公園

連喜

第1話 観察

 公園っていうのはおぞましい場所だ。

 欲望が渦巻く場所。

 変態たちの脳内で、次々と弄ばれる幼い子どもたち。

 昆虫のように羽や手足をもがれて、ばらばらにされて踏みつぶされる。

 次々と。

 他にかわいい子がいたら、その子が次の被害者になる。

 がっと腕をつかんで引き倒す。

 妄想は自由だし、罪にはならない。


 昼間の公園は若いお母さんたちと子供たちが遊んでる。

 それを獲物を狙う鷹のような目で見つめる変質者たち。

 やつらはベンチに座って、子どもたちをいつまでも眺めている。

 汗だくになって、まるで子どものお父さんのようなふりをして、その場に居座り続けている。


 かくいう俺も何時間も公園にいる。子どもが一人になるかどうかを検証しているんだ。1人で来る子どもはやっぱりある程度大きくなっている。自転車でやって来て、誰か知っている子がいないかと思って探している。今はみんなスマホを持っているから、もともと約束しているのかもしれない。彼らは花壇の縁などにカバンを置きっぱなしにしている。カバンからは携帯と財布がはみ出している。傍目でハラハラするほど無防備だ。


 彼らが遊びに夢中になっている間に、持ち去るのは簡単に思える。

 子どもは経験値が足りないから、自分たちが置き引きや、性被害に遭うなんて考えない。


 俺が子供の頃は携帯なんてなかった。学校が終わったら公園で待ち合わせしていたり、友達が自転車で迎えに来たりしていた。金を持っていたとしても200~300円くらいだろうか。それに中学になったら、もう公園には行かなかった。


 でも、今の公園は中学生がいる。自転車で集まって来て、ゲームしたり、サッカーしたりして騒いでいる。男も女もいる。髪を染めてる子もいる。ヤンキーになりかけているんだろうか。公園で走り回っているうちは、まだかわいいかもしれない。あの中に何組か付き合ってるカップルがいるんじゃないかと思う。子どもだってやることはやってる。そもそも相手がいるんだから、いくらでもチャンスがあるはずだ。

 

 俺は公園内を観察する。丈の短いトップスを着ている女の子は、ジャングルジムなんかに登っていると、下から中が見えている。盗撮好きな人にはたまらないアングルだろう。スカートからパンツが見えている子もいる。あまり近くには行けないのが残念だ。小さい子はすぐ下に親がついているから、一人で真下に立っていたら気味悪がられるだろう。


 何時間でも飽きずにベンチに座っていられる。俺みたいな変態が隣のベンチにもぞろぞろ並んでいるのは、ぞっとするほど不気味な景色だ。俺が一番まともだと思いたいけど、他の人たちと何も違わないのかもしれない。

 

 しかし、俺には前科はない。他の人たちは知らないけど。



 




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