第2話 出会い
俺はそうやって土日は公園にいたりする。いるのはタダだからだ。人間観察ができるし、コロナ感染のリスクが少ない。
俺が座っているベンチにもう一人男が腰かけた。別に取り立てて書くほどもないような普通の人だ。清潔感のある服装。下はジーンズで上はチェックのシャツだけどダサくはない。
でも、失礼だから顔は見ない。
何となく視線を感じる。俺の方を見てる気がする・・・視線の先に子どもが遊んでるんだろうか。
「お父さんですか?」
「はい?」
急にその男が話しかけて来た。40くらいで俺よりちょっと若い。眼鏡をかけていて、インテリ風だ。その人も誰かのお父さんなんだろうか。他にも男がいるのに、何で俺に話しかけて来たんだろう。不思議に思う。
「ええ・・・まあ」
「お子さん、どの子ですが?」
「あっちにいる、中学生です」
「ああ。大きいお子さんなんですね」
「ええ。まあ。公園に来るような年じゃないんですけど・・・」
俺はなぜ話しかけられているのかわからない。
宗教の勧誘や投資話だろうか。
男は黙る。
「お近くなんですか?」
「そうでもないです。歩くの好きなんで・・・結構遠くから来てるんです」俺はとっさに胡麻化す。
「あぁ・・・そうですか」
「お子さん待ってるんですか?」俺も尋ねる。
「いや・・・私は違うんです」
「じゃあ、、、」
何をしに来てる人なのかピンと来ない。
「あなたのことがすごくタイプだったんで・・・ノンケかもしれないですけど、思い切って」
「はい?」俺は聞き返す。
「わざわざ食われに来るノンケもいるっていうので・・・どうかなと思って」
「はぁ?」
「いや、すいません・・・何でもないです」
その人はバツが悪そうにその場を立ち去ろうとした。
「ま、待ってください」
「え?」その人は嬉しそうだった。
「ここは・・・もしかして・・・」
「はい。ゲイが待ち合わせでよく使うベンチです」
俺ははっとした・・・周りの人からもそう思われていたのかもしれない。
「昼なんで・・・公園ではハッテンはしませんけど、あっちのトイレとか木陰とかに死角があるので・・・」
「ああ・・・そういうことですか。せっかく教えていただいてあれなんですけど、さすがに初対面でそれは無理なんで・・・」
「じゃあ、連絡先交換しませんか?」
「はぁ・・・」
「Lineよかったら」
俺は断れなくて連絡先を交換してしまった。相手がすごいイケメンだったりしたら興味を持つ可能性はあるかもしれないけど、その人は普通の外見だった。
「お仕事、何されてる方ですか?」俺は尋ねた。
「私は弁護士です」
「名刺・・・もらえますか?」
「いいですよ」
その人は名刺を差し出した。外資系の弁護士事務所に勤めているらしい。
「結婚はされてるんですか?」
「ええ。してます・・・子供もいて。でも、男性に興味があって」
「家はこの辺なんですか?」
「いいえ・・・家の近くだと人眼が気になるので、知り合いがいなそうなところに遠征してるんです・・・」
「ああ・・・そうですか」
「さっきも言いましたけど、すごいタイプで。お名前聞いていいですか?」
「
「添田さん・・・イケメンですね」
「いやぁ・・・そんなことありません」
「今、いくつですか?」
「もう50なんですよ」
「若く見えますね」
「いいえ・・・おじさんですよ。あなたはまだ若いでしょう?」
「42です・・・同じくらいかと思いましたよ。ふだんは何をなさっている方ですか?モデルとか?」
「まさか!ちっちゃい会社のサラリーマンです」
「そうですか・・・あなたなら、モデルでもおかしくないですよ」
「まさか・・・」褒められすぎて怖い。
「体鍛えてますよね」
「はい。筋トレが好きで」
「ああ、いいですね。私もジムに通ってるんですけど、続かなくて」
男は俺をなめるように見る。
弁護士で、妻子がいて、公園で男をナンパ。職場にバレたら困るんじゃないだろうか。
「今度、食事でもどうですか?」
「ええ。ぜひ」
俺は弁護士と言う肩書に惹かれて承諾してしまった。別に婚活女子でもないのに、弁護士と知り合って何になるって言うんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます