ごちそう回収依頼
「なんだこれ……すごい美味しいんだけど。泣きそうなくらい」
「ワーーーーッハッハッハ! そうだろうそうだろう!? どうやらカノアもようやくこの私の真の力を理解したようだな……! 大魔王である私は、知・勇・そして料理においても完璧なのだっ! 遠慮せずむせび泣くがいいぞ!」
「いつもながら素晴らしい腕前です、リズ様」
「うむうむ! ちゃんとラキの皿からはピーマンとニンジンを抜いておいたからな! 心置きなく食べ尽くすのだ!」
「ええっ……!? あ、ありがとうございます……」
テーブルの上にずらっと並べられたリズの料理。
それは俺と同じ場所で作ったのが信じられないくらいの、ガチプロ料理だった。
どれくらい美味しいかというと、俺のリアクションがもう少し派手だったらきっと目からビームが出たり、巨大化したり空を飛ぶくらいはしてたと思う。
そんなリズの料理を一口食べた俺はそのあまりのおいしさに無言に。
ラキはなんか恥ずかしそうに小さくなった。
そういえば、俺も子供の頃はピーマン無理だったな……。
「ふふ……いつもカノアには世話になってばかりだったのでな。今日はその礼も兼ねて、腕によりをかけて作ってみたのだ!」
「ありがとう。でも気にしなくて良いのに」
「リズ様の料理の腕は魔族一なんです。以前はプロのシェフもリズ様に師事していた程なんですよ」
「なにそれすごい。そして本当に美味しい」
「むっふふふふ……! それ程でもあるぞ!」
リズの作ってくれたパエリアとかムニエルとかサラダとか。
どれも本当に美味しかったので、俺は遠慮せずパクパク食べた。
さっきまでツンツンじとじとしてたラキも今はすっかりご機嫌で、やっぱり美味しい食べ物の力って凄いなって思った。いや、もしかしたら料理じゃなくてリズがいるからかもしれないけど。
俺も結構料理はする方だと思ってたんだけど、リズのと比べるとなんか恥ずかしくなってくるな……。
「ところで、今日の予定は? またサメ島に行けばいいのか?」
「そういえばまだカノアには話していなかったな。今日はちょっと〝変わったこと〟をするつもりなのだ! ラキはその手伝いというわけだな!」
「はい、リズ様」
「そうなのか。何をすればいいんだろ?」
そう尋ねると、リズは手首に巻かれたなんか邪悪そうなブレスレットから変な光をぴゃーっと壁に当てて、光る文字とか地図とかを浮かび上がらせた。
「うわ、すごい」
「カノアよ……。貴様も今度パライソで人間と魔族による盛大な式典が開かれるのは知っておろう……?」
「さっぱり知りません」
「知らんのか!? ま、まあとにかくあるのだ! それでな、大魔王である私は当然その式典に招かれている! なんといっても大魔王だから!」
「今回の式典は千年続いた人と魔の戦争終結と、大洪水からの復興を祝う名目で催される予定です。魔族の頂点に立つ大魔王であらせられるリズ様は、式典における最高ランクの主賓として扱われています」
「すごい……。さっきからそれしか言えない」
「式典にはパライソにいる聖女や議員共だけでなく、他の国や土地の指導者共も来ると聞いている。この私をもてなすに相応しい、さぞや盛大な物になるであろうなぁ……! クックックック……!」
いつの間にかそんなことになってたのか。
確かに最近、パライソの外から来た見慣れない船もよく見た気がする。
大洪水のすぐ後は他の街との連絡手段もなかったみたいだけど、リズや魔族の人達がラジオと同じような遠くの人と話せる機械を作ってくれて、結構すぐにそのあたりはなんとかなったって聞いてる。
「うむ。だが私は式典の主賓であると同時に、魔族代表として人間共をもてなす準備もしなくてはいかん。当然、そのレパートリーは多数用意してあるが……その中の一つとして、魔族が誇る究極の食材を、魔族最強の料理人であるこの私が調理するという、まさに至高の料理を人間共に振る舞ってやろうかと思い立ったのだ!」
「すごくいいと思う。俺も食べたい」
「だがしかーし! 実はここで一つ問題があるのだ。最強の料理人である私はこうしてピンピンしているからいいのだが、肝心の食材がなくてな。魔族が誇る究極の食材は、あの大洪水の際に魔王城と共に海中に没してしまった……」
「く……っ。申し訳ありませんリズ様……僕がもっとしっかりしていれば……!」
「むぅ……そうだったのか。俺も人や動物は助けられたけど、そういうのは全然分からなかった……」
「良いのだ二人とも! 食材なんぞ命に比べれば安いもの! それに心配せずとも、究極の食材は海の底に〝沈んだだけ〟で失われてはおらん!」
「む……つまり?」
そのリズの話に、さすがの俺でもキュピーンとひらめいた。
なるほど、じゃあ今回俺がやることっていうのは……。
「つまり! カノアとラキの二人で、海の底に沈んだ魔王城から究極の食材を回収してきて欲しいのだ! どうだ、完璧な作戦であろう!? フゥーーハハハハハハ!」
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