第58話 それぞれの秘密。


「……本当に望んだ時に来るんだな」


誰も気配のない密林の奥深く、静寂が支配する中で、ネバーは突然現れた気配を感じ取った。


「そりゃ、望んだんだから来るでしょ、そう言う約束だし」


後ろから現れたのは白い神父服を来た青年。


「神の使徒……」


「どう?あれから順調に進んでる?」


「以前のじいさん口調はどこいった?」


「いや〜、やっぱり身体が若いってのは心も若くなるね、どこも痛くないし」


「……まぁいい、それよりも答えてもらうぞ、今回みたいに農場とやらで育った人間じゃなく、本当にこの世界で昔から住んでいる人間に会うにはどこへ行けばいい?」


「おぉ、それは確かに確信的でいい質問だ」


「答えろ」


「だけど良いの?それっていきなり物語の終盤の前までぶっとばして行く行為かもよ?」


「神のお前達にとっては物語かもしれないが私にとってはどうでもいい事だ、お前達に敷かれたレールを行くつもりは無い」


「そ、まぁいいけど……」


「それで?」


「そうだね、少し長くなるし君以外の友達からしたら過酷な道になるだろうからオススメはしないけど約束だから答えないわけには行かない」


「しつこいぞ、聞いたことだけ答えろ」


「…………ここから西へ真っ直ぐ……ひたすら真っ直ぐ進んで行けばいい、どんなに長くてもひたすら、ね」


「そこに居るのか?」


「あぁ、そこに居るよ……人間が」


それを言うと神の使徒は魔法陣を展開してどこかへ消えていった。


「やっと……会える」


神の使徒はオススメしないと言っていた。


それは単にマスターやみやの戦闘能力が足りないからだろう……レベルを上げ、武具を作成し、万全の態勢を整えて俺たちは____


「人間に会いに行く」


____________



________



____



「ふん!ふん!ふん!」


自分の作った拠点の前で一生懸命大きな剣を振るマンタティクス。


「ねぇ、どぅして毎日剣をふってるのっ?」


「ん?」


「そのこぅどうってレベル上げには不向きだょっ?」


「うーん、そうかもしれないけど……」


「?」


マンタは頬をかきながら少し恥ずかしそうにする。


「何と言うか……昔は持てることさえ出来なかったこんなに重たい剣が最近では持てる様になって嬉しいんだ」


「ふ〜んっ?」


「変な話だけどさ……出来なかった事が出来るようになるって言うのはすごく嬉しくて、生きてるって感じがするんだ」


「ぃきてるっ?」


「うん、自分の時間が進んでることを実感してる」


「ふ〜ん?」


「僕はいつか____」



マンタは剣を構えて横に振る。



「いつの日か、ネバーさんと肩を並べて戦うんだ!」


____________



______



____


「…………」


みやの“眼”にはいろいろな物が見えている。


それは心臓、や脳、あるいはそこに到達するための弱点……だけど、この2人の弱点は“同じで不確定要素の物”


「…………心?」


マンタティクス、そしてネバーの弱点は“心”


「わかんなぃなぁ……」


きっと、それをどうにかすれば何かに繋がるのだ……だが、心と言うものは世間を知らないみや……いや、知っていたとしても分からない人は多いだろう。


「ぁ、虫」


一人で座ってそんな事を考えているとどこからか蝶のような小さな虫が近くに止まった。


「マダラヌクマミ……弱点は翅……」


そしてみやはその蝶の翅を掴み拘束した後__


「ぃただきます」


小さな女の子の口でまだ生きている蝶を丸呑みした。


「ン……ごちそうさま」


みやのレベルがあがる。


生きている物を生きているうちに自分の体内に入れる。

それが一番レベルがあがるのに効率が良いのをみやは知っている……そしてもう一つ__


「人間が一番レベルがぁがりやすぃっ」


自分の紋様を服の上からさする。


「そぅですょね……まぉうさま」


そう言うみやは蛇のような笑いを浮かべていた。


__________



______



____


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る