第4話 蘇るトラウマ
有名歌手のスキャンダルは致命的だ。ましてや強姦されたとなるとダメージは計り知れない。もちろん同情してくれる人は多いだろう。だが好奇の目で世間に晒される。とく清純歌手が売り物にしている統子は致命的だ。超売れっ子歌手となれば、そんなスキャンダルは歌手生命に関わる一大事である。そればかりか歌手としてより女としてこれ以上の恥辱はない。そんな事を世間に知られるくらいなら死んだほうがマシだ。統子も忘れていた。それは所属する音楽事務所にも絶対に言えない秘密であった。トラウマとして統子の心の中には残っている。忙しさで忘れかけていたものが再び掘り返された。あまりのショックに統子は、急病と称して全てのスケジュールをキャンセルした。
統子は俺に相談するしかなかった。統子はひと目を忍んで俺の所に相談に来た。俺は怒りで煮えくり返った。やはりあの時に警察に言うべきだったのか。しかしあの時は統子のことを考えて、奴等を黙らせ全てが終わったと思っていたのに。
その三人は調子に乗って多額の金を要求してきた。俺はどうしたら、奴等を完全に黙らせられるか考えたが結論が出ない。
統子が有名人でなければ闇から闇へ葬ることは出来るのだが。あんなダニは一度金を払ったら最後、次から次と要求してくるに決まっている。もともと俺はそのワルだった。あいつ等の考えている事は手に取るように分かる。考えたあげく、統子に俺の案を説明した。その結果奴等を誘い出すことにした。誘い出す為にはどうしても統子本人に来て貰うしかなかった。今や有名人だ。一目を忍んで行くにも二度と見たくない連中と顔を合わせるなんて、これ以上の恐怖はない。しかし強請りを終わらせるにはこれしかないと統子も覚悟した。勿論、要求された金は用意していない。奴等はまんまと指定された夜の公園にやって来た。統子は三人組の前で震えていた。『俺が付いているから』そうは聞かされていてもやはり不安だっただろう。またあの悪夢が統子にトラウマとなって蘇って来た。
つづく
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