想定外の先客
『そんな……! どうして!?』
「めちゃくちゃ壊れてる……」
あのままずっと道を進んだ先。
結局特に問題とかもないまま歩いて行った俺とラキは、最後の最後でヤバイことになっていた。
そこに来るまでで一番ってくらいに分厚くて頑丈そうな大きな扉が、無理矢理こじ開けられたみたいにして〝壊されてた〟んだ。
『カノアさんは下がって! レーダーに反応――〝敵〟ですっ!』
「え?」
その時。
叫ぶようなラキの声が、耳の機械と目の前のオルアクアから同時に聞こえてきた。
オルアクアが背負ってる二つの棒から凄い勢いの風が出て、大きな紺色の体が俺を庇うようにして前に出た。
『戦闘モード起動。敵味方識別――完了。敵性物体とエンゲージ』
『来る……っ』
「うわっ」
次の瞬間。俺はついに踏ん張れなくて通路の後ろの方に吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばされたって言っても、そんなに派手に飛ばされたわけじゃないけど。
俺を庇ってくれたオルアクアは、ずんぐりした腕の両手首から二丁の拳銃を取り出すと、俺が起き上がるよりも前にそれを壊れた扉の向こうめがけて撃った。
凄い光と音が俺のすぐ近くで爆発して、俺は思わず四つん這いになって耳を塞ぐ。
そうすると、俺の頭の上にも砕けた砂とか石みたいなのがパラパラ降ってきた。
「なんだこれ……。石……?」
『警告。前方に敵性物体多数。機動スペースの確保を推奨』
『カノアさんはここにいて下さい! 絶対に出てきちゃダメですよ!』
「そ、そうする」
俺がその石をつまんでじーっと見ている間にも、ラキとオルアクアはこのよく分からない状況をなんとかしようと頑張ってた。
どうやってるのかわからないけど、オルアクアの足が地面からちょっとだけふわっと浮いて、滑るみたいにして扉から部屋の奥に飛び込んでいく。
多分、通路に立ってるままじゃ俺もいるし、狭くて大変だったんだと思う。
そしてそれを見た俺もラキの邪魔にならないように、崩れた頑丈な扉の影に隠れて部屋の中を覗き込んだ。
「うわ……めちゃくちゃだ……」
『宝物庫の中まで荒らされてるなんて……! 一体誰がこんな!?』
部屋の中を覗き込んだ俺の目に、バッキバキに壊された壁や、沢山の箱やガラスケースが飛び込んでくる。
そして、それと関係あるのかどうかも分からない〝赤い尖った石〟が、もの凄く大きくて広い部屋の中いっぱいに浮いてた。ヤバイ、キモイ。
『警告。四方に敵性物体多数。フレアネットの使用を推奨』
『ダメだよ! 今の〝君〟は遭遇戦を想定してない……闇雲に戦ったら絶対に火力が足りなくなるっ! でも大丈夫……僕に任せてっ!』
『了解。メインコントロール、完全手動モードに移行』
中に突っ込んだラキとオルアクアは、沢山の赤い石を引き連れて床や壁をぐるぐるに走り回る。
そうしている内に赤い石はオルアクアを先頭にした列みたいになって、なんかうねうねした渦の形に並んでいく。そして――。
『行くよ! 後部フレアネット射出――!』
『フレアネット射出』
集まりすぎて赤い帯みたいになったキモイ石の群れ。
それを引き連れて走るオルアクアが、いきなり背中の棒から青い火柱を出して一気に部屋の上めがけて飛んだ。
それを追いかけて赤い石の群れも一直線に縦になったけど、オルアクアはそこめがけて、背中からバチバチ光る〝漁師の網〟みたいなのを二枚重ねて撃つ。
「うわわっ……」
次の瞬間。大爆発が起きた。
扉の影に隠れてた俺はなんとかしがみついて耐えてたけど、その爆発は俺が掴んでる扉ごとぶわって吹き飛ばしてきた。
うわ、死んだ。
正直、その時は本当にそう思った。
だけど、そうはならなかった。
『大丈夫ですかカノアさんっ! すみません、あれ以外に方法がなくて……』
「……助けてくれたんだ。ありがとう……」
吹っ飛ばされた俺は、ちょっと固いごつごつした何かにペシって当たって止まった。目を開けたらそれはオルアクアの大きな手で、俺は赤ちゃんがされるみたいにオルアクアに抱っこされてた。
『言ったでしょう。貴方に何かあればリズ様が悲しみます。僕とオルアクアなら、この程度大したことじゃありません』
「うん、本当にすごかった。すごい」
『ま、まあ……当然ですねっ。ふふん!』
助けてくれたラキに、俺は何度も何度もお礼を言った。
実際、本当に死ぬかと思ったから……。
ラキはなんか恥ずかしそうな、変な声になってたけど、嫌そうじゃなかった。
『でも、まさか宝物庫がこんなことになってるなんて……。この敵も一体なんだったんでしょう……』
「リズの食材ももうないかな?」
『わかりません。ひとまず部屋の中を調べて――』
そう言って、オルアクアに抱っこされた俺と、中に乗ったままのラキは戦いの終わった宝物庫の中にガションガション歩いて戻った。
だけどその時。
今度はさっきのキモイ赤い石とは違う、別のことが起こったんだ。
「ホホホ……。まさか、
『っ!? 誰です!?』
「またショボショボ……」
突然聞こえてきたその声は部屋のずっと上から。
同時に声のする方を見上げた俺とラキの前に出てきたのは、うねうねした手足をくねらせて壁にくっつく大きなタコ……の下半身に、人間っぽい上半身の女の人だった――。
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