第2話 再誕の産声

 目を覆うほどの眩い光の先に見えたものは、知らない天井と知らないおっさんだった。



 おっさんが私ではない名前を呼び、肩を震わせて歓喜に声を上げている。

 きっと無条件に愛される。まるでそれが約束されているかのような安堵感に私は笑みを浮かべて声を上げようとするのだが、それは声にならず口を小さくモゴモゴと動かしているだけ。



 思い出せないが、前の私もこのような感覚だったと思う。



 確信していた。

 ここは異世界なのだろう。

 そして体を動かすことができない感覚から、今の私は可愛いの原点、赤さん。

 ついにやった。私は現代の私のまま、喜んだ。



 愛されるよりも、目の前のおっさんがどれだけ喜んでいようとも、私はそれ以上に心を震わせる。

 赤さんの姿でなければ小躍りの1つでも披露したいほどだ。いや、可愛い修行の際に何度も練習した可愛いダンスでも1つ。



 ああ、どうしてもこの感動を誰かに伝えたい。心の奥底から湧き上がる激情を何かにぶつけたい。

 私が出来ることは何か。そんな考えもままならないが、それでもこの世界に生まれ落ちたことを誰かに証明したかった。



「は~いよちよち、パパでちゅよ~――」



 もう耐えられない。

 何よりこれ以上心にこれだけの熱量を魂に留めておけない。



 私はそう出来ているのかはわからないがきっと大きく息を吸った。

 心に渦巻く熱を、魂を鷲掴みにしている感動を、それらすべてを放出するように口を開く。



「おんぎゃぁぁっっ!」



「――」



 まさに祝福を受けた天使の福音。

 世界を目覚めさせるような私の産声は、私を抱き上げたパッパの右鼓膜をぶち破り、「ぐぉぉぉっ」と私を抱き上げたまま蹲るパパ以上にこの世界に轟いていた。



 こうして私は、この世界に生を受けたのだった。

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