第45話 心に刻まれた親友の死
僕は馬鹿だ……自覚はあった。
無能なのも自覚はあった。
全てにおいて他の魔族達よりも劣っている。
出来損ないの生きているだけで迷惑をかける置き物……
だけど……そんな僕でも……いや、そんな僕だからこそ……冒険者になりたかった。
冒険者。
そこでランクを上げればいずれ魔王に……
いや、魔王になるつもりはない……だけどそれほどの地位まで上がれると言う事だ。
例え、そこまで上がらなくてもプラチナランクで魔物を狩っているだけでも周りのみんなが認めてくれる。
その為になんとか魔法学校に入って頑張ってたけど……結果は中間テストで赤点をとりまくって退学……
……………本当に馬鹿だった。
その時に親友が出来てたはずだったなんて……
“はず”と言うのは鬱陶しいと思ってたからだ。
いつもつっかかって僕をいじめてくる面倒くさい奴。
罵倒ばかりしてきて鬱になりかけた時もあったし……
…………でも、今考えれば彼の言葉は全て僕を思って言ってたのが解った……
その人は最後の最後までボロボロになりながらも僕を探していた。
そして最後に……クリスタルになって死んだ……
“戦う意志”
目の前でクリスタルになって行く親友を見てこみ上げてきた『怒り』の感情……クリスタルドラゴンにではなく無能な自分に対してだ。
災害クリスタルドラゴンの討伐はネバーさんを召喚したらすぐに終わった。
……そう、すぐ終わったのだ……僕がもっと早く召喚出来ていれば!終わったんだ!
僕が!この心が!弱い心が!!!!!!
クリスタルドラゴンを追い払った後。
僕の中の感情は悲しさ、虚しさ……虚無。
冒険者としての偉業を成し遂げた。
誰もした事がない事をしたのだ……
…………だから何だ……
何も変わらない。
もうあの人は戻ってこないのだ……
もしも居たらどうなってたんだろ……笑顔で祝福してくれたのかな?
それからネバーさん達と一緒に有名冒険者として名を馳せてさ……
武器や防具を新調するのに一緒に行ったり……
……………謝りたい。
今までの事、思ってた事を全て打ち明けてもあの人は受け止めてくれる……意見が食い違って殴り合いになるかもしれない……
…………そんな事をずっと考えてる。
考えても叶わないのに……
冒険者を続ける意欲もなくなっている気がする……
家に帰っても何も解決しない……
そんな中、僕は夢にまで見た“異能”が発動した。
どうしてなんだよ……どうして今なんだ……
何も意欲も無いのにネバーさんは消えていない……
最悪な気持ちなのに。
何もかも分からないのに。
「もう、いっそ死にたい……」
だけど僕が死んだらネバーさんはどうなる?
僕はネバーさんの為に生きてる媒体だ……むしろそう考える方が楽だった。
なので人形の様に考えるのをやめた……
……………
………
はずだった!
「んべぇろ」
人間。
ネバーさん以外に初めて見た魔物の中でも稀少で凶暴と言われている討伐対象。
凶暴?
ネバーさんもこの人達もその言葉とはかけ離れている気がする。
「んべぇろ」
また1人魔王様の口の中に生きたまま入っていった。
なんだろ、この気持ちは……
「んべぇろ」
また1人……
目の前で魂が消えていく感覚……あの時の__
親友が目の前でクリスタルになって行った時のあの感覚。
「んべぇろ」
ネバーさんはどうして何も言わない?動かない?
「んべぇろ」
同じ人間だろ!?
「んべぇろ」
心臓が抉れる様だ……
「んべぇろ」
痛い。
外側は平然を装ってるが心臓がこれでもかと言う程動いている。
「んべぇろ」
それ以上、あの時の感覚を__
「んべぇろ」
あの光景を__
「では、最後をいただこう……んべぇろ」
思い出させるな!!!!!!!!!
…………あぁ、なんてことをしてしまったのだ……
「あ……えと……」
「ぐ、ぁああ!!」
魔王様の長い舌を斬り落とした。
「マスター!」
ネバーさんは僕の投げた剣を掴み思いっきり壁に向かって投げ……
「ふん!!」
掴まれた時に巨大化したその剣は乱雑に壁を破壊しながら一直線に飛んでいく。
やってしまった……魔王様を……攻撃してしまった……
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!
これから先、僕はギルドカードを剥奪され指名手配……武器、防具、道具の全ての援助を切られる。
どうやって______
__“生きて”いけばいいんだ!!
……え?
生きる……?
「逃げるぞ!」
差し伸べられた手。
これを取らなければ死刑。
死ねる……だけど……僕は今__
__“生きたい”と思ってしまっていたのだ。
「……うん!」
僕はその手を握った。
生きたいと思った……本心に従って____
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