ちゃんの周りに集まってたタナカさん達も、みんな色々言いながら笑ってた。


 あのパーティーでは色々あって敵同士みたいになってたけど……。

 本当は、みんなもお爺ちゃんのことは嫌いじゃなかったのかなって思った。


「カノアよ……本当にありがとう……! お前は一度ならず二度までも、私達を危機から救ってくれた……。私は、一体どうやってこの恩をカノアに返せばいいのか分からん……っ!」


「別にいい……。リズからは、もう沢山貰ってるから……」


「え……」


「俺ももっと頑張ってみる……。昼まで寝ながらでもいい感じで……でも、それでもちゃんとリズの役に立てるように……」


「カノア……」


「うん」


「なら、私もカノアのために色々頑張るのだ……! 私だって、カノアにもっとしてやりたいのだからなっ!」


 言いながら、リズはいつの間にか俺の手を握ってた。

 ちょっとビックリしたけど、とりあえず俺もそのまま握り返した。


「な、なあ……? やっぱりこれ、もう好きとかじゃなくて付き合ってるんじゃ……」


『さあ皆さん! いつまでもこんなところにいても仕方ありませんし、まずはパライソに戻りましょう! きっと他の皆さんもリズ様やリリー様の帰りを待ってます! それにもちろん、カノアさんのこともっ!』


「はうあっ!? そ、そうであったな……っ!? 先ほどの怪物の正体についてもすぐに調べなければならんっ! 式典が終わればゆっくり出来るかと思ったが、またやることが山積みなのだっ! さっさと戻るとしようっ!」


「もう眠い」


 そうして、俺達は水平線に明るく光るパライソの街に戻っていった。


 新しく分かったこと。

 気付いたこと。

 分からなくなったこと。


 色々あったし、凄く疲れたけど……。

 それでも、なんだかんだ結構楽しい一日だった気がする。


 でもとりあえず、明日は昼まで寝ていたい。 

 もしかしたら、またリズが起こしに来るかもしれないけど――。



 ☆☆☆☆☆


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