第44話 人間を連れた犯罪者……僕の感情どうしちまったんだ……
扉に居る10人の少女達……魔族が人間を感覚で解るって言う意味が理解できた。
「にん……げん」
「……!?」
人間だ!
この世界で初めての生きた人間!
生きた人間生きた人間生きた人間生きた人間!!
やっぱり自分と同じ種族が居ると安心感が__
「さて、食事じゃ」
…………え
「……」
お、おい……
みんなは僕たちに目もくれずに蛇の前に歩いて整列する。
嘘だろ……今、魔王は“食事”……と……
「んべぇろ」
長い舌が1人目を包みこむ。
彼女の目は怯えは見えない……むしろ__
「笑ってる……?」
その笑顔は幸福。
まるで食べられる事が嬉しくてたまらない様に……
「んべぇろ」
2人目も同じ様に抵抗しない。
「…………」
「……」
刻一刻と、1人ずつ魔王に食されていく。
人間が……“手がかり”が!
「………え」
今、僕は……何を考えてる?
「んべぇろ」
手が……かり?
「んべぇろ」
確かに、生きた人間達に会えた時は嬉しかった。
だけど、目の前で食べられていて感じたのは焦り____“他の人間が居る手がかり”が無くなっていくと言う焦り。
「……」
……………………………
…………………
…………あれ?
こんな時、どういう感情だったっけ
「……」
身体が動かないのではなく、動いた後の事を考えている自分がいた
もしも今ここで魔王に攻撃をしたら確実にマスターに迷惑がかかる。
「世界を敵に回す」とはよく言ったものだ……この世界の魔族達はギルドを通じて繋がっている。
ここで魔王を攻撃すれば僕の主人であるマスターは犯罪者として扱われ、国に入る事はもちろん、武器や防具、さらには外で生きていける道具なども買えない。
せっかく頑張ってマスターは冒険者になったのに……僕のせいで……
様々な考えが巡る中ついに最後の1人になっていた。
「………………すまぬな」
魔王は一度食事を止めて僕に話しかけてくる。
「同じ人間が食べられる様を見ても尚、主人に忠義を尽くし動かない……貴様は此方側と言うわけだ」
「……試したのか」
あえて目の前で同種族を食べる事で僕を煽る。
いじわるだ……だけど、自分の異常に気付けた。
いまだにそんな事を思ってる自分の感情の異常……
涙も出ていない。
それどころか先程まで人間が食べられていたのにも関わらず心の中は澄んでいるままだ。
「お前は我の信頼を勝ち取った、この国に好きなだけ滞在していい……もしもその摩訶不思議な防具の調子が悪く人間ということがバレたとしても表上は騎士達に捕まえさせるがまたほとぼりが冷めた時に生活すれば良い」
……つまりこの魔王はこう言いたいのだ。
人間の裏切り者
と……
「……」
「では、最後をいただこう……んべぇろ」
あぁ……長い舌が最後の1人を包み込む。
食事……か……弱肉強食。
一歩間違えれば自分だってああなってる世界だ。
まぁ……仕方な__
「____っっ!?」
!?
「な!?」
僕の隣から投げられる見覚えのある剣。
忘れるはずもない、元の世界で好きだったゲームキャラの愛用していたバスターソード!
女神様から貰った武器!そして今その持ち主は____
「あ……え、と……」
この場で唯一何もしないと思っていた人物……マンタティクスが魔王の舌を斬り飛ばした!
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