第13話 【神の使徒』……マスターの過去回!



 「…………え?」


 魔法学校を卒業しバイトに明け暮れ、はや数ヶ月……僕はついに冒険者登録に必要なお金が貯まりギルドへ出向いていたのだが。


 「ですから、あまりオススメは出来ません」


 受付の人に自分のギルドカードをつっかえされていた。


 「あ、あの……どうして」


 「あなたのギルドカードを拝見しましたが、あまり成績も良くありませんし、何より“異能”に目覚めて無いのが……」


 「そ、そんな……」


 異能__普通ならば物心ついた頃には開花している能力だ。

 

 「ギルドとしても、ただ殺されに行くのを後押しするような事は出来ませんし……」


 「だ、大丈夫です!」


 「ですが……」


 何もない何も出来ない僕が唯一人生を逆転できる職業の冒険者……危険と隣り合わせだがそれに見合った価値はある。


 「ど、どうにか出来ますか!絶対になりたいんです!」


 「うーん…………そう言われましても………」


 尚も渋っている受付の女性は頭に生えてる2本の細いツノを触りながら考える。


 「では、テイマーになってみますか?」


 「テイマー、ですか?」


 「はい、見たところ、魔物の飼育をなされた経験があるようですね」


 「そ、それはアルバイトで家畜の世話をしていただけですが……」


 「では、そのツテを使いテイマーになってください、後でそちらの住所に“契約の鎖”を輸送しますので」


 「は、はい……」


 テイマーと言えば戦うのではなく採取専門の冒険者だ。

 自分の使役する魔物に匂いを覚えさせキノコを見つけたり、他の凶暴な魔物がいないルートを通させたりする。


 きっと、僕でも冒険者になれる道を考えてくれたのだろう……それ以上受付の女性に僕は追求しなかった……


 「………」


 暗い顔でギルドを出る。


 「無理だよ……」


 アルバイトで家畜の魔物を飼育……だともっとよかった……実際は“魔物と一緒の所”に住み込み世話をするという過酷作業。


 最終的には家畜の機嫌を損ねたと言う理由で解雇されている。


 「そんな所に魔物を貸してくれなんて言えない……」


 がっくりと肩を落として歩いていると__


 「よい……そこの君」


 「?」


 白いローブで身を包んだ白髪髭のしわくちゃのおじいさんに声をかけられた。


 「僕ですか?」


 「何を言っとる____“ここにはお前さんしかおらんだろ”」


 「え」


 そう言われて周りを見ると先ほどまで賑わっていた人達がいつのまにか消えていた。

 

 「な!?」


 魔物の鳴き声も何か物が動く音も聞こえない。

 

 まるで時が止まったかのような感覚に陥った。


 「……お前さん、今困っておるだろう」


 「え、あ、はい」


 そんな異様な事が起こっていても何も無いように淡々とおじいさんは話してくるので此方も答えてしまう。


 「これを使うと良い」


 「これは?」


 「これを契約の楔と一緒に起動しろ」


 「いや、起動の仕方じゃなくて……」


 「ワシの名前はルコサ……【神の使徒』だ」


 「神の…………え?」


 次に僕が瞬きした時には目の前から老人は消え、先ほどまでの賑やかな普通の風景になっていた。


 


 「今のは……」



 その手には老人から渡された魔皮紙はしっかりと握られたまま…………

 

 



 

 


 

 


 

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