第3章 黄色い光 (月川タクト編) 前編
秋。作曲も中盤の――はずだった。
三蜂レンカのせいで月川くんが……
六郭星学園 Eクラス教室
柊木アイ
「真瀬さん…大丈夫?」
真瀬志奈
「はい……なんとか…。」
来川ナナ
「お父さんが言うには一時的だと思うとは言っていたけど……あの様子じゃあ…」
私たちは月川くんが目が覚めたが、記憶が無いと言うのを鹿崎先生に聞き、病院に向かった。
来川医療センター 月川タクトの病室
真瀬志奈
「月川くん、私です。真瀬志奈です!わかりますか……?」
月川タクト
「…………。志奈……さん。」
柊木アイ
「タクトくん!僕たちのことがわかるの!?」
月川タクト
「……うん。」
月川タクト
「……。」
真瀬志奈
「月川くん……。」
六郭星学園 Eクラス教室
真瀬志奈
「心ここにあらず……でしたね。」
柊木アイ
「うん……これじゃあ作曲どころじゃないね……。」
真瀬志奈
「はい……私も辛くて……。」
あれ以来、三蜂レンカから嫌がらせの手紙が毎日届いている。「あきらめろ」、「手を引け」など。
柊木アイ
「許せないね……。あいつ。」
真瀬志奈
「はい……。」
そこに星野さんがやって来た。
星野シキア
「ねえ、ナナ。1つ確認して欲しいことがあるんだけど。」
来川ナナ
「え?……何?」
星野シキア
「私、あのファイルを見たんだけど、タクトの母親と犯人の奥さんって来川医療センターで解剖されているらしいの。」
来川ナナ
「えっ、そうなの?初めて知ったわ……」
星野シキア
「その2人の顔写真を見たけど、似てるのよ。顔が。」
来川ナナ
「顔が……?」
星野シキア
「もしかしたら、タクト救う唯一の方法があるかもしれないの。2人のこと調べられない?」
来川ナナ
「うーん……血縁関係までは調べられるけど……」
柊木アイ
「だったら僕に任せてくれないかな?あまり気は進まないけど……親に頼めばなんとかなると思うんだ。警察とかのツテもあるからね!ミカ!」
真瀬志奈
「えっ、古金さん?」
古金ミカ
「あちゃー!見つかっちゃったか!まあ良いよ。私も許せないところもあるし、ツテも同じくらいあるから!」
真瀬志奈
「皆さん……ありがとうございます!」
月川くん、みんなに愛されているんだな……私も今できることをやらないと!
六郭星学園 音楽室
月川くんがいない時は1人で作曲を行なっている。時々、鹿崎先生や笛花先生をはじめ、星野さんがアドバイスを教えてくれる。
今日は星野さんがつきっきりで教えてくれている。
星野シキア
「……そう。そんな感じ、タクトのやつもこんな感じの曲調にするはず……。」
真瀬志奈
「はい……。こうですね。」
星野シキア
「えぇ、そう。その調子。」
真瀬志奈
「はい……。」
星野シキア
「ふう……少し休憩しましょう。」
真瀬志奈
「はい……。」
星野シキア
「…………。」
真瀬志奈
「…………。」
沈黙が続く。そんな沈黙を紛らわす為に、音楽室のテレビをつける。
アナウンサー
「本日のニュースです。本日明朝に六郭星学園付近で女性が何者かに暴行を受ける事件が発生しました。六郭星学園付近では10件以上の似たような事件が発生しております。女性の方はもちろん男性の方も注意をしてください。」
はぁ……また暗い事件……こんなことをするなんて……
星野シキア
「酷いニュースね……」
真瀬志奈
「全くですね……。」
そう言って……再び沈黙が走る。
そうだ、せっかくだから月川くんとの出会いを聞いてみよう。
真瀬志奈
「あの、月川くんって孤児院にいる時はどんな人だったんですか?」
星野シキア
「孤児院にいる時ねえ……タクトのことを知るきっかけになったのは遊園地の時ね。」
真瀬志奈
「遊園地?もしかして、月川くんが声優さんに曲を作りたいって思うようになった場所のことですか?」
星野シキア
「そうよ。あそこで声優さんが着ていた衣装が若竹色だったの。そこで若竹色が好きになったみたいね。」
真瀬志奈
「そうなんですね。」
星野シキア
「ただ、タクトはそこで帽子を無くしてね、一日中探しても見つからなくてガン泣き。その時の帽子も若竹色だったわね。」
真瀬志奈
「若竹色……。」
星野シキア
「タクトは若竹色が本当に好きでね、あれ以来文房具とかも若竹色に統一するほど。まあこれでも私も若竹色が好きだから、少し羨ましいかも……」
真瀬志奈
「そうなんですね。星野さんも若竹色が好きだったんですね。」
星野シキア
「ええ、莉緒とのペアになった時のボールも若竹色だったから嬉しかったわ。莉緒とも仲良くできているし。」
真瀬志奈
「それは良かったです!これからも莉緒をよろしくお願いします!」
星野シキア
「もちろんよ。それじゃあそろそろ再開しましょうか。」
真瀬志奈
「はい!」
来川医療センター 月川タクトの病室
あれから数日、私は月川くんの病室にいます。月川くんはまだ心を閉ざしたままだった。
真瀬志奈
「月川くん……。」
月川タクト
「…………志奈さん……。俺……あの記憶だけは思い出したくなかったんだ……。」
真瀬志奈
「それを……三蜂レンカが……。」
月川タクト
「……俺はどうしても許せないんだ……けど……行方不明で……どうすればいいのか…。」
真瀬志奈
「……。」
来川医療センター 玄関前
月川くんはあの状態のまま……私はどうすればいいのか……行方不明になっている犯人を見つける方法も難しいのに……
真瀬志奈
「はぁ…どうすればいいのかしら……」
その時、私の目の前が眩い光に包まれると同時に大きな爆発音が鳴る。
真瀬志奈
「な、何!?」
??
「やぁ、真瀬志奈さん。お会いできましたね。」
真瀬志奈
「あなた…私の名前を何で知ってるの?というよりあなたは?」
虹谷サイ
「失礼、僕は虹谷サイ(にじや さい)。僕は今とある調査をしていてね。」
真瀬志奈
「ちょ、調査?」
虹谷サイ
「はい。月川タクトはとある容疑があってね。」
真瀬志奈
「容疑って……」
虹谷サイ
「というわけで、彼を連れ出すよ。」
真瀬志奈
「な…!やめてください!!」
虹谷サイ
「どうして止める?彼は容疑者なんだよ。それとも彼を庇うのかい?」
真瀬志奈
「あの状態で連れ出したら月川くんはまた苦しみます!これ以上苦しませたくないです!」
虹谷サイ
「…………。」
真瀬志奈
「あなたがなんなのか知りませんが、あなたが月川くんを連れ出すなら私は許しません。帰ってください。」
虹谷サイ
「……君は彼の何なんだい?」
真瀬志奈
「わ……私は……。」
私は…………月川くん……タクトくんの……
真瀬志奈
「彼女です…!私はタクトのことを愛しています!」
虹谷サイ
「…………。そうか。わかったよ。君の好きにすれば良い。」
そう言って、再び光に包まれ、虹谷サイは消えていった……
真瀬志奈
「なんなの……今のは……。」
……ただ、これでわかった……私はタクトが好きなんだって……。今までの気持ちは恋心だったことに気がついた。
真瀬志奈
「助けなきゃ……タクトのことを……。そして、あの曲を完成させなきゃ……!」
六郭星警察署
翌日、私は夜坂さんと一緒に三蜂レンカの嫌がらせの手紙について相談をしに行った。
女性警官
「なるほど……確かに悪意があるわね。」
真瀬志奈
「はい…もう心がボロボロになってしまって…」
女性警官
「もう1人被害者がいて……名前が月川タクト…ねえ…月川タクトか…。わかりました。なんとか対応します。」
夜坂ケント
「すみませんが、よろしくお願いします。」
女性警官はこくりと頷き、席を離れた。
夜坂ケント
「これで少しは落ち着ければいいのだが……」
真瀬志奈
「そうですね……。」
夜坂ケント
「ふぅ…学園に戻るか。」
真瀬志奈
「はい。」
六郭星学園 Eクラス教室
警察署を訪れた数日後、私は柊木さんと古金さんに呼び出された。そこには星野さんもいた。間を空けないかのように柊木さんが口を開く。
柊木アイ
「真瀬さん、この間の話だけど少し重たくなりそうなんだ。覚悟はできてるかい?」
そう言われると私はすかさずに覚悟を伝える。
真瀬志奈
「大丈夫です。覚悟はできてます!」
柊木アイ
「わかったよ。言うね……調べたらタクトくんのお母さんと犯人の奥さんは姉妹だったんだ。」
真瀬志奈
「姉妹……。」
柊木アイ
「誤見あかりあ(あやみ あかりあ)。タクトくんのお母さんの名前。犯人の奥さんは誤見めたるよ(あやみ めたるよ)って名前だったんだ。」
真瀬志奈
「誤見……?どこかで…?」
古金ミカ
「ところがどっこい。それだけならまだどうしたで済むけど、犯人がぶつけた車…外国車だったの。」
真瀬志奈
「外国車?」
柊木アイ
「知り合いの警察によると、警察の資料ではぶつけた車は日本車になっているんだ。」
真瀬志奈
「それって…どうしてそうなっているんですか?」
古金ミカ
「調べてみると、事故の当日に廃車にした車はこの辺りだと1台だけ。それも外国車。その上目撃したのは警官1人だけ。」
真瀬志奈
「それじゃあ……もしかして…。」
星野シキア
「冤罪の可能性もある……?」
柊木アイ
「その警官が嘘をついているかもしれない…!」
古金ミカ
「しかもその担当警官の名前は誤見きらめか(あやみ きらめか)。」
真瀬志奈
「……!」
柊木アイ
「彼女も姉妹で、もしかすると家族ぐるみの計画の可能性も高い。今、知り合いの警官に調べてもらってる。」
真瀬志奈
「それじゃあ犯人だった方は……」
星野シキア
「自分がやってもないのに犯人に仕立て上げられ、家族から絶縁される…そりゃあ狂うわよ。」
真瀬志奈
「そ……そんな……。」
柊木アイ
「担当警官は今現在の行方はわからない……。調べたら写真はあるみたいだからそれもまとめて調べてもらっている。」
真瀬志奈
「担当警官がわかれば何があったのか、わかるんですか……?」
柊木アイ
「確実ではない……でもタクトくんを救うためには可能性は低くても助けなきゃ!」
真瀬志奈
「柊木さん…!」
古金ミカ
「ちょっと〜。アイだけにいい思いはさせないよ!私も力になるわ!」
真瀬志奈
「古金さん…!」
星野シキア
「……。」
真瀬志奈
「みなさん……ありがとうございます!」
そう言ってその日は解散した。
六郭星学園 志奈・シキアの部屋
星野シキア
「……タクト。救えるかしら。」
真瀬志奈
「大丈夫です。タクトはきっとあの時のタクトに戻るわ!」
星野シキア
「えっ……タクト?」
真瀬志奈
「私、気づいたの。この気持ち。私はタクトと一緒にいたい。そう思ったの。」
星野シキア
「そう…。いいわね。」
真瀬志奈
「星野さんはタクトを信じないの?」
星野シキア
「いえ……ただ夢を持って羨ましいだけ……。」
真瀬志奈
「……夢?」
星野シキア
「…ねえ、少し勝負しない?私が出す問題に答えてくれたら私の過去のこと教えてあげる。」
真瀬志奈
「……わかった。私も知りたい。」
星野シキア
「いいわ。じゃあ勝負よ。」
勝負をした結果。私が勝った。
星野シキア
「強いわね。私の負け。教えてあげるわ私の過去……。」
星野さんに勝った私は過去の話を聞く。
星野シキア
「覚えている?私と初めて会った時のこと。夢みたいなことを言うなって言ったこと。」
真瀬志奈
「ええ…。覚えてるわ。」
星野シキア
「私ね、タクトと一緒で声優さんに曲を作りたいって夢を持っていたの。ただ…その夢を潰された。私は音源を作り、応募した。でもね、審査員は譜面も見ずに破り捨てたの。」
真瀬志奈
「譜面を…!?酷い…!」
星野シキア
「それ以来、信じられないの…。夢を叶えられること。信じられそうにない…。」
真瀬志奈
「星野さん…。」
星野シキア
「タクトのことは任せるわ……。私にはこれが精一杯。」
真瀬志奈
「…………。」
ふと、目をやると若竹色のボールが目に入った。ペアを組むために引いたボールだ。
真瀬志奈
「タクト……。待っててね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます