第48話 女神の監視を逃れる……【あーぁ、これで不確定になっちゃった』

 深夜の闇を月明かりが照らし、屋根の上に身を置いて、独り静かな夜に思索していた。


 「女神、か……」


 今回の話でおかしな所が二つある。


 一つは夢の中で教えられたことをマスターが信じ切っているということだ。

 本人に言うのも悪いと思い言わなかったが、女神の見せた光景事態が真実であるか分からないのだ、夢は夢……ライトはマスターの思った通りいじわるな奴だったかもしれない。



 そしてもう一つは。


 「同じ女神に会っている」


 マスターが出会った女神は太陽の光をその金髪に宿し、その輝きはまるで無限の星が彼女を賛美するかのように輝き、青い瞳は深淵な美しさを秘め、ただ一度見ればその輝きが永遠に忘れられないほど、超越した美を放っていた存在だと……


 間違いない、あの女神だ。


 そもそも神が一人という認識で良いのか?

 

 今まで何とも思わなかったけどどうしても気になるあの言葉。


 【君は私の為だけに動けばいいんだ』


 まるで僕たちを彼女の筆で綴られる物語の中で踊らされているような言葉…。

 その言い回しの奥に潜むものは一体何だろう。ただ、あの時の金髪の女神の言葉を考えると、幸せな結末ではないようだ。最後に彼女に会えることはないと告げられたが、これからは僕を操り、自分の思い通りに導くつもりなのだろうか?


 「どうにか女神の監視から逃げられないものか……」


 「逃れれるものじゃよ」


 「っ!?」


 最初から“すぐそこ”に居た様に話しかけてくるこの爺さん!

 そうだ!なんであの時思わなかったんだコイツも!


 「神の使徒!」


 「ほっほっほ、そう構えるんじゃない」


 神の使徒という事はあの女“神”の!!


 「あの女神が次は何を言いにきた!」


 「…………お主、勘違いしておるな」


 「何をだ」


 「わしは『女神』の使いでは無い、【神】の使徒じゃ」


 その意味を理解するのは早かった。

 まるで先ほどまでに考えたことが、今現在に繋がるような感覚だ。


 「薄々気付いていたみたいじゃな……そう、女神と神は別物なんじゃよ」


 「……やはりか」


 「わしはお主の味方じゃよ」


 「信じろと?」


 神と女神が別物としても信じる通りは無い。

 その神もまた悪の側面を秘めている可能性があるのかもしれないからな。


 「その証拠にクリスタルドラゴン討伐の際はあの魔王に力を貸しておる」


 「聞いてないな……」


 「ふむ?クリスタルドラゴンを最初に拘束した魔法があったはずじゃが?」


 「それに手を貸したとして、どこに繋がりがあるんだ」


 そう言った後、神の使徒は衝撃の事実を告げる。


 「クリスタルドラゴンは女神によって引き寄せられたのじゃよ」


 「!?」


 「これで解ったかの?女神がお前を排除する為に寄越した奴をワシは倒すのを手伝ってるんじゃ」

 

 「それが本当かも疑わしい」


 「やれやれ……お主は本当に疑り深いなめんどくせ……」


 「ふん……何の様だ?お前に言われた通りに来たら人間に会えたがそれも女神の差し金……物語の一部だろう?」


 「ならば仕方ない……お主の信頼を勝ち取るためにこれからはお主が聞きたいと思った時に答えをやろう」


 ?


 これまでは神の使者に従って、一方的な指示を受けるばかりだったが、今度からはこの助言の老人から何でも尋ねることができるという事?


 「そんな事をしてお前に何のメリットがある?」





 「ワシは女神が憎い」







 その言葉が口を離れた途端、まるで周りが冷たい風に包まれているかのような錯覚が広がった。


 「っ!?」


 この老人は初対面から謎めいていた。いや、その物腰は最初からどこか気だるそうで、めんどくさそうに感じられた……しかし、その言葉には爆発しそうな激しい憎しみが込められている。



 「アイツを貶めるためなら悪魔にでも魂を売る」


 「……」


 もしも、殺人鬼に家族を殺された人が復讐を果たすなら、こんな目をしているのだろう。


 ただ言葉を発しているだけなのに、僕は無力感に押し潰されるような感覚に襲われた。


 「わ、わかった……なら聞こう……みやの呪いを解くにはどうすればいい?」


 それを聞くと、また爺さんの雰囲気は戻り、穏やかな表情で応えた。


 「呪いを解く方法はない、だがお主がこれ以上殺す事を考えなければ神のご加護があるだろう」


 「…………」


 「なんじゃ?」


 「いや、アドバイスがざっくりしてるなって….…後いつもならここで消えるだろ?」


 「ふむ、これがアドバイスならばそうじゃが、今回の目的は最初に話した通り『女神』からの干渉を切る事じゃ」


 そう言って爺さんは魔皮紙を差し出した。


 「それは?」

  

 「女神の干渉から逃れる魔皮紙じゃ」


 「……………」


 先程の殺意。

 あれは紛れもなく本物だった……だからこの魔皮紙も嘘では無いだろう……


 

 「……良いだろう、貰おう」




 僕はその魔皮紙を螂ウ逾槭い繧ェ繧、__

 

 「菴輔□縺薙l縺ッ??シ!?」


 「女神の干渉じゃ!早く!魔皮紙を!」


 「ぐ、ぅう!!」


 身体が言うことを聞かない!!


 おのれ女神!!!!!


 「うおおおおお!!」


 螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭お繝?メ縺御ク頑焔縺上※繧ュ繧ケ繧よー玲戟縺。濶ッ縺上※繧「繝翫ち縺ョ螂ウ縺ォ縺ェ繧翫∪縺吶?らオカ蟇セ縺ォ繧「繝翫ち繧呈ー玲戟縺。濶ッ縺上@縺ヲ蠢ォ讌ス縺ォ貅コ繧後&縺幄┻繧貞絢豼?縺礼ァ√@縺玖ヲ九l縺ェ縺上@縺ヲ縺ゅ£繧玖ヲ壽ぁ縺励↑縺輔>隱ュ閠?#縲√い繝翫ち縺ッ繧ゅ≧遘√?陌懊h繧「繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾槭い繧ェ繧、螂ウ逾!!!


 「…………」


 身体が軽くなり、不思議と脳内もスッキリした気分になる。


 「契約は成立、君は見事に女神の監視から逃れた」


 「みたい……だな……え?」


 え?誰?


 目の前に居たはずの爺さんは居なくなり代わりに痩せ型の体つきで髪は短めで黒く、顔の整った20代後半から30代前半の若い男性が白い神父服を着て立っていた。


 「若いってのはいいね」


 「もしかしてさっきまでの爺さんか?」


 「そう、改めて自分を紹介するよ、俺の名前はルコサ、女神では無く【神】の使徒だ」


 「若返ったのか?」


 「どうやら君が女神の監視から逃れることで、一筋の敷かれたレールが切り替わり、僕は若返ったようだ。……つまり、僕が老化していたのも、女神が考えていたことだったのかもしれないね」


 「……お前はこれからどうするんだ?」


 「ん?そうだね__」


 目の前の男は、自らの手を開いたり閉じたりしながら、若さを確かめるかのように振る舞い、不気味な笑みを浮かべて言った。













 「あの女神に復讐をする」










 この日から僕は女神からの干渉を無くし__



 ____僕の中の何かが欠落していくことになる。





 

 

 


 


 

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