第57話 レベル上げ
滝しぐれの下の清泉に集まっているのは、頭部に小さな角があり、鎧のような薄緑の苔をはやした鱗を持つ全長4メートルほどで四足歩行の年老いたサイのような見た目の魔物の群れ。
「あれか?」
気付かれないように、3人は近くの茂みに身を潜めていた。
「ぅん、見てみるね。」
みやは魔眼を発動させ、魔物を注意深く観察し始める。
「『クラウグゴプス』レベル平均40、弱点は目、硬い鱗は並の魔法攻撃や物理攻撃を通さないよ」
「なるほど、レベル40か……行けるな、マスター」
「うん!」
あれから数日。
色々と解ったことがある。
「行ってくる!」
「あぁ!」
そう言って全身に魔物の鎧防具を身に纏い少し大きな剣を持ったマスターは群れへ走っていく。
まずレベルの概念。
これはかなり解りやすい、ゲームと同じで大抵自分のレベル以下に殺されることはない。
と言うのも、自分のレベル以下の魔物なら目で追える攻撃をしてきたり防具で単純に防げたりそもそも筋力で勝っていたり自分とレベルが離れれば離れてるほど有利な条件が揃っていってる。
「はぁぁ!」
群れの1匹に狙いを定めてマスターは大きな剣の先をクラウグゴプスの小さな目に向かって突き出したが、クラウグゴプスは反応して動き、狙いを外して硬い鱗にガリガリと大剣を削りながら体勢を崩した。
もう一つは先程から身につけてるマスターの武器や防具だ。
これはみやの分析、マスターの作成、俺のアイデアの合作品だ。
みやの分析により加工方法が明らかになりマスターの作成で形を変えて俺のアイデアで見た目を作る……完璧だ。
「なんの!」
崩れた体勢を踏ん張りを効かせて逆にその足を軸にして回転斬りをするとガキン!と音を立てて弾かれるが反動がついたその攻撃はクラウグゴプスをふらつかせるのに充分だった。
「ムォー!?」
「食らえ!」
その隙に自らの剣を捨て片手で地面に触れると地面が形を変え一本の硬い岩のトゲになり体勢を崩したクラウグゴプスの目を貫く。
「ムッ__」
そのまま痙攣を起こして動かなくなった。
「よし!」
「やるじゃないかマスター」
それとレベルが上がるに連れてグロ耐性が付いてきた。
今じゃここの3人誰もが魔物を殺せる……これは悪いことなのかすらも分からない……だってそうだろ?元の世界で食べていた肉達もこうやって殺してから食べてるんだ。
「みや、どうだ?」
「ぅん、マンタのレベルが70に上がってる」
「だ、そうだ、何か感覚はあるか?マスター」
マスターは頭のフルフェイスの防具を脱いで手を握ったりして確かめてみる。
「うーん、やっぱり感覚じゃわかんないや」
「そうか……」
実際のゲームの勇者達もこんな感じなのだろうか?
「それより、早く捌いてしまいましょう」
「あぁ」
群れの他の奴はマスターが戦ってる間に逃げた様だが問題ない、食材、素材はこの一頭で充分なのだから。
「マスター、借りるぞ」
俺はマスターが先程まで持っていた剣を拾い上げ倒れているクラウルゴプスの首を落とした。
__________
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パチパチと焚き火が音を立てる中、マスターの能力のおかげで家らしくなった拠点で綺麗に洗ったクラウルゴプスの鱗と3人で向き合う。
「みや、どうだ?」
「ぅん、大丈夫みたぃ、マンタのレベルより下だょ」
「だ、そうだ、マスター」
「うん、やってみる」
そういってマスターの能力で作った魔物の皮の袋から他の魔物の素材を取り出して並べていく……ほんと、マスターの能力も便利だな。
「えーっと、確かフレマクラーヌの首とエレクマクレーヌの針……そしてクラウルゴプスの鱗」
素材達はマスターの手のひらで光り輝き形を変えていき____
「出来た!」
マスターの手には細かなディテールが施されたピンとレバーが突き出ていて、表面は先ほど加工された光沢のある緑の鱗で覆われた小さな丸い物が握られていた。
「こんなに小さいけどいいの?」
「あぁ、完璧だ」
「へぇこれがネバーさんの世界にあった武器の1つ……」
「使い方は分かるか?」
「うん、ネバーさんの話を聞いてたのと作成した時に自分で改造してみた」
「流石だな、マスター」
「ネバーさんほどじゃないよ、試してみていい?」
「あぁ」
そういうとマスターはピンを抜いて思いっきりそれを遠投した。
「そりゃ!」
ある程度遠くに飛んだのを確認し持っていたピンに魔力を通す……すると____
「うわ!?」
「すごぃ……」
「マスター……やはり君は天才だ」
遠くの空で光り輝いた後、轟音が響き渡り、空気が一瞬にして振動する。
その衝撃は遠く離れたここにも来た。
「これが……手榴弾……」
そう、作成で作れるのは何もこの世界にあったものだけではない。
俺のアイデアさえあればマスター、そしてみやの異能を使って何でも作成できるのだ。
レベル上げ……そして武具の作成。
これを続けていき、そして____
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