第59話 狙われる身


「みや」


「レッドドラゴン__レベル90、弱点は口の中の火を形成する喉の奥に垂れ下がってる物」


「????」


「マスター、たぶん喉ちんこの事だ」


「あぁ、喉ちんこか」


「わかった、今度から喉ちんこってぃぅねっ」


「いや、みやは言わなくていいからね」


「そうだな、これに関してはマスターの言う通りだ」


「?……喉ち__」


「__さて、マスター何かあった時は任せて先に行け」


「うん!任せて」


お食事中のレッドドラゴンへ走って行く。


そもそもドラゴンと言っても見た目は真っ赤なティラノサウルスだ。

元の世界に出たらそれこそ某映画の様にパニックになるだろう……血の滴る多くの歯は恐怖心を煽ってくる。


だが、今の俺は恐いとは思わなかった。


昔ならおしっこちびってでも逃げ出しそうだが……


「くらえ!」


マスターは手榴弾をレッドドラゴンに向かって投げるが__


「ギシャァァァア!」


これが獣の本能なのか、手榴弾が爆発する前に後ろを向き尻尾でボールを打つ様な感覚で横に弾いた。


「!?」


少し遅れ轟音と共に衝撃が走り周りの木々を騒がしくする。


威力は充分、レッドドラゴンは衝撃に耐えれず態勢を崩しす!


「うおおおおおおおおお!」


マスターはその隙を見逃さずに助走をつけて飛び込み大剣を横っ腹に突き刺した!


「ガァァァァァア!?」


だが痛みはあれど致命傷ではない。

レッドドラゴンは立ち上がり剣と共にマスターを振り払った!


「くっ!」


そしてその巨大な口を開ける。


真っ暗な喉の奥から光が見えたと思えば火炎放射器の様な火が放たれた!


「これくらいなら!」


マスターが弧を描く様に走るのに合わせてレッドドラゴンの首も傾いていき火が追いかけている。


「火には水だ!」


ポケットから取り出したのは手のひらボールサイズの黒く赤い球体。


それを手に持ち少しずつ前に詰めていき最後は不意をつくために緩急をつける様に一気に距離を詰め____


「消えろ!!」


球体を口の中へ勢いよく投げ込む。


「ガッ!?」


するとレッドドラゴンの口の中から大量の“赤い液体”が噴出する!


マスターの使用した物は今まで狩ってきた“魔物の血”……大量の血をマスターの能力でかなりの圧力をかけて球体に閉じ込めていた物だ。


まるで赤いペンキの様……その水分量により火は消え、レッドドラゴンは口を閉じようとするが____


「させない!」


もはや特技となった土の杭……名前を『大地の怒り』としようか……それを使って地面から飛び出た4本の杭が綺麗に上顎に刺さった後下に伸びてつっかえ棒の様になる。


「終わりだ!」


「ガッ____」


大剣は姿形を変え長い槍になり見事弱点を貫いた……


「ガッオッ……アッ……」


本当に弱点なんだな……レッドドラゴンは魚をシメる時の様に目をグリグリとさせた後、痙攣して動かなくなった……


「どうだ、みや」


「ぅん、だめみたぃ……」


「そうか……」


あれからマスターのレベルは100。

それから上がらなくなったのだ……カンストしたのか?いや、でも俺のレベルは今700前後……100以上を叩き出してると言う事は何か条件があるのか?


「と、とりあえずレッドドラゴンを捌こうよ、他の魔物が来る前にさ」


「そうだな」


「ぅんっ」



もうみんな魔物の解体作業には慣れたな。


ちなみにだが、巨大な冷蔵庫をマスターに作ってもらいその中に素材の為に狩った魔物の肉がたくさん保存されている……人間贅沢になっていくものだ……料理といっても焼くか煮るだけなのでそろそろ調味料とか香辛料とか欲しい。


「またお肉いっぱいになっちゃったね」


「あぁ」


もっとも料理事態、誰もしないから調味料があった所でどうすればいいかわからないが……


「いっとき狩るのをやめとこうか」


「そうだね……まさかお肉を処理するのに時間がかかるとは思ってなかったよ……」


この一頭だけでも軽く1ヶ月分の肉が手に入る。

レベルが上がるにつれて相手が大きくなって行くので日に日に狩る魔物の数が減っていく。


肉は捨てればいいのだが……もったいない。


「さて、じゃぁ家に__」


ん?


「__待て、マスター」


「?、どうしたの?」


なんだ、この感覚……どうやらみやも気付いたみたいだ。


「ぁれ?この感覚っ」


「みやも?何か……これは」


遅れてマスターも気付く____


「!?」



突如3人の頭上から轟音轟く雷がこちらを目掛けて落ちてきた。



「っ!」


その落雷に反応したのは俺の身体。


「んにゃ!?」


「うあ!?」


気が付けばみやを蹴り飛ばしマスターの首根っこを掴み投げ飛ばした!


次の瞬間____





雷が直撃した。




数キロ先で落ちても聞こえる轟音が直撃を受けた後になって鼓膜を破ろうとしてくる。



マンタとみやは間一髪、雷を逃れたが……



「ネバーさん!!!!!」


状況を察したマスターはすぐに起き上がり声を上げた。


「大丈夫だ、少しピリッとしたがな」


焦げた臭い。


真っ黒になった地面、雷の熱に耐えられなくなり燃えている周りの木々。


「ぃたぃ……」


「すまないな、みや、緊急事態だったから蹴り飛ばした」


「マンタには優しかったっ……」


「そう言うな、それよりこれは?」


「超級魔法の『落雷』だょ」


「一瞬で見えたのか?」


「ぃや?ぅえの雲を見たらそう書ぃてる」


そう言って上を指を指す方向を見ると先ほどまで晴れていた所は黒い雲に覆われ、その雲からいくつもの赤白く不気味に光る魔法陣が展開されている光景が広がっていた。


「つまり、私達は何者かに攻撃されたと言うことか?」


「ぅん」


それを聞きマンタは慌てる。


「ち、超級魔法って、魔王様レベルか何人もの人達が一丸となって繰り出す最強の魔法だよ!?どうして僕たちが____は!?」


今更だが理解する。

ここ最近便利な生活を送り生きてきたので薄れていたが俺たちは魔王を倒した“犯罪者”だ。


「ここを離れるぞマスター」


「うん」


俺たち3人は木々を避けながらとにかくまっすぐ進んでいく。

そちら側に敵が居るかもしれないが、その場で止まっておくよりも良いはず……


「だめだ!全然離れられないよ!」


だが頭上の雷雲は俺達を逃がさない。

どれだけ走ってもピッタリと捉えているのだ。


「みや、次に撃ってくる時間は?」


「40秒後だょ」


「よし、マスター、後から追いつくからそのまま真っ直ぐ走っといてくれ!」


「ネバーさんは!?」


「私の事は考えるな」


そう言って高くジャンプをする。


「そこか!」


遠くで何かが動いた!


着地してすぐに近くにあった大木を蹴り折る。


「一度やってみたかったんだよな」


そのまま投げ__


「秘儀、◯オパイパイ走法」


勢いよく飛んでいく木に乗り移動して行った。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る