第37話 【初めまして小さな支配者』
「…………あれ?ここは……」
見慣れた校舎。
中庭の噴水。
制服を着た学生達。
「学校?」
ここはマンタティクスが通っていた魔法学校。
【初めまして、マンタティクス君』
「?……____っ!」
話しかけて来たのは同じ制服を着た絶世の美女。
見ただけで一目惚れしそうだったので反射的に目を逸らす。
【あれ〜?飼い主も同じ反応しちゃうんだね♡僕ってそんなに可愛い?自分じゃわからないや♡』
「だ、だれです、か?」
【僕は女神、そしてここは君の過去』
「過去?」
【そ、君は今現実では気絶してるから“夢”と言う媒体を使って僕が君の夢の世界を書き換えた』
「?、???」
【ほら、あそこ、見覚えあるでしょ?』
女神が指差す先は男子トイレ。
「……」
それを見て嫌な思いでが蘇る。
【思い出した?』
「うん……」
【じゃぁそこへ行って“真実”を見て来なさい♪』
「……真実?それってどういう__あれ?」
気がつくと女神は居なくなっていた。
「……」
マンタティクスはトイレへ行き、中を見る。
「くそが!お前ムカつくんだよ!」
「痛い!」
そこにはライトに殴られているマンタの姿があった。
「てめーのせいで体育祭は台無しだ!わかってんのか!」
「ご、ごめんなさいごめんなさい」
再び握り拳を作ったのを見て謝るマンタ。
魔法学校の体育祭……ライト達は一年生で初だったがマンタティクスは魔力、筋力、共に成績が悪く、それだけならまだしも団体競技は全て他の人の足を引っ張ってビリになった。
「謝って済むと思ってんのか!目障りなんだよ!」
マンタティクスはこの日からライトのいじめの標的になる分岐点だった。
「ひ、ひいぃ」
マンタは泣きながらその場から逃げる様に走っていった。
「(……この日僕はライト君にここに手紙で呼び出されてたっけ)」
悲しい過去を懐かしむ様にマンタティクスは逃げている自分を見る。
「(……ほんと、逃げてばかりだな……僕……何も変わってない)」
「さて……と」
「?」
しかし、用事の済んだはずのライトはその場で腕を組んで仁王立ちになる。
まるで誰かを待っている様だ。
…………………………………
…………………
………あれ?
「来ましたね」
「おーおー?誰だてめー?」
少し経つと木刀を持った集団がトイレにやってきた。
「(あれは……先輩方?)」
「先輩達ですか?ウチのクラスのマンタティクスを呼んだのは」
「(え……)」
「そうだが?あいつには責任とって貰わないと割に合わねーからな」
「責任?」
「責任だよ責任、冒険者になる俺達がアピールできる場所を潰されたんだ、ボコボコにされて当然だろう?」
学校を卒業する時はパーティーメンバーが決まってる事が少ない。
かと言って現役で冒険者をやっている人はパーティーメンバーが決まっている事が多い。
こう言う体育祭などはそう言う冒険者パーティーの補充員を見つける場でもあったのだ。
……もちろん、お眼鏡に敵わなければ誘われる事はまずない……
「兄貴、こいつアレですぜ噂の天才君のライトですぜ」
「あぁ、お前が噂の……」
マンタティクスがいない競技では良い意味でほぼほぼ目立っていたライト。
「俺がどう呼ばれ様が知ったこっちゃないですけどね、そういうのやめてもらって良いですか?あんな奴でも俺のクラスメイトなんで」
「あ?何言ってんだてめ?」
「そう言うのダサいって言ってんだよ」
「あ?」
「弱いものいじめって事じゃ無いなら同じクラスの俺が相手しても構いませんよね?」
「はっはっはっは!コイツ笑える!正義の味ゴワッ____」
ライトは思いっきり話してる相手をぶん殴った。
「__かかってこいって言ってんだよ」
…………………
どうして……
【そりゃそうさ、こう言うのってアニメとかだと視点が違うから見れてるだけで本人は分からないのが現実』
気がつくとまた女神が立っていた。
「ど、どういうことですか?」
【解ってるよね?』
「う……」
【この場面もこの時もこの記憶も__』
女神が指を鳴らす毎に場面が切替わる。
そこにはマンタがいじめと思っていた場面が次々と映し出され、決まってライトがその後に原因をほどいて解決していく。
【そして、これも♡』
「ライトぉ〜何であんなやつに付き合うのよー?」
次に出て来たのは後にライトのパーティーメンバーになりミールワームに食べられたハーピーの女だ。
「あいつは色々と不器用なんだよ……だからこそ、俺がなんとかしてやらないと……」
「あんな落ちこぼれほっとけばいいのにぃ〜」
「馬鹿か……どんな状況でも仲間を見捨てない、これはアイツにとっても俺にとっても試練なんだ」
「なんでライトにとっても試練なのよ?」
「…………俺は仲間を絶対に見捨てないって決めてるんだ、それにアイツはまだ目覚めてないだけで何か可能性を秘めている……感じがする」
「ふーん?…………私にも手伝える事ある?」
__
【どう?』
「……」
【こう言う性格の人って会社とかでも居るけど損な立ち回りだよね』
「言ってくれれば……」
【だよね、僕もそう思うよ。』
女神様は肯定する。
【だけど、言ったら君は堕落するよね?』
「……」
【きっと何も考えないでライトを頼り、卒業して道を見失う』
「…………」
【さぁ、ライト君に恩返しってわけじゃ無いけど、見せてやれよ……君の本気を!」
「……はい」
【起きて立ち上がるんだ、未来の__』
______________
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____
「……ん……」
身体が動かない……どうやら僕は岩なだれに巻き込まれてたみたいだ。
「ん……く!」
思いっきり力を入れると岩がすこし動いた!
「行かないと……僕は!」
自分の意志に反応する様に身につけていた装備の魔法を発動させ、拘束していた岩を吹き飛ばす。
「…………」
砂煙の中立ち上がる。
「僕は__」
「__よう、元気、そうだな……」
先程まで夢でも聞いていた声……だが
「っ!!!!ライト君!?」
声の方向を見ると身体の半分がクリスタルに侵食されているライトの姿があった。
「わりぃ、しくじ、った」
ライトは無事な手で持っていた石をぽいっと投げる。
「まさか……その状態で……」
そう、ライトは身体がどんどん言う事を聞かなくなる中、最後の最後まで必死にマンタティクスを探していたのだ。
「ライトく__」
「__近づくな!」
「っ」
「この、クリスタル、は触れるとこうなっちま、う」
「でも!でも!」
無事なマンタを見て安心したのか侵食は先程よりも急激なスピードで身体を蝕んでいく。
「俺は、もう、だめ、だ……マン、タ……一人に、させて、すま____」
最後まで言葉を言えず。
そこに残ったのは親友の形をしたクリスタルだけだった。
「そんな……嘘だ……」
本当なら良き仲間になっていたはず。
「嘘だ……嘘だ!」
だがこれが現実__
「許さない……」
彼の心の中で湧き出たのは悲しみではなく……怒り。
「許さない……許さない許さない許さない許さない許さない」
一回出てしまえば今まで詰まっていた感情が栓が取れた様に溢れ出ていく……
「許さない許さない許さない……殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
ねっとりとした黒い魔力がマンタティクスの周りで発生する。
「殺す絶対に許さない殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
怒りと言う感情から生まれた“戦う意志”
「待っていろ……クリスタルドラゴン……」
そのまま親友の亡骸を後にマンタティクスはフラフラと歩き出した______
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【キャハハハハハ♡怒れ怒れ♪……そして踏み出し、前へ進みなさい』
【未来の支配者さん』
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